【ことわざ】
食いつく犬は吠えつかぬ
【読み方】
くいつくいぬはほえつかぬ
【意味】
本当に実力や自信のある者は、むやみに騒いだり威張ったりせず、必要なときには行動で力を示すというたとえ。


【英語】
・Barking dogs seldom bite.(よく吠える犬はめったにかみつかない)
【類義語】
・能ある鷹は爪を隠す(のうあるたかはつめをかくす)
・鼠捕る猫は爪を隠す(ねずみとるねこはつめをかくす)
「食いつく犬は吠えつかぬ」の語源・由来
「食いつく」は、ここでは話題に興味を示すという意味ではなく、犬が相手にかみつくことです。「吠えつく」は、相手に向かって激しく吠えることで、「吠えつかぬ」はその否定を表します。
言葉の表面では、実際にかみつく犬は、むやみに吠えて相手を威嚇することなく、すぐ行動に出るという対照を描いています。反対に、盛んに吠える犬は、臆病なため、声で相手を遠ざけようとするものとして捉えられています。
この犬の姿を人間の態度に重ね、本当に実力や自信のある者は、虚勢を張ったり、自分の力を言い立てたりしないという意味になりました。静かであることだけをほめるのではなく、騒がずに行動し、結果によって力を示すところが大切です。
特定の人物や事件に結び付く物語は伝わっておらず、成立した時期や最初の使用例も明らかではありません。犬が吠えることと、実際にかみつくこととの違いを、人の言葉と行動との違いに重ねた表現として定着しています。
よく似た言い方に、「吠える犬は噛みつかぬ」があります。こちらは、盛んに吠える犬ほど実際にはかみつかないという側から、口先で騒ぐ者ほど実行力に乏しいことを表し、英語の「Barking dogs seldom bite.」に対応する表現として知られています。
「食いつく犬は吠えつかぬ」は、同じ対照を反対側から言い表しています。「吠える者は実行しない」という側ではなく、「実行する者は騒がない」という側から述べるため、落ち着いて力を発揮する人への評価に重心があります。二つのことわざは、意味の上では表裏をなしますが、一方から他方が生まれたとまでは断定できません。
「能ある鷹は爪を隠す」や「鼠捕る猫は爪を隠す」も、能力のある者ほど、それをむやみに人へ見せびらかさないという点で近い表現です。ただし、「食いつく犬は吠えつかぬ」には、力を表に出さないだけでなく、必要な場面ではすぐ行動に移るという意味も含まれています。
このように、犬が吠えることと食いつくことを対照させた具体的な姿から、虚勢よりも実行を重んじる教えへと意味が広がりました。普段は目立たなくても、ここぞという場面で確かな力を発揮した人を表すときにふさわしいことわざです。
「食いつく犬は吠えつかぬ」の使い方




「食いつく犬は吠えつかぬ」の例文
- 彼は普段は寡黙だが、難しい計算をすぐに解き、食いつく犬は吠えつかぬを思わせた。
- 試合前に大声で自信を語らなかった主将は、決勝で見事な働きを見せ、食いつく犬は吠えつかぬを体現した。
- 祖父は自分の腕前を誇らないが、壊れた時計を手早く直し、食いつく犬は吠えつかぬそのものだった。
- 経験豊かな技師が静かに故障の原因を突き止める姿に、同僚は食いつく犬は吠えつかぬという言葉を重ねた。
- 災害現場で黙々と救助に当たる隊員たちを見て、食いつく犬は吠えつかぬとはこのことだと思った。
- 食いつく犬は吠えつかぬというように、真に力のある人は虚勢を張らず、必要なときに行動で示す。
主な参考文献
・現代言語研究会『故事ことわざの辞典 日本語を使いさばく』あすとろ出版、2007年。
・学研辞典編集部編『用例でわかる故事ことわざ辞典』学習研究社、2005年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。























