【故事成語】
安に居て危を思う
【読み方】
あんにいてきをおもう
【意味】
世の中が平和で問題がないときにも、危険や災難を考えて用心し、備えを怠らないという教え。


【英語】
・be prepared for danger in times of peace.(平和なときにも危険に備える)
【類義語】
・治に居て乱を忘れず(ちにいてらんをわすれず)
・備えあれば憂いなし(そなえあればうれいなし)
・転ばぬ先の杖(ころばぬさきのつえ)
【対義語】
・偸安(とうあん)
「安に居て危を思う」の故事
この故事成語のもとになる言葉は、漢籍の『春秋左氏伝(しゅんじゅうさしでん)』に出てくる「居安思危」です。『春秋左氏伝』は、『春秋』の解釈書で、左丘明の著といわれ、「左伝」とも呼ばれます。
『春秋左氏伝』襄公十一年には、鄭が晋侯に楽人、楽器、兵車などを贈る場面が出てきます。晋侯は、諸国との関係を整えるうえで功のあった魏絳に、その音楽の半分を与えようとします。
しかし魏絳は、ただ褒美を喜ぶのではなく、君主に向かって、楽しみの中にいるときこそ物事の終わりを考えてほしいと願います。安楽な状態が続くと、人はつい油断し、危険が近づいても気づきにくくなるためです。
そこで魏絳は、「書曰、居安思危、思則有備、有備無患」と述べます。これは、「安らかな状態にいるときに危険を思え。思えば備えができる。備えがあれば患いがない」という意味です。
この言葉の大切な点は、ただ心配することにあるのではありません。危険を思うことが実際の備えにつながり、その備えが非常時の不安や被害を小さくする、という順序まで含んでいます。
日本語では、中国語の「居安思危」を訓読調にして、「安に居て危を思う」と表します。漢字ペディアにも、この言葉は「世の中が平和なときでも、危険や災難を想定して常に用心が必要であるという教え」として示され、『春秋左氏伝』に由来する表現として扱われています。
また、「治に居て乱を忘れず」や「備えあれば憂いなし」とも考え方が近く、平穏な時期にこそ準備を怠らないという戒めとして受け継がれてきました。現在でも、防災、防犯、健康管理、仕事上の備えなど、広い場面で使える言葉です。
「安に居て危を思う」の使い方




「安に居て危を思う」の例文
- 学校の避難訓練を軽く見ず、安に居て危を思う心で非常口を確かめた。
- 家族は安に居て危を思うため、晴れた日にも防災袋の水を入れ替えた。
- 会社が安定している今こそ、安に居て危を思う姿勢で次の不況に備えるべきだ。
- 旅行前に保険や連絡先を確かめるのは、安に居て危を思う行動だ。
- 友人関係がうまくいっているときも、安に居て危を思うように相手への気配りを忘れない。
- 地域の人々は安に居て危を思う気持ちで、川が増水する前の避難場所を話し合った。
主な参考文献
・北京・商務印書館・小学館編『中日辞典 第3版』小学館、2016年。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・円満字二郎編『故事成語を知る辞典』小学館、2018年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・『春秋左氏伝』。























