【ことわざ】
寒九の雨
【読み方】
かんくのあめ
【意味】
寒に入って九日目に降る雨のこと。農家では豊作の兆しとして喜ばれた。


【対義語】
・寒に雨なければ夏日照り(かんにあめなければなつひでり)
「寒九の雨」の語源・由来
「寒九の雨」の「寒」は、暦の上で小寒(しょうかん)と大寒(だいかん)を合わせた時期を指します。寒の入りから立春までの約三十日間をいい、一年のうちでも寒さが厳しい時期と考えられてきました。
「寒」という季節の名は、古くから日本語の暦の言葉として使われてきました。鎌倉時代後期の語源辞書『名語記』(1268〜1275年ごろ成立、経尊編と伝わる)にも、「寒には人の足手までものびざる也」という用例があり、寒さのきびしい季節を表す言葉として用いられています。
寒の始まりに当たる小寒は、二十四節気の一つです。新暦では一月五日、六日ごろに当たり、この日を「寒の入り」とし、そこから寒明けまでを「寒の内」と呼びます。
「寒九」は、この寒に入ってから九日目を指す言葉です。おおよそ一月十三日ごろに当たり、冬の寒さの中でも、暦に目を向ける暮らしの中で意識されてきた日です。
「寒九の雨」は、この寒九の日に降る雨を指します。寒の入りから九日目という特定の日と、そこに降る雨とが結びつき、単なる天気ではなく、農家が豊作の前触れとして喜ぶ雨を表す言葉になりました。
古い用例としては、『絵入新潟新聞』(1886年・明治19年1月14日)に、この表現が出てきます。近代の新聞に現れる段階で、すでに「寒九の日の雨は豊作の兆し」という理解を伴う言葉として用いられていたことが分かります。
寒の時期には、その年の天候や作柄を占うような見方もありました。寒の三十日間の天候を一年の各月に対応させて見る「寒試し」という考え方もあり、寒のころの天気は、農作と結びつけて大切に受けとめられていました。
その背景には、昔の農村で、暦と天候を細かく見ながら農作業の時期を考えていた暮らしがあります。雨がいつ降るかは、田畑の水や作物の育ちにかかわるため、寒い時期の雨も、春から夏の作柄を思う手がかりとして見られました。
反対に、「寒に雨なければ夏日照り」という言い方もあります。寒中に雨が降らない年は、夏に日照りとなり凶作につながるという考えを示すもので、寒の雨が農事の見通しと深く結びついていたことをよく表しています。
したがって、「寒九の雨」は、ただ一月の冷たい雨をいうだけの言葉ではありません。冬のさなかに降る雨を、作物を潤し、これから来る農の季節につながるよいしるしとして受けとめた、昔の人々の暦と農の知恵を伝えることわざです。
「寒九の雨」の使い方




「寒九の雨」の例文
- 寒九の雨が降ったので、祖父は今年の田の実りを楽しみにしていた。
- 昔の農家は、寒九の雨を豊作の兆しとして喜んだ。
- 冷たい一月の雨も、寒九の雨と聞くと、少しありがたく思える。
- 寒九の雨ということわざには、暦と農作を結びつけて考えた昔の知恵がある。
- 村では、寒九の雨が降ると、春からの農作業に希望を持ったという。
- 寒九の雨を話題にして、先生は昔の人が天気を大切に見ていたことを説明した。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・小学館編『日本大百科全書(ニッポニカ)』小学館、1984〜1994年。
・大後美保編『天気予知ことわざ辞典』東京堂出版、1984年。























