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【新たに沐する者は必ず冠を弾く】の意味と使い方や例文!故事は?(類義語・対義語・英語)

新たに沐する者は必ず冠を弾く

【故事成語】
新たに沐する者は必ず冠を弾く

【読み方】
あらたにもくするものはかならずかんむりをはじく

【意味】
髪を洗ったばかりの人が冠のちりを払ってからかぶるように、身を潔白に保とうとする人ほど、汚れたものや不正なことを避けようとすること。

ことわざ博士
「沐する」は髪を洗うこと、「冠を弾く」は冠をはじいてちりを払うことを表すんだよ。
助手ねこ
不正・悪習・俗悪なものに染まりたくないという、潔白を守る態度を言う場面で用いるニャン。

【英語】
・keep one’s hands clean(不正に関わらず身を清く保つ)

【類義語】
・清廉潔白(せいれんけっぱく)
・清浄潔白(せいじょうけっぱく)

【対義語】
・和光同塵(わこうどうじん)

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「新たに沐する者は必ず冠を弾く」の故事

故事成語を深掘り

この故事成語は、中国古典『楚辞(そじ)』の「漁父」に出てくる屈原と漁父の対話に基づきます。『楚辞』は、屈原とその門下、またその流れをくむ作品を収めた書で、漢の劉向編と伝えられます。屈原は中国戦国時代の楚の政治家・詩人で、讒言(ざんげん:人をおとしいれる悪口)によって追放され、のちに汨羅(べきら)に身を投じた人物として伝わります。

「漁父」では、追放された屈原が川のほとりをさまよい、顔色も姿もやつれた状態で漁父に出会います。漁父がなぜそのような姿でいるのかと問うと、屈原は、世の中の人々は濁っているが自分だけは清く、人々は酔っているが自分だけは醒めているので追放された、と答えます。

それに対して漁父は、世に合わせて生きることもできるのではないか、と屈原に語ります。屈原はそれを受け入れず、「吾聞之,新沐者必彈冠,新浴者必振衣」と述べます。髪を洗ったばかりの人は冠のちりを払ってからかぶり、体を洗ったばかりの人は衣のちりを払ってから着る、という意味です。

この言葉のすぐ後で、屈原は、清らかな身に汚れたものを受けることはできない、と述べます。つまり、冠のちりを払うという日常のたとえが、世俗の汚れや不正を身に受けまいとする屈原の強い思いにつながっています。ここでいう「清い」「汚れた」は、体の清潔さだけでなく、心や行いの潔白さを表します。

同じたとえは、屈原の物語だけでなく、古い中国思想の文脈にも出てきます。『荀子(じゅんし)』「不苟」には「故新浴者振其衣,新沐者彈其冠」とあり、身を清めた者が衣や冠の汚れを払うのは人情である、という流れで使われています。また『韓詩外伝(かんしがいでん)』巻一にも「故新沐者必彈冠,新浴者必振衣」とあり、自分の清さに他人の汚れを入れないという説明へつながります。

前漢の司馬遷が著した『史記(しき)』「屈原賈生列伝」にも、屈原の言葉として「新沐者必彈冠,新浴者必振衣」が記されています。『史記』は前91年ごろに完成したと考えられる中国最初の正史で、ここでも、清くありたい者は汚れを受け入れない、という屈原の態度を示す言葉として伝わっています。

日本語では、漢文の「新沐者必彈冠」が「新たに沐する者は必ず冠を弾く」と訓読され、現在の形で故事成語として用いられるようになりました。もとは「髪を洗ったばかりの人は冠のちりを払う」という具体的な動作ですが、そこから、心や行いを清く保とうとする人ほど、わずかな汚れや不正にも近づくことを嫌う、という意味に広がっています。

また、同じ対句の後半にあたる「新浴者必振衣」からは、「衣を振る」という言い方も生まれました。この言い方は、世俗の塵を払い、志を高く保つことを表し、江戸時代前期の俳諧集『冬の日』(1685年)にも用例があります。前半の「冠を弾く」と後半の「衣を振る」は、どちらも、清くした身を汚れに触れさせたくないという発想を支えています。

この故事成語は、ただ潔癖であることをほめる言葉ではありません。屈原の話をふまえると、世の中の流れに合わせて不正や悪習に染まるよりも、自分の清さを守ることを選ぶ、という厳しい態度を表す言葉です。そのため、軽い汚れを気にする場面より、心の正しさや立場の清さを守ろうとする場面で使うのがふさわしい表現です。

「新たに沐する者は必ず冠を弾く」の使い方

ともこ
健太くん、さっき公園で意地悪なグループに誘われていたけど、断ったんだって?
健太
うん、彼らの遊び方はルールを守らないから、自分まで悪いことに巻き込まれたくないんだ。
ともこ
まさに、新たに沐する者は必ず冠を弾く、という心がけだね!
健太
自分の正しいと思う気持ちは、いつまでも大切に守っていきたいからね。
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「新たに沐する者は必ず冠を弾く」の例文

例文
  • 不正な頼みをきっぱり断る彼の態度は、新たに沐する者は必ず冠を弾くという言葉にふさわしい。
  • 会計係になった兄は、新たに沐する者は必ず冠を弾くの思いで、家族の集金にも私情を入れなかった。
  • 友人に答えを見せてほしいと言われたが、新たに沐する者は必ず冠を弾くと考えて断った。
  • 会社の規則を曲げて得をしようという誘いに、新たに沐する者は必ず冠を弾くの精神で応じなかった。
  • 地域の代表に選ばれた以上、新たに沐する者は必ず冠を弾くように、少しの不公平も避けるべきだ。
  • 新たに沐する者は必ず冠を弾くというように、信頼を守る人ほど小さな不正にも近づかない。

主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・松村明監修、小学館『大辞泉』編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・飯間浩明編『四字熟語を知る辞典』小学館、2018年。
・劉向編と伝『楚辞』。
・荀況『荀子』。
・韓嬰『韓詩外伝』。
・司馬遷『史記』前91年ごろ。





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