【ことわざ】
蟻は蹴る能わず、針は呑む能わず
【読み方】
ありはけるあたわず、はりはのむあたわず
【意味】
小さいもの、細いものだからといって軽く見てはいけないというたとえ。見かけの頼りなさだけで、相手や物事の力・働き・危険を見くびることを戒める言葉。


【英語】
・Don’t judge a book by its cover(見かけだけで判断してはいけない)
【類義語】
・小さくとも針は呑まれぬ(ちいさくともはりはのまれぬ)
・一寸の虫にも五分の魂(いっすんのむしにもごぶのたましい)
・山椒は小粒でもぴりりと辛い(さんしょうはこつぶでもぴりりとからい)
「蟻は蹴る能わず、針は呑む能わず」の語源・由来
このことわざは、蟻と針という、どちらも小さく細かなものを並べて成り立っています。蟻は小さいため、普通の相手を蹴るようには扱いにくく、針は細いけれど鋭いため、うっかり呑み込めるものではありません。そのため、「小さいから大したことはない」「細いから危なくない」と決めつける考えを戒める表現として使われます。
「能わず(あたわず)」は、「できない」「なしうることができない」という意味を表す、やや古風な言い方です。この表現では、「蹴る能わず」「呑む能わず」という形によって、蟻も針も、見た目の小ささに反して簡単には扱えないものとして示しています。
古い用例としては、『東京人類学会雑誌』第13巻第143号(1898年・明治31年、黒岩恒)に載る「琉球俚諺(りげん) 第一篇(沖縄島の続き)」の中に、このことわざに当たる形が出てきます。そこでは「蟻は蹴る能はす針は吞む能はす」という、旧かなづかい・旧字体を含む表記で載り、沖縄島のことわざとして採録されています。
「俚諺」とは、民間に言い伝えられてきたことわざを指します。そのため、この表現は、特定の中国古典の人物や事件から生まれた話というより、暮らしの中で小さなものを軽んじない知恵を伝える口承(こうしょう)のことわざとして理解できます。
後には、針の部分を取り出した「小さくとも針は呑まれぬ」「針は小さくても呑まれぬ」という近い言い回しも用いられるようになります。これらは、針が小さいからといって馬鹿にはできない、という考えをより短く表したものです。
現在の「蟻は蹴る能わず、針は呑む能わず」は、蟻と針の二つを並べることで、小さいもの、細いもの、弱そうに見えるものへの油断を強く戒める言い方になっています。外見だけで相手や物事を判断しないという教えは、「一寸の虫にも五分の魂」や「山椒は小粒でもぴりりと辛い」とも通じるものです。
「蟻は蹴る能わず、針は呑む能わず」の使い方




「蟻は蹴る能わず、針は呑む能わず」の例文
- 町はずれの小さな工場だが、高い技術を持っており、蟻は蹴る能わず、針は呑む能わずと言うべき存在だ。
- 細かな数字の違いを軽く見て失敗したので、蟻は蹴る能わず、針は呑む能わずという教訓が身にしみた。
- 小柄な選手を甘く見た相手チームは、蟻は蹴る能わず、針は呑む能わずという結果を思い知らされた。
- 少人数の班でも準備が行き届いていて、蟻は蹴る能わず、針は呑む能わずと先生にほめられた。
- 小さな部品一つの不具合が機械全体を止め、蟻は蹴る能わず、針は呑む能わずという言葉どおりになった。
- 新人の意見だからと退けず、蟻は蹴る能わず、針は呑む能わずの心で耳を傾けるべきだ。
主な参考文献
・松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・黒岩恒「琉球俚諺 第一篇(沖縄島の続き)」『東京人類学会雑誌』第13巻第143号、東京人類学会、1898年。
・Oxford University Press『Oxford Advanced Learner’s Dictionary』Oxford University Press.























