【故事成語】
栄華有る者は必ず憔悴あり
【読み方】
えいがあるものはかならずしょうすいあり
【意味】
華やかに栄えている人や勢力も、やがて必ず衰える時が来るということ。栄枯盛衰が世のならいであることを表す。


【英語】
・All that prosper must decline(栄えるものは、いずれ衰える)
【類義語】
・盛者必衰(じょうしゃひっすい)
・栄枯盛衰(えいこせいすい)
・一栄一落(いちえいいちらく)
「栄華有る者は必ず憔悴あり」の故事
「栄華有る者は必ず憔悴あり」は、『淮南子(えなんじ)』(前漢、紀元前139年成立、淮南王劉安のもとで編纂)の「説林訓」にもとづきます。『淮南子』は全21編からなる思想書で、道家思想を軸としながら、政治や宇宙、人生、国の盛衰などについて幅広く論じています。
「説林(ぜいりん)」は、さまざまな説を林の木々のように数多く集めたもの、という意味です。「説林訓」には、物事の道理や人の生き方を短いたとえによって示す言葉が、数多く並んでいます。
その中に、「有榮華者必有憔悴、有羅紈者必有麻蒯」とあります。前半が「栄華有る者は必ず憔悴あり」に当たる部分で、後半には、「美しい絹織物を着る者には、粗末な麻の衣服を着る時もある」という趣旨の文が続きます。
「栄華」は、権力や財力によって世に時めき、華やかに栄えることです。「憔悴」は、もとは心労や病気などによってやせ衰えることですが、この言葉では、勢いや暮らし向きが衰え、かつての輝きを失うことまでを広く表しています。
後半の「羅紈」は、上等で美しい絹織物を指します。これに対して、「麻蒯」は粗い材料で作った衣服であり、豊かで華やかな暮らしと、貧しく質素な暮らしとを対照させています。
つまり原文は、栄えている状態と衰えた状態を、地位や名声だけでなく、身に着ける衣服の違いによっても示しています。美しい絹をまとう日があれば、粗末な麻の衣をまとう日もあるという対句(ついく)を用いて、人の境遇は変わりやすいことを具体的に伝えています。
後漢の高誘による注には、この一節について「言有盛必有衰」とあります。「盛んな時があれば、必ず衰える時もあるという意味である」と簡潔に解いており、古くから、栄華と衰退の移り変わりを説く言葉として理解されていました。
原文では、「有榮華者必有憔悴」と「有羅紈者必有麻蒯」が、同じ形を繰り返して並べられています。「必」の字を重ねることで、盛りの後には衰えが来ることを、避けがたい世の道理として強く印象づけています。
日本語では、この漢文を訓読した「栄華有る者は必ず憔悴あり」という形で用いられています。「憔悴」は、人がやつれるという具体的な意味から、富、権勢、人気、組織などが勢いを失うという比喩的な意味へと広がっています。
この故事成語は、栄えている者がすぐに不幸になると予言する言葉ではありません。どれほど強い権力や豊かな財産を手にしても、それが永遠に続くとは限らないという、世の移り変わりを説く言葉です。
現在では、王朝や名家の興亡だけでなく、企業、町、流行、芸能人、競技団体などの盛衰についても使えます。栄えている時こそおごらず、先々の変化に備えることの大切さを教える表現です。
「栄華有る者は必ず憔悴あり」の使い方




「栄華有る者は必ず憔悴あり」の例文
- 都を支配した一族も数代後には力を失い、栄華有る者は必ず憔悴ありを思わせた。
- 急成長した会社が市場の変化に対応できず衰退した姿は、栄華有る者は必ず憔悴ありの一例となった。
- 人気の絶頂にあった俳優が表舞台から姿を消し、栄華有る者は必ず憔悴ありという言葉が重く響いた。
- 連勝を誇った強豪チームも世代交代に苦しみ、栄華有る者は必ず憔悴ありを実感させた。
- かつて人であふれた港町の静かな通りに、栄華有る者は必ず憔悴ありという世の移ろいを感じた。
- 好調な時ほど備えを怠らない姿勢は、栄華有る者は必ず憔悴ありという戒めを生かすものだ。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・近藤いね子・高野フミ編『プログレッシブ和英中辞典 第4版』小学館、2011年。
・池田知久訳注『訳注「淮南子」』講談社、2012年。
・劉安編『淮南子』前漢、紀元前139年成立。
・劉安撰、高誘注『淮南鴻烈解』後漢。























