【ことわざ】
海老で鯛を釣る
【読み方】
えびでたいをつる
【意味】
少しの元手や労力で、大きな利益を得ることのたとえ。わずかな贈り物をして、多くの返礼を受けることにもいう。


【英語】
・To throw a sprat to catch a herring.(小魚を投げてニシンを捕る)
【類義語】
・蝦蛄で鯛を釣る(しゃこでたいをつる)
・濡れ手で粟(ぬれてであわ)
【対義語】
・労多くして功少なし(ろうおおくしてこうすくなし)
・骨折り損のくたびれ儲け(ほねおりぞんのくたびれもうけ)
「海老で鯛を釣る」の語源・由来
「海老で鯛を釣る」は、小さな海老を餌にして、海老よりずっと価値の高い鯛を釣り上げるという、釣りの具体的な場面から生まれたことわざです。海老は一尾だけでは価値が大きくなく、鯛は姿も味もよく高価な魚として扱われてきたため、この対比が「少しの元手で大きな得をする」という意味を分かりやすく表しています。
ここでいう「鯛」は、単なる魚の名だけでなく、大きな利益やすばらしい財宝のたとえとしても使われます。鯛は古くから食用にされ、姿の美しさや「めでたい」に通じる響きから、祝いの席にも用いられてきました。そのため、海老と鯛の差は、ただ大小の差ではなく、日常の小さなものと、めでたく価値の高いものとの落差として受け取られてきました。
ことわざとしては江戸時代に広まり、江戸中期ごろから使われるようになった表現とされています。釣りでは餌を使って魚を得るのは自然なことですが、それを人間の損得や贈答に重ねることで、「小さな犠牲で大きな得をした」という印象がはっきりします。
古い用例として、『四季眺望恩愛二葉艸(しきのながめおんあいふたばぐさ)』(1834年序・江戸時代後期、鼻山人作)があります。この作品は三編九巻の人情本で、「人情本(にんじょうぼん)」は、江戸後期から明治初期にかけて行われた、町人の恋愛や人情の葛藤などを描く小説の一種です。
その実例には、「鰕(エビ)で鯛(タヒ)を釣(ツ)ったより、もそっとめでたい有難い」とあります。ここでは、思いがけずたいへんありがたい結果を得たことを、海老で鯛を釣る以上にめでたいこととして言っています。すでにこの時期には、少しのもので大きな得をするたとえとして、現在に近い意味で使われていたことが分かります。
このことわざは、商売のような継続的な取引だけでなく、一度きりの出来事や贈答の場面にもよく合います。ささやかな手土産を差し出したところ、思いがけず高価なお返しを受けた場合などに、少し恐縮する気持ちをこめて使われることもあります。
また、くだけた会話では「海老鯛」と短くいうこともあります。長い形の「海老で鯛を釣る」は、たとえの絵がはっきり浮かぶ言い方であり、短い形の「海老鯛」は、同じ意味を軽く言い表す日常的な形として使われます。
現在の「海老で鯛を釣る」には、運よく得をしたという明るい響きと、あまりにも得が大きくて少し申し訳ないという響きの両方があります。ただし、相手をだまして得をするという意味ではなく、少ない元手や小さな行いが、結果として大きな利益や返礼につながったことを表すことわざとして定着しています。
「海老で鯛を釣る」の使い方




「海老で鯛を釣る」の例文
- 海老で鯛を釣るように、百円の福引券で高級な果物の詰め合わせが当たった。
- 小さな手土産を持って行っただけなのに、立派な返礼を受け、海老で鯛を釣る形になった。
- 会社は無料の試供品を配っただけで大口の注文を受け、海老で鯛を釣る結果となった。
- 海老で鯛を釣るとはいえ、相手の好意につけこむような態度は慎むべきだ。
- 町内の抽選会で参加賞目当てに出した応募券が旅行券に変わり、海老で鯛を釣る幸運に恵まれた。
- 友人に貸した一冊の本がきっかけで貴重な資料を譲られ、海老で鯛を釣るような申し訳なさを覚えた。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・鼻山人『四季眺望恩愛二葉艸』1834年序。
・平凡社『改訂新版 世界大百科事典』平凡社。























