【ことわざ】
大鋸屑も言えば言う
【読み方】
おがくずもいえばいう
【意味】
役に立たないようなものでも、もっともらしい理屈をつければ、価値があるかのように言いなせるというたとえ。どのようなことにも、つけようと思えば理屈をつけられることを表す。


【類義語】
・理屈と膏薬はどこへでも付く(りくつとこうやくはどこへでもつく)
・盗人にも三分の理(ぬすびとにもさんぶのり)
「大鋸屑も言えば言う」の語源・由来
「大鋸屑(おがくず)」は、大鋸(おが)や鋸(のこぎり)で材木を挽(ひ)いたときに出る、細かな木の屑です。「大鋸」は、もともと木材を縦に挽いて板を作るために使われた大型の鋸を指します。ことわざでは、材木を作ったあとに残る大鋸屑を、役に立たないものの代表として取り上げています。
この大鋸屑について、無用なものでも言葉を尽くして理屈をつければ、有用なもののように言いなすことができる、というのがもとのたとえです。ここでいう「言えば」は、ただ口に出すという意味ではなく、理由を並べて、価値があるように主張することを表します。
古い例は、江戸時代前期の俳諧書『毛吹草(けふきぐさ)』(1638年序、1645年刊、松江重頼編)にあります。この書物には、「大鋸屑も、言へば言はる」に当たる形が収められており、どのような事柄にも、理屈をつけようと思えばつけられるという意味で用いられています。
『毛吹草』は七巻からなる俳諧の書物で、俳諧の決まりや句作に役立つ言葉のほか、当時広く語られていた世話(せわ:世間で使われる言葉やことわざ)も集めています。この表現がその中に収められていることから、遅くとも江戸時代前期には、人々の間で知られる言い回しになっていたことが分かります。
続いて、『世話尽(せわづくし)』(1656年・江戸時代前期、皆虚編)には、「鋸屑も言えば言わる」という形が出てきます。こちらでは、初めの部分を「鋸屑」と書き、「のこぎりくずもいえばいわる」と読みますが、意味は「大鋸屑も言えば言う」と同じです。
「大鋸屑」「鋸屑」、「言わる」「言わるる」「言う」というように、古い時代から、表記や語尾にはいくつかの形がありました。「言わる」は、「そのように言うことができる」「言いなすことができる」という意味を含む古い言い方です。現在の「大鋸屑も言えば言う」は、この語尾を「言う」とした形で、意味そのものは変わりません。
江戸時代中期の歌舞伎『幼稚子敵討(おさなごのかたきうち)』(1753年、並木正三作)にも、「ハテ、鋸屑(オガクヅ)も言へば言わるる。杓子(しゃくし)も定木(じゃうぎ)に成る」とあります。ここでは、無理に見えることでも、言い方しだいで理屈をつけられるという意味をもつ、二つの言い回しが並べられています。
『毛吹草』では「大鋸屑」、『世話尽』では「鋸屑」、『幼稚子敵討』では「鋸屑」と書いて「オガクヅ」と読ませています。このような違いは、耳で伝えられてきたことわざが書物や芝居に取り入れられる際に、さまざまな表記で記されたことを示しています。
このことわざが注意しているのは、理由を述べる行為そのものではありません。事実に合った理由を筋道立てて説明することと、自分に都合のよい結論へ導くために、あとから理屈をつけることとは異なります。「大鋸屑も言えば言う」は、言葉が巧みであれば、価値の乏しいものまで価値があるように見せられるため、言い分だけでなく、事実や中身も確かめなければならないと教えています。
「大鋸屑も言えば言う」の使い方




「大鋸屑も言えば言う」の例文
- 宿題を忘れたことまで学習方法の工夫だと言い張るとは、大鋸屑も言えば言うものだ。
- 大鋸屑も言えば言うで、彼は計画の失敗をすべて予想どおりの結果だったと説明した。
- 売れ残った品を特別な限定品だと言い換える宣伝は、大鋸屑も言えば言うのたぐいである。
- 無駄な出費にも立派な理由を並べる父を見て、母は大鋸屑も言えば言うとあきれた。
- 責任を逃れるための説明なら、大鋸屑も言えば言うになってしまい、相手の信頼は得られない。
- 大鋸屑も言えば言うというが、どれほど巧みに説明しても、記録に残った事実までは変えられない。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・松江重頼編、新村出校閲、竹内若校訂『毛吹草』岩波書店、1943年。
・皆虚『世話尽』西田庄兵衛、1656年。
・並木正三『幼稚子敵討』1753年。




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