【ことわざ】
釘の曲がりは鉄鎚で直せ
【読み方】
くぎのまがりはかなづちでなおせ
【意味】
悪い癖を直すには、甘い方法ではなく、厳しい方法を用いなければならないというたとえ。


【類義語】
・荒療治(あらりょうじ)
「釘の曲がりは鉄鎚で直せ」の語源・由来
「釘の曲がりは鉄鎚で直せ」は、曲がった鉄の釘を、かなづちでたたいてまっすぐに戻す作業を、人の悪い癖を直すことに重ねた表現です。かなづちは、頭部を鉄で作り、釘などを打つために用いる道具です。
この言い方では、曲がった釘を軽く扱うだけでは元に戻らず、硬い道具でしっかり打って形を整えるものとして描いています。「曲がり」を人の悪い癖や習慣に、「直す」をその癖を正すことに置き換え、柔らかな注意だけでは改まらない場合には、厳しい方法が必要だと説いています。
明治43年(1910年・明治時代末期)、藤井乙男が編んだ『諺語大辞典(げんごだいじてん)』には、このことわざが収められています。同書は、ことわざをはじめ、故事や俗伝など三万余りの表現を集め、それぞれに簡潔な解釈を加えた辞典です。
その項目には、「釘ノ曲リハ鐵槌デ直セ」とあり、続けて「惡習を矯正するに喩ふ」と記されています。「惡習(あくしゅう)」は悪い習慣、「矯正(きょうせい)」は曲がったものや正しくない状態を直すことであり、実物の釘を修理する話ではなく、人の悪い習慣を正すたとえとして用いることが、すでに明確に示されています。
古い表記の「曲リ」は、現在では送り仮名を補って「曲がり」と書きます。また、「鐵」は新字体の「鉄」に改められました。「かなづち」には「金槌」「鉄槌」「鉄鎚」という表記があるため、古い収録例の「鐵槌」と、現在の「鉄鎚」は、どちらも釘を打つ同じ道具を表しています。
なお、「鉄鎚」を一つの言葉として読むときには、「てっつい」という読み方もあります。この場合は大きなかなづちを指し、そこから厳しい命令や制裁のたとえにも使いますが、「釘の曲がりは鉄鎚で直せ」では「鉄鎚」を「かなづち」と読みます。
明治時代末期の収録例では、特定の人物や出来事を由来として挙げず、釘とかなづちの働きをそのまま人の行いに重ねています。日常でよく使う道具をもとに、長く身についた悪い習慣は、少し注意するだけでは改まらないという経験を、短く印象深い形にまとめたことわざです。
ここでいう「厳しい方法」は、人を傷つけることではありません。守るべき決まりを明確にする、悪い習慣の原因を遠ざける、同じ失敗を繰り返さない仕組みを作るなど、問題を放置せず、きちんと改めるための確かな手立てを指します。
このように、「釘の曲がりは鉄鎚で直せ」は、悪い癖が深く身についているときには、それに見合う強い決意と方法で正す必要があると教えることわざです。
「釘の曲がりは鉄鎚で直せ」の使い方




「釘の曲がりは鉄鎚で直せ」の例文
- 忘れ物を何度も繰り返す弟に、父は釘の曲がりは鉄鎚で直せと、毎晩持ち物表を確認させた。
- 宿題を後回しにする癖を改めるため、釘の曲がりは鉄鎚で直せの考えで、遊ぶ前に机に向かう決まりを作った。
- 安全規則を守らない作業員には、釘の曲がりは鉄鎚で直せと、再教育を終えるまで機械の操作を任せなかった。
- 不正な処理を繰り返した部署に対し、会社は釘の曲がりは鉄鎚で直せとして、承認の仕組みを全面的に改めた。
- 何度注意されても約束を破る友人に、彼女は釘の曲がりは鉄鎚で直せと考え、次に破れば計画には参加させないと伝えた。
- 夜更かしをやめられない自分に、釘の曲がりは鉄鎚で直せと、午後九時以降は端末を別室に置くことにした。
主な参考文献
・藤井乙男編『諺語大辞典』有朋堂書店、1910年。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2006年。
・小学館大辞泉編集部編、松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。























