【ことわざ】
男は松、女は藤
【読み方】
おとこはまつ、おなごはふじ
【意味】
松に藤が絡まるように、女は男を頼みにして生活するものだという昔のたとえ。


【類義語】
・夫唱婦随(ふしょうふずい)
「男は松、女は藤」の語源・由来
「男は松、女は藤」は、松の木と藤の育ち方を、人の暮らしに重ねたことわざです。藤は、幹だけで高く立つのではなく、つるを他の木などに巻きつけながら伸びる植物です。その姿から、松を頼りになる男性に、松に絡む藤を、男性に頼って暮らす女性にたとえています。
松と藤の組み合わせは、このことわざが生まれるよりもはるかに前から、美しい景色として親しまれていました。『枕草子(まくらのそうし)』(1001年ごろ成立・平安時代中期、清少納言著)の「めでたきもの」には、「色あひ深く、花房長く咲きたる藤の花の、松にかかりたる」とあります。濃い色の長い花房をつけた藤が松にかかる姿を、すばらしいものの一つとして挙げた一節です。
この『枕草子』の一節では、松を男性に、藤を女性に見立ててはいません。まず、「松に藤」という取り合わせが、平安時代から詩歌や文学の中で賞美され、その優美な姿が長く親しまれてきました。その古くからの植物表現を背景として、後の時代に、男女の関係を表すたとえへと結び付いていったと考えられます。
現在のことわざに直接つながる古い用例は、人形浄瑠璃(にんぎょうじょうるり)の『薩摩歌(さつまうた)』(1711年正月以前成立・江戸時代中期、近松門左衛門作)に出てきます。『薩摩歌』は、薩摩の侍である源五兵衛と、おまんとの恋を描いた三巻の世話物(せわもの)です。
その「鑓じるし」と呼ばれる部分には、「男は松、をなごは藤と、もとからたとへにあるげな」とあります。「男は松、女は藤とは、昔からたとえにあるそうだ」というほどの意味です。現在とほぼ同じ形の言い回しが、江戸時代中期には、すでに使われていたことが分かります。
特に大切なのは、「もとからたとへにあるげな」という言葉です。これは、作品の登場人物がその場で新しく作ったたとえではなく、以前から世間に伝えられていた言い回しとして口にしていることを表します。そのため、ことわざそのものは、『薩摩歌』が成立するより前から用いられていたと考えられます。
古い用例では、「女」を「をなご」と読んでいます。「をなご」は女性を表す古い言い方で、現在の見出しでも「おなご」と読みます。「男は松」と「女は藤」を並べる簡潔な形は変わらず、松と藤の姿を見れば男女の関係が思い浮かぶ、分かりやすい比喩として定着しました。
このことわざには、男性は独立して女性を支え、女性は男性を頼って暮らすものだという、昔の性別による役割分担が表れています。現在の社会では、夫婦は同等の権利をもち、互いに協力して暮らすことが基本とされています。そのため、今では、理想の男女関係をそのまま勧める言葉というより、かつての男女観を伝えることわざとして用いるのが適切です。
「男は松、女は藤」の使い方




「男は松、女は藤」の例文
- 祖母は、男は松、女は藤という考え方が当たり前だった時代について語った。
- 先生は、男は松、女は藤には昔の男女観が表れていると説明した。
- その時代小説では、男は松、女は藤を理想とする家に生まれた女性の悩みが描かれている。
- 男は松、女は藤という価値観にとらわれず、夫婦は家事と仕事を分担した。
- 江戸時代の浄瑠璃に出てくる男は松、女は藤は、当時すでに知られていたたとえだった。
- 男は松、女は藤を現代で用いる際には、昔の性別による役割分担を表す言葉であることに注意が必要だ。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・清少納言『枕草子』1001年ごろ。
・近松門左衛門『薩摩歌』1711年正月以前。
・『日本国憲法』1946年。
・『男女共同参画社会基本法』1999年。























