【ことわざ】
老い木に花咲く
【読み方】
おいきにはなさく
【意味】
一度衰えたものが、再び勢いを取り戻して栄えることのたとえ。


【英語】
・make a comeback(衰えたあとに再び成功する)
・revive(再び活気や力を取り戻す)
【類義語】
・枯木に花咲く(かれきにはなさく)
・枯れ木に花(かれきにはな)
・埋木に花咲く(うもれぎにはなさく)
「老い木に花咲く」の語源・由来
「老い木に花咲く」は、年を経て衰えた木に、もう一度花が咲く姿をもとにしたことわざです。「老い木」は、年数を経た木、すなわち老木(おいき)を表します。
「老い木に花」という短い形でも用いられ、一度衰えたものが再び栄えることのたとえとして定着しています。「花咲く」を添えた「老い木に花咲く」は、その変化をより動きのある形で表した言い方です。
この表現の背景には、木が年をとって弱ったように見えても、春になれば花をつけることがある、という自然の見方があります。そこから、人や物事も、衰えたまま終わるとは限らず、再び力を取り戻すことがある、という意味へ広がりました。
古い用例として大切なのは、『永久百首(えいきゅうひゃくしゅ)』(永久4年十二月二十日、西暦1117年1月24日・平安時代後期)に見える藤原仲実の歌です。この歌集は、藤原仲実ら七人の歌人による百首和歌として伝わります。
その歌には、「ひととせに春は二度立ちぬれど老木の花はいかが咲くべき」とあります。一年のうちに春が二度来たとしても、老木の花はどうして咲くだろうか、という意味で、老いた木と花の取り合わせが、すでに平安時代の和歌に現れています。
この段階では、現在のことわざのように「再び栄える」と言い切るよりも、老いたものに花が咲くかどうかを問いかける表現です。それでも、「老木」と「花」を結びつけ、衰えと再生を考えさせる発想は、後のことわざの意味につながります。
さらに、『落窪物語(おちくぼものがたり)』(10世紀後半成立・平安時代、作者未詳)にも、「老木ぞと人は見るともいかで猶花咲き出でて君に見なれん」という歌が出てきます。ここでは、年老いた人物が自分を老木にたとえ、なお花を咲かせたいという思いを表しています。
このように、古い文学では、老木に花が咲くことが、年をとった人の再びの活気や願いを表すたとえとして用いられていました。そこから、単に木のことではなく、人や物事が衰えたあとに再び盛んになる意味へ進んでいきました。
似た形に「枯木に花咲く」があります。こちらも、衰えはてたものが再び栄える時を迎えることを表し、室町時代の『玉塵抄(ぎょくじんしょう)』(1563年)に「かれ木に花のさいたことぞ」という用例が伝わります。
「枯木に花咲く」には、ありそうもないことが起こる、または不思議な力で実現する、という意味もあります。一方、「老い木に花咲く」は、年老いて衰えたものが再び勢いを取り戻す、という意味合いがはっきりしています。
現在では、人の晩年の活躍だけでなく、閉店しそうだった店、人気を失った活動、元気をなくした町などが再び盛り上がる場面にも使われます。老いた木に花が咲くというやさしい比喩によって、衰えのあとにも再生の時があることを表すことわざです。
「老い木に花咲く」の使い方




「老い木に花咲く」の例文
- 引退後に始めた陶芸で賞を受け、祖父は老い木に花咲くような活躍を見せた。
- 長く客足が遠のいていた商店街に新しい店が増え、老い木に花咲くにぎわいが戻った。
- 古い劇団が若い俳優を迎えて評判を呼び、老い木に花咲く舞台となった。
- 休部寸前だった合唱部が地域の発表会で注目され、老い木に花咲く結果になった。
- かつて人気を失った祭りが町の人々の工夫で復活し、老い木に花咲く姿を見せた。
- 定年後に学び直した技術で仕事を始めた父に、老い木に花咲くという言葉がよく合う。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・『永久百首(永久四年百首)』永久4年。
・作者未詳『落窪物語』10世紀後半成立。























