【ことわざ】
生き身は死に身
【読み方】
いきみはしにみ
【意味】
生きている身も、いつ死に向かうか分からない、はかないものだということ。命はつねに危うさと隣り合わせであることをいう。


【英語】
・Life is always uncertain(命はいつどうなるか分からない)
・To live is to be close to death(生きることは死と隣り合わせである)
・The living are never far from death(生きている者も死から遠くない)
【類義語】
・明日は我が身(あすはわがみ)
・朝には紅顔ありて夕べには白骨となる(あしたにはこうがんありてゆうべにははっこつとなる)
・無常迅速(むじょうじんそく)
【対義語】
・鶴は千年亀は万年(つるはせんねんかめはまんねん)
・不老長寿(ふろうちょうじゅ)
・長命富貴(ちょうめいふうき)
「生き身は死に身」の語源・由来
「生き身は死に身」は、今生きている体も、やがては死ぬ体である、という見方をそのまま短く言い表したことわざです。まず言葉の形そのものが、意味をまっすぐ伝えています。
ここでいう「生き身」は、生きている人の身を指します。いっぽう「死に身」は、もう死んでしまった体ではなく、死ぬことをまぬがれない身、死に向かう身という意味で受け取るのが自然です。
そのため、このことわざは、ただ暗い気持ちを言うだけの言葉ではありません。人はどれほど元気そうに見えても、命の危うさを忘れてはならない、という戒めを含んでいます。
この考え方の後ろには、仏教で大切にされてきた無常の見方があります。人の命も世の中のありさまも、ずっと同じではなく、いつ変わるか分からないという感じ方です。
日本では、こうした無常の考えは、古い説話、教訓、語り物、日常の言いならわしの中に深くしみこんでいきました。その流れの中で、「生き身は死に身」という言い方も、人の命の不安定さを言い表すことばとして広まったと考えられます。
このことわざについては、今の形そのものを一つの古典作品に結びつけて言い切るより、日本の生活と信仰の中で育った言い回しとして受け取るのが無理のない考え方です。とくに、病気、飢え、災害、戦いなどが身近だった時代には、この言葉は強い実感をもって受け取られたはずです。
古い時代の人びとは、今より医療や安全の手立てが少ない中で暮らしていました。朝まで元気だった人が夕方には病に倒れることもあり、昨日までいた人が急にいなくなることも、今よりずっと重く感じられていたのです。
そうした暮らしの中では、命を粗末に扱わないこと、無理をしすぎないこと、油断しないことが大切でした。「生き身は死に身」は、その思いを短く、しかも強く言い切る言葉として生き続けました。
このことわざは、死をいたずらに恐れるためだけに使うものではありません。むしろ、今生きている時間を大切にし、軽はずみな行動を慎み、今日会える人を大事にする気持ちへつながる言葉です。
また、この言葉は、小さな失敗やちょっとした不安に使うには重すぎます。命そのものにかかわる危険や、取り返しのつかない事態を前にしてこそ、本来の重みがはっきり伝わります。
こうして「生き身は死に身」は、人の命のはかなさを見つめながら、今の生を粗末にしないよう促すことわざとして伝わってきました。短い言葉ですが、命を大事にする知恵が深くこもった言い方です。
「生き身は死に身」の使い方




「生き身は死に身」の例文
- 台風の日に川の様子を見に行こうとする人には、生き身は死に身という言葉を思い出してほしい。
- 高熱が続いているのに受診をのばすのは、生き身は死に身を忘れたふるまいと言える。
- 工事現場で安全帯を着けないまま高い足場に上がるのは、生き身は死に身という戒めに背く。
- 山の急斜面で無理に近道をしようとした友人を、生き身は死に身だと考えて引き止めた。
- 戦争体験を語る祖母の話には、生き身は死に身という言葉の重さがにじんでいた。
- 深夜に信号を無視して道路を渡る行為には、生き身は死に身という感覚が欠けている。























