【ことわざ】
公家にも襤褸
【読み方】
くげにもつづれ
【意味】
高貴な身分の人でも、粗末な衣服を着ていれば、卑しく見えるというたとえ。人の地位や品位が、服装によって判断されることを表す。


【英語】
・Clothes make the man.(服装が人の印象や評価を形作る)
【類義語】
・君飾らざれば臣敬わず(きみかざらざればしんうやまわず)
【対義語】
・馬子にも衣装(まごにもいしょう)
「公家にも襤褸」の語源・由来
「公家にも襤褸」は、朝廷に仕える高貴な人を表す「公家」と、つぎはぎだらけの粗末な衣服を表す「襤褸」とを対照させた表現です。立派な身分も外から直接見えるものではないため、着ているものが粗末であれば、高貴な人であっても、それらしく見えないという意味になります。
「公家(くげ)」は、もとは天皇や朝廷を表した言葉で、のちには朝廷に仕える人々を指すようになりました。『風姿花伝(ふうしかでん)』(1400〜1402年ごろ成立・室町時代、世阿弥著)には、「公家の御たたずまひ、武家の御進退」とあり、公家と武家とを並べて、朝廷に仕える人々の身分や振る舞いを表しています。
このことわざの「襤褸」は、普通には「ぼろ」とも読みますが、ここでは「つづれ」と読みます。「つづれ」は、破れた所を布で継ぎ合わせた衣服や、着古したぼろの着物のことです。漢字では、「綴れ」とも「襤褸」とも書きます。
「つづれ」という言葉は古く、『出観集』(1170〜1175年ごろ成立・平安時代末期)に、破れを継ぎ合わせた衣服を指す用例が出てきます。江戸時代後期の人情本『春色辰巳園(しゅんしょくたつみのその)』(1833〜1835年、為永春水著)にも、「つづれを着たまふとも、心に錦のはれ小袖」とあり、粗末な着物を表す言葉として使われています。
このことわざには、入力された「公家にも襤褸」のほか、「公卿にも襤褸」という表記もあります。「公卿」は普通「くぎょう」と読み、摂政・関白・大臣・大納言・中納言・参議や、三位以上の人々を指しますが、このことわざでは「くげにもつづれ」と読みます。江戸時代には、「公卿」が公家とほぼ同じ意味でも用いられており、二つの表記はいずれも、朝廷に仕える高貴な人を表しています。
「公家にも襤褸」は、「馬子にも衣装」と対にして用いられることがあります。「馬子にも衣装」は、馬を引いて人や荷物を運んだ馬子でも、立派な衣装を着れば風格のある姿に見えるということわざです。一方、「公家にも襤褸」は、もともと高貴な人でも、粗末な衣服を着れば卑しく見えると説きます。
対となる「馬子にも衣装」は、太田全斎が俗語や俗諺を集めた『諺苑(げんえん)』(1797年成立・江戸時代後期)に収められています。「公家にも襤褸」と「馬子にも衣装」は、身分の高低を反対に置きながら、どちらも服装が人の印象を大きく左右することを表しています。
ただし、「公家にも襤褸」は、粗末な衣服を着る人の内面まで劣っているという意味ではありません。人の本当の価値とは別に、外から受ける印象は身なりによって変わるという、世間の見方を表したことわざです。
そのため、現在では、式典に出る人、組織を代表する人、客を迎える人などに、立場にふさわしい身なりを整えることの大切さを説く場面で使えます。見栄を張ることを勧めるのではなく、相手への礼儀や、自分の役割にふさわしい外見を整える必要を示す表現です。
このように、「公家にも襤褸」は、高い地位や優れた中身があっても、外見があまりに粗末であれば、その良さが周囲に伝わりにくいことを教えています。人を外見だけで決めつけてはならない一方で、服装もまた、人に何かを伝える働きをもつという、二つの面を考えさせることわざです。
「公家にも襤褸」の使い方




「公家にも襤褸」の例文
- どれほど有名な講師でも、乱れた服装で壇上に立てば、公家にも襤褸と思われかねない。
- 校長は、公家にも襤褸というから、式典では身なりにも気を配るよう生徒代表に話した。
- 公家にも襤褸の例に漏れず、立派な肩書を持つ彼も、だらしない服装では頼りなく見えた。
- 客を迎える店員には、公家にも襤褸という考えから、清潔な制服を着ることが求められた。
- 公家にも襤褸というように、会社の代表者には、場にふさわしい服装と振る舞いが必要だ。
- 内容に自信があっても、公家にも襤褸と見られないよう、発表会では服装を整えた。
主な参考文献
・集英社辞典編集部編『会話で使えることわざ辞典』集英社、1989年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・小学館大辞泉編集部編、松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・太田全斎『諺苑』1797年。
・Merriam-Webster, “Merriam-Webster.com Dictionary.”























