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【肝脳、地に塗る】の意味と使い方や例文!故事は?(類義語・対義語・英語)

肝脳、地に塗る

【故事成語】
肝脳、地に塗る

【読み方】
かんのう、ちにまみる

【意味】
むごたらしい殺され方をすること、また、無残な死に方をすることのたとえ。文脈によって、命を惜しまないほどの強い覚悟を表すこともある。

ことわざ博士
「肝脳」は肝臓と脳髄、また肉体と精神を指す言葉で、「地に塗る」は地面にまみれることを表すよ。
助手ねこ
戦場の惨状や、主君・国家・大切な目的のために命を投げ出すほどの決意を述べる場面で用いるニャン。

【英語】
・die a violent death.(暴力によって死ぬ、むごたらしく死ぬ)
・sacrifice one’s life.(命を犠牲にする)

【類義語】
・惨死(ざんし)
・命を捧げる(いのちをささげる)
・身命を賭す(しんめいをとす)
・死を賭す(しをとす)

【対義語】
・生き延びる(いきのびる)

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「肝脳、地に塗る」の故事

故事成語を深掘り

「肝脳、地に塗る」は、中国の歴史書『史記』「劉敬叔孫通列伝」にもとづく故事成語です。『史記』は、前漢の司馬遷がまとめた全百三十巻の歴史書で、前91年ごろ完成したとされます。

この言葉のもとになった場面は、前漢の初め、劉邦が天下を取った直後のことです。劉敬(りゅうけい)はもとは婁敬という人物で、洛陽(らくよう)を通りかかったとき、高帝となった劉邦に政治上の意見を述べる機会を得ました。

劉邦は、天下の中心に近い洛陽に都を置くことを考えていました。周の王朝が洛陽を重んじたように、自分もそこに都を置けばよいと考えたのです。

これに対して劉敬は、周と漢とでは天下を取った事情が違うと述べました。周は長い年月をかけて徳を積み、人々が心から従った王朝であるのに対し、漢は秦の末の大乱の中で、激しい戦いを経て天下を得た王朝でした。

その説明の中に、「使天下之民肝腦塗地」という一節が出てきます。これは、天下の民が、肝臓や脳が地面にまみれるほどのむごたらしい戦死を重ねた、という意味です。

劉敬はさらに、父と子の骨が野にさらされ、泣き声がまだ絶えず、傷ついた人もまだ立ち上がっていないと述べています。つまり、戦争が終わったばかりで、人々の心も国の状態もまだ落ち着いていないことを、きわめて強い言葉で示したのです。

このため、「肝脳、地に塗る」は、もともと戦乱の中で人が無残に死ぬ様子を表す言葉です。単なる「死ぬ」ではなく、体が傷つき、戦場に倒れるような、目をそむけたくなるほどの死に方を表します。

劉敬は、洛陽よりも関中(かんちゅう)に都を置くべきだと進言しました。関中は山や川に守られた地で、急な危機が起きても守りやすい場所だと考えたからです。

はじめ、劉邦は臣下たちの意見を聞いて迷っていました。しかし、留侯が関中に入る利点をはっきり述べると、その日のうちに西へ向かい、関中に都を置くことを決めました。

このあと劉邦は、都を秦の地に置くことを最初に言ったのは婁敬であるとして、婁敬に「劉」の姓を与えました。こうして婁敬は劉敬となり、奉春君と呼ばれる身分を得ました。

日本語では、漢文の「肝腦塗地」を訓読して、「肝脳、地に塗る」という形で読んできました。「塗る」はここでは「ぬる」ではなく、「まみる」と読み、土や血などに汚れて一面につくことを表します。

近代の用例として、『日誌必用御布令字引』(1868年・明治時代初め)にも、この表現が出てきます。これにより、日本語の中でも「むごたらしい死に方」を表す言葉として用いられてきたことが分かります。

また、後には「この肝脳を地にまみれさせても惜しくはない」のように、命を投げ出しても悔いないという覚悟を述べる言い方にも使われました。無残な死の描写から、命を惜しまない忠誠や献身の意味へと広がったのです。

現在この故事成語を使うときは、かなり重い表現であることに注意が必要です。日常の小さな失敗や苦労には使わず、戦乱の悲惨さ、または命をかけるほどの強い覚悟を述べる場面に限って用いるのがふさわしい言葉です。

「肝脳、地に塗る」の使い方

健太
歴史の本に、戦で多くの人が倒れて、肝脳、地に塗るって書いてあったよ。すごく重い言葉だね。
ともこ
うん。戦場でむごたらしく死ぬほど、ひどい状況だったという意味なんだね。
健太
だから、ちょっと失敗しただけのときに使う言葉ではないんだね?
ともこ
そうだね!命にかかわるほどの悲惨さや、命をかける覚悟を表すときの言葉だと思う。
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「肝脳、地に塗る」の例文

例文
  • 古い戦の記録は、敗れた兵士たちが肝脳、地に塗るありさまだったと伝えている。
  • 激しい戦乱のむごさを表すために、作者は肝脳、地に塗るという言葉を用いた。
  • 主君のためなら肝脳、地に塗ることも惜しまないという表現には、命をかける覚悟がこもっている。
  • 肝脳、地に塗るは非常に重い故事成語なので、日常の軽い失敗には用いない。
  • 戦場で多くの人が肝脳、地に塗るような事態になれば、国の人心は深く傷つく。
  • 彼は国を救うためなら肝脳、地に塗る覚悟だと述べ、強い決意を示した。

主な参考文献

・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・円満字二郎編『故事成語を知る辞典』小学館、2018年。
・平凡社『世界大百科事典』平凡社。
・司馬遷『史記』前漢、前91年ごろ。
・Cambridge University Press『Cambridge Dictionary.』
・Merriam-Webster, Inc.『Merriam-Webster.com Dictionary.』





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