【ことわざ】
壁の穴は壁で塞げ
【読み方】
かべのあなはかべでふさげ
【意味】
その場しのぎの間に合わせでは物事はうまくいかず、問題に合った材料や方法で根本から処理すべきだという教え。


【類義語】
・壁は壁で塞げ(かべはかべでふさげ)
・壁の繕いは土でなければできぬ(かべのつくろいはつちでなければできぬ)
「壁の穴は壁で塞げ」の語源・由来
「壁の穴は壁で塞げ」は、土を塗り固めて作った壁に穴が開いたなら、紙や木切れなどを詰めて済ませず、もとの壁と同じ壁土を使って直すべきだという考えから生まれたことわざです。壁土とは、壁を塗るために用いる粘り気のある土、または壁に塗られた土を指します。
かつての日本家屋では、竹などで組んだ下地に、わらなどを加えた土を塗り重ね、土壁を作りました。そのため、壁の傷みをきちんと直すには、壁と性質の合う土を用いることが大切でした。
このことわざの「壁で塞げ」は、壁そのものを切り取って穴に詰めるという意味ではありません。「壁を作っているのと同じ材料、すなわち壁土で塞げ」という言い方です。
紙や板を当てれば、穴は一時的に隠せるかもしれません。しかし、はがれたり隙間ができたりすれば、結局はもう一度直さなければなりません。この具体的な修繕の知恵が、手近な方法で一時を取り繕うだけでは、問題の本当の解決にならないという教えへと広がりました。
特定の人物や事件を語る話から生まれたものではなく、暮らしの中で行われてきた修繕を、そのまま人生や仕事の戒めにした表現です。身近な作業をもとにしているため、難しい説明を加えなくても、何を戒めているのかが伝わりやすい形になっています。
昭和21年に発表された柳田国男の「謎と諺」をもとにした『なぞとことわざ』(昭和27年、柳田国男著)にも、このことわざが収められています。同書は、昭和27年に筑摩書房から刊行されました。
そこでは、昔の人が若い人へ知恵を伝えるために用いた、短く覚えやすいことわざの一つとして、「壁の穴は壁でふさげ」と記されています。現在よく用いる「塞げ」という漢字ではなく、「ふさげ」と仮名で書かれています。
柳田国男は、その直前で、古い書物から取り出したような難しい表現よりも、毎日の話し言葉をそのまま用いたことわざの方が、人々の心に残りやすいと述べています。「壁の穴は壁でふさげ」も、生活の中で口から口へ伝えられてきた平明な言い回しとして挙げられています。
さらに、このようなことわざは詳しく解き明かされなくても、聞いた人が後になって少しずつ意味を理解するものだと述べています。実際の壁直しを知る人なら、あり合わせの物を詰めるだけでは十分でないことから、仕事や暮らしにも通じる教えを読み取れたのでしょう。
表記には、「壁の穴は壁で塞げ」のほか、「壁の穴は土で塞げ」「壁は壁で塞げ」などがあります。また、「壁の繕いは土でなければできぬ」という、意味をより直接的に表した形も伝わっています。
これらはいずれも、壊れた部分と関係のない物で形だけを整えるのではなく、原因や性質に合った手段を選ばなければならないと説くものです。現在では、修理だけでなく、仕事の失敗、計画の不備、組織の問題などを安易な方法でごまかそうとする場面への戒めとして用いられます。
「壁の穴は壁で塞げ」の使い方




「壁の穴は壁で塞げ」の例文
- 雨漏りする屋根に布を詰めただけの父へ、祖父は壁の穴は壁で塞げと注意した。
- 壊れた機械を針金で留めて使い続けるのは、壁の穴は壁で塞げという教えに反する。
- 壁の穴は壁で塞げというように、失敗の原因を調べてから対策を立てる必要がある。
- 不足した人手を無理な残業だけで補おうとする会社に、壁の穴は壁で塞げという言葉を思い出した。
- 行事の予算不足をごまかすのではなく、壁の穴は壁で塞げの考えで計画そのものを見直した。
- 壁の穴は壁で塞げと考え、担当者は応急処置で済ませず、故障した設備を正式に修理した。
主な参考文献
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・柳田国男『なぞとことわざ』筑摩書房、1952年。
・柳田国男『定本柳田国男集 第二十一巻』筑摩書房、1962年。























