【ことわざ】
商いは数でこなせ
【読み方】
あきないはかずでこなせ
【意味】
商売では、一つ一つの利益は少なくても、多く売って全体の利益を上げるのがこつだということ。


【英語】
・small profits and quick returns(薄い利益をすばやい回転で積み上げること)
・pile it high, sell it cheap(品を多く並べて安く売ること)
【類義語】
・塵も積もれば山となる(ちりもつもればやまとなる)
・水積もりて川を成す(みずつもりてかわをなす)
・滴り積もりて淵となる(したたりつもりてふちとなる)
【対義語】
・一攫千金(いっかくせんきん)
・濡れ手で粟(ぬれてであわ)
・海老で鯛を釣る(えびでたいをつる)
「商いは数でこなせ」の語源・由来
このことわざは、商売で一度に大きくもうけるより、少ない利益の商品を数多く売って、全体の利益を積み上げる考え方を、そのまま短く言い表したものです。ことばの形そのものが、商人の心得をまっすぐに伝えています。
「商い」は商売、「数でこなせ」は売る数や取引の回数を重ねよ、という意味です。つまり、一回の売買の大きさより、回転のよさを大切にせよという教えです。
この言い回しは、少なくとも宝暦13年(1763年・江戸時代中期)の『教訓喩草 絵本花の緑(きょうくんたとえぐさ えほんはなのみどり)』上巻に出てきます。江戸時代の半ばには、すでに書物の中に書き留められていたことになります。
その古い本では、このことわざが、築山を作るのに土を少しずつ運んで高くしていくたとえと並べて語られています。小さい量でも積み重ねれば大きな形になる、という考えが、商売の話にも重ねられていたのです。
ここから分かるのは、このことわざが、だれか一人の有名な商人の一言から広まったというより、店の現場で実感されてきた知恵を言い表したものである、ということです。派手な由来話をもつというより、毎日の商売の感覚から育ったことばだと考えるのが自然です。
江戸の町では、人口が増え、庶民向けの品物を多くの人に売る工夫が進みました。安く、分かりやすく、買いやすく売るやり方が広がる中で、このことわざの考え方も受け入れられやすくなりました。
その流れをよく示すのが、三井高利の店で進められた売り方です。延宝元年(1673年・江戸時代前期)に江戸へ進出した後、掛け値なしの現金売りや切り売りを行い、仕入れ値に応じて売値を細かく調節しながら、薄利多売を押し進めたことが伝わっています。
こうした売り方は、少しの利益でも、多くの客に何度も買ってもらえば商いは成り立つ、という発想そのものです。したがって、「商いは数でこなせ」は、江戸の町で発達した小売りの知恵とよく響き合うことばだったといえます。
ただし、このことわざは、ただ数だけを追えばよい、という意味ではありません。一つ一つの品を買いやすくし、客が手に取りやすいように工夫し、その結果として売れる数を伸ばす、という考え方が土台にあります。
そのため、このことわざの反対側には、一度で大きなもうけをねらう考え方が置かれます。少しずつ積み上げる商売の知恵と、一気に大金を得ようとする願いとの違いが、このことばの輪郭をはっきりさせています。
つまり「商いは数でこなせ」の由来は、古い教訓書に書かれるほど広まっていた、町の商人たちの実感にあります。江戸時代の商業が育つ中で、薄い利益でも回数を重ねて大きな利益にするという考えが、商売の基本として言い伝えられてきたのです。
「商いは数でこなせ」の使い方




「商いは数でこなせ」の例文
- 学校のバザーでは、一個のもうけより買いやすさを重んじ、商いは数でこなせの考えでしおりを安く並べた。
- 町のパン屋は一つ当たりの利益を抑え、朝から夕方まで切れ目なく売って、まさに商いは数でこなせを実践した。
- 祖母は縁日の店で、高い品を少し売るより手頃な品をたくさん動かすほうがよいと言い、商いは数でこなせと教えた。
- 友人の雑貨店は一点豪華の品に頼らず、文房具を回転よく売って商いは数でこなせの形を取った。
- 新しい弁当店は値段を抑えて会社員に毎日買ってもらい、商いは数でこなせの通りに売上を伸ばした。
- 商店街の朝市では、少しずつでも客数を増やす工夫が、商いは数でこなせという言葉によく合っていた。























