【ことわざ】
家の中の盗人は捕まらぬ
【読み方】
うちのなかのぬすびとはつかまらぬ
【意味】
身近なことほど、かえって気づきにくく、見落としやすいということ。


【英語】
・The darkest place is under the candlestick(灯台の下が最も暗い、身近なことほど見えにくい)
【類義語】
・灯台下暗し(とうだいもとくらし)
・魚の目に水見えず(うおのめにみずみえず)
・目で目は見えぬ(めでめはみえぬ)
「家の中の盗人は捕まらぬ」の語源・由来
「家の中の盗人は捕まらぬ」は、家の中にいる盗人にはかえって気づきにくく、捕まえにくいというたとえから生まれたことわざです。家の中は自分のよく知っている場所であり、安心している場所でもあるため、そこに問題があるとは思いにくいという発想がもとにあります。
「家」は、人が住む建物、自分の住んでいる建物、また家族が生活をともにするまとまりを表します。このことわざでは、単に建物だけでなく、自分の身近な範囲や内部のことを広く指す言葉として働いています。
「盗人」は、他人の持ち物を盗み取る者を指します。日本語では「ぬすびと」のほか、「ぬすと」「ぬすっと」などの形も用いられ、古くから人の財物を奪う者を表す言葉として使われてきました。
このことわざのたとえでは、盗人が遠くから来るのではなく、家の中にいる点が大切です。外から入ってくる危険には注意しても、すぐ近くや内部にあるものには油断が生じやすい、という人間の見落としを表しています。
同じ考えを表すことわざに、「灯台下暗し」があります。これは、灯火をともす照明具の下が周囲より暗くなることから、身近な事情や近くの事柄には意外に気づきにくいという意味で使われます。
「灯台下暗し」は、『毛吹草(けふきぐさ)』(1638年・江戸時代前期、松江重頼編)に「灯台もとくらし」という形の古い例があります。そこでは、明かりのすぐ下が暗いという具体的な様子が、身近なことを見落とすたとえとして早くから定着していたことが分かります。
「家の中の盗人は捕まらぬ」も、この「近すぎるものほど見えにくい」という考えを、家と盗人という分かりやすい場面で言い表しています。灯火の下が暗いというたとえが視覚に寄った表現なら、家の中の盗人は、安心している場所ほど用心が薄くなるという生活感覚に寄った表現です。
近い考えをもつ言葉に、「魚の目に水見えず」もあります。魚にとって水はあまりにも身近なものなので、かえって意識しにくいというたとえで、身近で自分に深く関係するものほど気づきにくいことを表します。
また、「目で目は見えぬ」は、他人のことは分かっても自分のことは分かりにくい、という意味を表します。これも、近すぎるもの、自分に近いものほど見えにくいという点で、「家の中の盗人は捕まらぬ」と通じています。
このことわざは、実際の盗人の話だけをいうものではありません。家族の変化、友人の悩み、教室の小さな問題、職場の内部の不正など、すぐ近くにあるためにかえって見過ごしてしまう事柄を戒める表現です。
つまり、「家の中の盗人は捕まらぬ」は、身近だからこそよく分かっていると思い込まず、近くのものにも注意深く目を向ける大切さを教えることわざです。近いものへの油断を、家の中の盗人という強い比喩で示しているところに、この言葉の分かりやすさがあります。
「家の中の盗人は捕まらぬ」の使い方




「家の中の盗人は捕まらぬ」の例文
- 教室の落とし物が増えた原因は係の確認もれで、家の中の盗人は捕まらぬという言葉がぴったりだった。
- 家族のだれも気づかなかった電気の消し忘れは、まさに家の中の盗人は捕まらぬだった。
- 会社の小さな不正が長く見過ごされたのは、家の中の盗人は捕まらぬという状況に近い。
- 毎日使う棚の奥に探し物があったとは、家の中の盗人は捕まらぬとはこのことだ。
- 友人の元気のなさに周囲だけが気づいていたのに、親しい自分が気づかなかったのは、家の中の盗人は捕まらぬだった。
- 問題の原因を外にばかり求めていたが、家の中の盗人は捕まらぬで、原因は自分たちの手順にあった。
主な参考文献
・北村孝一監修『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・松江重頼編『毛吹草』1638年。























