【ことわざ】
歌は世につれ世は歌につれ
【読み方】
うたはよにつれよはうたにつれ
【意味】
歌は時代の流れに応じて変わり、世の中のありさまもまた、流行する歌に影響されるということ。


【英語】
・Popular songs change with the times and the times change with popular songs(流行歌は時代とともに変わり、時代も流行歌とともに変わる)
【類義語】
・歌は世に連れる(うたはよにつれる)
「歌は世につれ世は歌につれ」の語源・由来
「歌は世につれ世は歌につれ」は、歌と世の中とが互いに関わり合いながら変化していくことを表すことわざです。ここでいう「歌」は、主に世間で広く歌われる流行歌を指し、時代の気分や人々の暮らしを映すものとして考えられています。
このことわざの「つれ」は、「連れる」から来ています。「連れる」は、人や物を伴う意味のほか、一方の状況が変化すると、それに伴って他方も変化するという意味をもちます。
「世に連れる」という言い方は、世の中の動きに従うこと、世の風潮を追うこと、時代の移り変わりに伴うことを表します。この意味から、「歌は世につれ」は、歌が時代の流れに合わせて変わるという言い方になります。
古い形としては、「歌は世に連れる」という言い方があります。この形では、世の中の動きが先にあり、歌がその動きに従って変化していくという向きが強く表れています。
のちに、「歌は世につれ」に「世は歌につれ」が加わり、対句の形が整いました。前半は「歌が時代に影響される」ことを表し、後半は「世の中も歌の流行に影響される」ことを表します。
この形になると、歌と世の中の関係は一方通行ではなくなります。歌は時代の空気を受けて生まれ、同時に、その歌が人々の気分や記憶を動かし、時代の印象を形づくるものとして受け止められます。
流行歌という言葉は、ある一時期に世間に広まり、その時々の社会の雰囲気などを反映して、多くの人に好まれ歌われる歌を指します。この意味からも、歌と世相を結びつける考え方は、「歌は世につれ世は歌につれ」の内容とよく合います。
現在の形に近い用例として、高橋和巳の小説『白く塗りたる墓』(1970年・昭和45年、高橋和巳著)に「歌は世につれ、世は歌につれというにすぎません」とあります。この用例では、報道機関の姿勢を論じる文脈の中で、世の中の動きに応じるだけの態度を批判的に述べる表現として使われています。
このことわざは、歌を単なる娯楽としてだけ見るのではなく、時代の気分や人々の心の動きと結びついたものとして見る言い方です。戦争、復興、恋愛、家族、ふるさと、若者文化など、その時代に多くの人が感じたことは、歌の言葉や旋律に表れやすいものです。
一方で、世の中も歌から影響を受けます。多くの人が同じ歌を口ずさむと、その歌は思い出や流行の合図になり、時代を語るときの手がかりにもなります。
表記には、「歌は世につれ世は歌につれ」と仮名で書く形のほか、「歌は世に連れ世は歌に連れ」と漢字を交える形もあります。どちらも、「世の変化」と「歌の流行」が互いに関わるという意味は同じです。
現在では、昔の流行歌を振り返るときや、時代ごとの音楽の変化を語るときによく使われます。歌は時代を映し、時代もまた歌によって記憶される、という考えを短く表したことわざです。
「歌は世につれ世は歌につれ」の使い方




「歌は世につれ世は歌につれ」の例文
- 昭和の流行歌を聞くと、歌は世につれ世は歌につれという言葉どおり、その時代の暮らしが浮かび上がる。
- 応援歌や復興を願う歌が広く歌われる様子に、歌は世につれ世は歌につれの意味を感じる。
- 若者の言葉や価値観が歌詞に表れるのは、歌は世につれ世は歌につれの一例である。
- 祖母は昔の歌番組を見ながら、歌は世につれ世は歌につれだと言って、当時の町の様子を話してくれた。
- 音楽の流行をたどると、歌は世につれ世は歌につれということわざが、社会の変化をよく表していると分かる。
- 流行した歌が卒業式や運動会の思い出と重なるのも、歌は世につれ世は歌につれということだ。
主な参考文献
・松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・佐竹秀雄・武田勝昭・伊藤高雄編、北村孝一監修『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年。
・高橋和巳『白く塗りたる墓』1970年。
・EDP『英辞郎 on the WEB』。























