【蟹は甲羅に似せて穴を掘る】の意味と使い方!語源由来は?(類義語・対義語・英語)

蟹は甲羅に似せて穴を掘る

【ことわざ】
蟹は甲羅に似せて穴を掘る

【読み方】
かにはこうらににせてあなをほる

【意味】
蟹が自分の甲羅の大きさに合わせて穴を掘るように、人は自分の力量や身分に応じた言動をし、また相応の願望を持つものだというたとえ。

ことわざ博士
「甲羅」は、蟹や亀などの背中をおおう堅い殻を指すんだよ。
助手ねこ
自分の力や立場を見きわめ、無理のない考え方や行動を選ぶ場面で用いるニャン。

【英語】
・Cut your coat according to your cloth.(自分の持っている条件や資力に合わせて計画する)

【類義語】
・分相応(ぶんそうおう)
・応分(おうぶん)
・身分相応(みぶんそうおう)

【対義語】
・分不相応(ぶんふそうおう)
・身の程知らず(みのほどしらず)

「蟹は甲羅に似せて穴を掘る」の語源・由来

ことわざを深掘り

「蟹は甲羅に似せて穴を掘る」は、蟹が自分の体の大きさ、つまり甲羅の大きさに合わせて巣穴を掘ることから生まれたことわざです。そこから、人はおのずから自分の能力や分に応じてふるまい、願いもまたその人に相応したものになりやすいという意味を表すようになりました。

「甲羅」は、蟹や亀などの背中をおおう堅い殻を指す言葉です。このことわざでは、外から見える甲羅の大きさが、その蟹にふさわしい穴の大きさを決めるものとしてとらえられています。

古い形では、「蟹は甲に似せて穴を掘る」とも表します。この場合の「甲」は、蟹や亀の体をおおう硬い殻、すなわち甲羅の意味です。

このことわざは、ただ「小さなものは小さく、大きなものは大きく」というだけの言い方ではありません。自分の持っている力や立場に合わないことを無理に望むより、自分に合った場所や役割を見つけるほうがよいという、処世の知恵を含んでいます。

古い用例として、『毛吹草(けふきぐさ)』(寛永15年序・1638年、江戸時代前期、松江重頼編)に、このことわざが出てきます。『毛吹草』は俳諧(はいかい)に関する書物で、七巻五冊からなり、分類は俳諧で、著者は松江重頼と記されています。

『毛吹草』は、俳諧の作法を説き、句作の参考となる語彙を集め、さらに各地の物産なども収めた書物です。俳諧を作る人にとって便利な書物として広く用いられ、江戸時代前期の言葉や言い回しを知る手がかりにもなっています。

このことわざが『毛吹草』に出てくることは、江戸時代前期にはすでに、人の身分や力量に応じた言動をいう言い方として定着していたことを示します。蟹の巣穴という身近な自然の姿を、人間のふるまいや望みに重ねる発想が、早くから言い習わされていたのです。

「蟹は甲羅に似せて穴を掘る」という形では、甲羅という言葉によって、蟹の体の大きさがいっそう分かりやすく示されます。一方、「蟹は甲に似せて穴を掘る」という形では、古くからある「甲」の言い方が残り、同じ意味を少し引き締まった表現で表しています。

同じ発想をもつ言い方に、「一升枡に二升は入らぬ」「根性に似せて家を作る」「鳥は翼に従って巣を作る」などがあります。どれも、器や性質や力に合った範囲があり、それを無視して大きすぎることを求めても無理が生じる、という考えにつながっています。

昭和57年の高橋義孝『へんくつの発想』には、服を作る人が自分の体つきを服の原型としているのではないか、という文脈で、このことわざが用いられています。ここでは、職業や考え方にも、その人自身の体格や性質が自然に反映されるという意味で使われています。

現在では、自分に合った進路や仕事を選ぶとき、また力に余る計画を見直すときなどに使われます。人を小さく決めつけるためではなく、自分の力を知り、その力に合った形で確かな結果を出すことの大切さを教えることわざです。

「蟹は甲羅に似せて穴を掘る」の使い方

健太
夏休みの自由研究で、日本中の川の生き物を全部調べたいけど、時間が足りないかも……。
ともこ
それは一年かかりそうだよ。近所の川をていねいに調べる方が、今の私たちには合っていると思う。
健太
蟹は甲羅に似せて穴を掘るだね! できる広さを決めれば、最後までまとめられそう。
ともこ
うん。写真と水温の記録を集めて、しっかりした研究にしよう!

「蟹は甲羅に似せて穴を掘る」の例文

例文
  • 蟹は甲羅に似せて穴を掘るというように、初めての仕事では自分の力に合った目標を立てることが大切だ。
  • 家を建てる計画では、蟹は甲羅に似せて穴を掘るの考え方で、収入に合った予算を組んだ。
  • 大会でいきなり優勝をねらうより、蟹は甲羅に似せて穴を掘るように、まず一回戦突破を目標にした。
  • 会社は蟹は甲羅に似せて穴を掘る方針で、無理な拡大をせず、今の人員でできる事業から始めた。
  • 友人は蟹は甲羅に似せて穴を掘ると言って、自分の生活に合った小さな店を開いた。
  • 蟹は甲羅に似せて穴を掘るとは、自分を小さく見ることではなく、自分に合った場所で力を発揮する知恵である。

主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・集英社辞典編集部編『会話で使えることわざ辞典』集英社、1989年。
・松江重頼編『毛吹草』1638年序。
・Oxford University Press, Oxford Advanced Learner’s Dictionary.




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