【慣用句】
金的を射止める
【読み方】
きんてきをいとめる
【意味】
多くの人があこがれるものや、手に入れにくい大きな目標を、自分のものにすること。


【英語】
・win the most coveted prize.(だれもが望む最高の賞を勝ち取る)
【類義語】
・金的を射落とす(きんてきをいおとす)
・金的を射当てる(きんてきをいあてる)
「金的を射止める」の語源・由来
「金的」は、もともと弓で射る金色の的を指す言葉です。金紙を張った小さな板の中央に円を描いたものなどがあり、普通の的よりも小さく、射抜くには高い技量が必要でした。形や大きさは行事や地域によって異なりますが、金色の小さな的を射抜くことは、特別な成果と結び付いていました。
江戸時代の浜松地方では、弓の競技で的を次第に小さくしていき、最後に直径二寸ほどの金的を射る方法が行われていました。金的はその中で最も小さな的であり、見事に射抜いた者の名や功績は、額に記されて神社や寺へ奉納されました。
浜松地方に残る「金的中」の額のうち、古いものには安永六年、すなわち1777年の年記があります。また、この地域では、18世紀半ば以前から神社や寺で弓の競技会が開かれていました。金的を射抜くことが、技量を示す名誉ある出来事として大切にされていたことが分かります。
こうした弓術の金的は、やがて「あこがれの目標」「大きな目的」「得がたい幸福」のたとえにもなりました。『誹風柳多留(はいふうやなぎだる)』五十六篇(1811年・江戸時代後期)には、「金的と見込まれ矢文やたらくる」とあり、金的が、人々から強く望まれる相手や目標を表す言葉として使われています。
一方、実際の弓の的を表す用例は、夏目漱石の『夢十夜(ゆめじゅうや)』(明治41年)「第九夜」にも出てきます。作中の八幡宮には、藩士が射抜いた金的を、その者の名前とともに掲げた額が数多く掛かっているとあります。金的を射抜いた者の名を残す習わしが、近代の読者にも理解できるものとして描かれています。
「射止める」は、もとは矢や弾を命中させて獲物を捕らえたり、仕留めたりすることを表す動詞です。15世紀末ごろの謡曲には、この具体的な意味での古い用例があり、後には、狙っていた目的を達成し、自分のものにするという比喩的な意味へと広がりました。
「あこがれの目標」を表すようになった「金的」と、「狙ったものを獲得する」という意味へ広がった「射止める」が結び付き、「金的を射止める」という形が定着しました。「金的を射落とす」「金的を射当てる」も、同じ意味で使われます。
つまり、金色に輝く小さな的を正確に射抜くという具体的な弓術の場面から、多くの人が望みながらも、なかなか得られない目標を勝ち取るという現在の意味が生まれました。ただ成功したというだけでなく、競争の末に、特に価値の高いものを手にしたことを強調する表現です。
「金的を射止める」の使い方




「金的を射止める」の例文
- 無名の新人が最高賞という金的を射止める快挙を成し遂げた。
- 激しい選考の末、彼女は主役の座という金的を射止めることに成功した。
- 長年の研究が実り、国際的な賞という金的を射止める結果となった。
- 小さな町工場が大手企業との契約という金的を射止めるまでには、多くの試作があった。
- 初出場のチームが全国優勝という金的を射止めるとは、誰も予想しなかった。
- 難関試験を突破して希望の職に就き、ついに金的を射止めることができた。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・近藤いね子・高野フミ編集主幹『プログレッシブ和英中辞典 第4版』小学館、2011年。
・浜松市役所編『浜松市史 二』浜松市役所、1971年。
・『誹風柳多留 五十六篇』1811年。
・夏目漱石『夢十夜』1908年。























