【ことわざ】
河童に水練
【読み方】
かっぱにすいれん
【意味】
泳ぎの上手な河童に泳ぎを教えるように、その事をよく知っている人へ教えようとする、見当違いで無駄なことのたとえ。


【英語】
・Don’t teach your grandmother to suck eggs.(よく知っている人に、その人が知っていることを教えるな)
【類義語】
・釈迦に説法(しゃかにせっぽう)
・猿に木登り(さるにきのぼり)
「河童に水練」の語源・由来
「河童に水練」は、川や池にすむと考えられてきた河童と、泳ぎの練習・泳ぎの技術を表す「水練」を組み合わせた言い方です。「水練」は水泳の練習や水泳の技術を指し、泳ぎの上手な人を表す意味でも使われてきました。
河童は、水陸両棲(すいりくりょうせい)の想像上の動物で、手足に水かきがあり、頭の皿に水をたたえる妖怪として伝えられてきました。水の中で力を発揮する存在であるため、その河童に泳ぎを教えるという発想には、はじめからおかしさがあります。
「河童」という言葉は、「かわわっぱ」が変化したものとされます。近世の俳諧(はいかい)資料には「河童子」や「河童」の形が見え、江戸時代には水辺の妖怪として広く親しまれていました。
また、河童は単に水辺にいる存在であるだけでなく、水泳のうまい人や泳いでいる子どもを指す言葉としても用いられました。そこからも、河童と泳ぎが強く結びついていたことが分かります。
一方、「水練」は、古くから泳ぎに関わる言葉でした。藤原定家の日記『明月記』(1212年・鎌倉時代)には、弓馬や角力(すもう)と並べて「水練」が記されており、泳ぎの技術や訓練が武芸の一つとして意識されていたことがうかがえます。
『平家物語』(鎌倉時代前期ごろ成立、作者未詳)巻八には、「妹尾はすぐれたる水練なりければ」という用例があります。ここでは「水練」が、泳ぎにすぐれた人物を指す言葉として使われています。
このように、「水練」はもともと泳ぎの練習や技術を表し、さらに泳ぎの達者な人をも表す言葉でした。その「水練」を、もともと水に親しむ妖怪である河童に教えるという言い方が、「相手を取り違えた無駄な教え」のたとえになりました。
同じ発想は、「河童に水練教える」という形でも用いられます。この形では、「その事を知り尽している人に教える愚かさ」が、よりはっきり言葉に表れています。
現在の「河童に水練」は、泳ぎの上手な河童に泳ぎを教えるという、分かりやすい不釣り合いをもとにしたことわざです。相手の実力や経験を見ずに、すでに知っていることを教えようとする愚かさを、少しユーモラスに戒める表現として使われます。
「河童に水練」の使い方




「河童に水練」の例文
- 水泳の元選手に浮き方を教えようとするのは、河童に水練だ。
- 長年そばを打ってきた職人に包丁の持ち方を説くのは、河童に水練に近い。
- 囲碁の先生に石の置き方を得意げに説明してしまい、河童に水練だったと反省した。
- 料理研究家にだしの取り方を教えるような発言は、河童に水練と思われても仕方がない。
- 祖父は大工歴五十年なのに、釘の打ち方を教えようとして、まさに河童に水練だった。
- 専門家の前で基本中の基本を長々と語るのは、河童に水練になりやすい。
主な参考文献
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・小学館編『日本大百科全書』小学館、1984〜1994年。























