【ことわざ】
当たって砕けろ
【読み方】
あたってくだけろ
【意味】
失敗してもかまわないという覚悟で、ためらわず思い切って物事を行えということ。


【英語】
・go for broke.(成功を願って、持てる力や手段を思い切って注ぎ込む)
【類義語】
・駄目でもともと(だめでもともと)
・伸るか反るか(のるかそるか)
・一か八か(いちかばちか)
【対義語】
・石橋を叩いて渡る(いしばしをたたいてわたる)
「当たって砕けろ」の語源・由来
「当たって砕けろ」は、「当たる」と「砕ける」という、動きの強い二つの言葉から成っています。「当たる」には、物がぶつかる、相手に向かう、難しい事を身に引き受けて取り組むという意味があり、「砕ける」には、物が衝撃で小さく壊れる、気持ちや勢いがくじけるという意味があります。
つまり、もとの感覚では、硬いものに勢いよくぶつかり、たとえ自分が砕けてもかまわないという強い覚悟を表す言い方です。そこから、成功するか失敗するかを考えすぎて動けないとき、思い切って実行するよう促すことわざとして用いられるようになりました。
近い形の古い用例として、近松門左衛門作の浄瑠璃(じょうるり)『丹波与作待夜の小室節(たんばよさくまつよのこむろぶし)』(宝永4年・1707年、大坂竹本座初演)に、「男はあたってくだけいじゃ、かんにんして下され」という言い回しが出てきます。この形では、くよくよ考えず、さっぱりと気持ちを決めるという意味と、成り行きが分からなくてもまず実行することが大事だという意味が重なっています。
さらに、江戸時代中期の作品『諸芸袖日記』(1743年)には、「当(アタ)ってくだけいぢゃ」という形が出てきます。この用例では、成功するかどうかにかかわらず、進んで決行するべきだという意味で使われており、現在の「当たって砕けろ」に近い働きがすでに整っています。
明治時代になると、坪内逍遙の小説『当世書生気質(とうせいしょせいかたぎ)』(1885〜1886年)に、「当たって砕ける一六主義」という言い方が出てきます。「当たって砕ける」という形が、思い切って行動する姿勢を表す言い回しとして、近代の文章にも用いられていたことが分かります。
現在よく使われる「当たって砕けろ」は、命令の形で相手を励ます表現として定着しています。ただし、このことわざは、準備も考えもなく無謀に進めという意味ではありません。失敗する可能性を承知しながらも、行動しなければ何も変わらない場面で、勇気を出して試みることを促す言葉です。
「当たって砕けろ」の使い方




「当たって砕けろ」の例文
- 合唱コンクールの独唱に立候補するか迷ったが、当たって砕けろの気持ちで手を挙げた。
- 初めての面接で緊張していたが、当たって砕けろと思って、自分の考えを正直に伝えた。
- 難しい企画案だったが、当たって砕けろと考えて、会議で提案した。
- 海外の学校に応募する自信はなかったが、当たって砕けろの精神で願書を送った。
- 友人との仲直りはうまくいくか分からなかったが、当たって砕けろと思って謝りに行った。
- 新しい店への出店は不安も多かったが、当たって砕けろの覚悟で準備を進めた。
主な参考文献
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・小学館国語辞典編集部編『デジタル大辞泉』小学館。
・近松門左衛門『丹波与作待夜の小室節』1707年。
・『諸芸袖日記』1743年。
・坪内逍遙『当世書生気質』1885〜1886年。
・Merriam-Webster『Merriam-Webster.com Dictionary』Merriam-Webster。























