【ことわざ】
猪も七代目には豕になる
【読み方】
いのししもしちだいめにはいのこになる
【意味】
変わらないように見えるものでも、長い年月や世代を経るうちに、少しずつ成長・変化することのたとえ。


【類義語】
・有為転変(ういてんぺん)
【対義語】
・三つ子の魂百まで(みつごのたましいひゃくまで)
「猪も七代目には豕になる」の語源・由来
このことわざは、猪と豕という二つの字がもつ意味の近さを土台にしています。日本語の古い「猪」は、古くは「い」と読み、イノシシやブタを広く指し、特にイノシシをいう言葉として使われました。『古事記』(712年・奈良時代)にも、猪を射る場面の用例があります。
一方の「豕」は、「いのこ」と読み、いのしし、いのししの子、または豚を指します。漢字としては豚を表す字でもあり、「猪」と「豕」は、野生のイノシシと家畜のブタとをまたぐように使われてきた言葉です。
ことわざのもとの発想は、野生の猪も人に飼いならされ、世代を重ねていけば、やがて豚のように変わるという見立てです。ブタは、イノシシ属のイノシシを馴化して成立した肉用の家畜で、中国南部では紀元前8000年ごろ、西アジアでは紀元前6000年ごろに家畜化されたと考えられています。
ここでいう「七代」は、単に正確な七世代だけを数える語ではありません。「七代」には、七つの世代という意味から、長い年月を表す働きもあります。そのため、このことわざの「七代目」は、急な変化ではなく、長く続く時間の中で性質が少しずつ変わっていくことを強めている表現です。
家畜化は、一匹をなつかせるだけで完了するものではありません。人が動物の生殖を管理し、世代を越えて管理を強めていく連続した過程です。イノシシとブタは動物分類上は同一種として続く関係にあり、その違いも、種の中での連続的な変化としてとらえられます。
このことわざが言う「猪が豕になる」とは、見た目が一瞬で変わるという意味ではありません。荒々しく野生的なものでも、環境や育てられ方が代々積み重なると、性質や姿がしだいに変わるという考えを、動物の家畜化になぞらえて表しています。
後には、猪と豚の形質の変化について、猪に豚を交配して代を重ねる実験が行われ、猪から五代でほぼ豚の形質へ近づくことを示す説明もあります。ただし、ことわざの「七代」は実験上の世代数を述べるための言葉ではなく、長い年月を通して変化が進むことを印象づける言い方です。
このように、「猪も七代目には豕になる」は、時間の力を静かに語ることわざです。何も変わらないように思えるものでも、環境、習慣、受け継がれる努力が重なれば、やがて大きな違いを生むという意味につながっています。
「猪も七代目には豕になる」の使い方




「猪も七代目には豕になる」の例文
- 昔は荒れていた庭も、祖父から孫まで手入れを続け、猪も七代目には豕になるの言葉どおり、今では静かな花畑になった。
- 小さな町工場も三代、四代と改良を重ね、猪も七代目には豕になるように、世界へ部品を出す会社になった。
- 新しくできた合唱部は最初ばらばらだったが、先輩から後輩へ工夫が伝わり、猪も七代目には豕になるほどまとまってきた。
- 祖母の代から続く店は、少しずつ品ぞろえを変え、猪も七代目には豕になるという変化を見せている。
- 乱暴に使われていた公園も、地域の人が長年手入れを続け、猪も七代目には豕になるように落ち着いた場所になった。
- 学校の読書週間は、始めたころは参加者が少なかったが、猪も七代目には豕になるのたとえどおり、今では大切な行事として根づいた。
主な参考文献
・小学館『デジタル大辞泉』小学館。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・小学館『日本大百科全書(ニッポニカ)』小学館。
・白川静『字通 普及版』平凡社、2014年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・馬場俊臣「『猪』『豚』に関することわざ――『猪』『豚』をどう捉えてきたか」『札幌国語研究』第26号、北海道教育大学国語国文学会・札幌、2021年。
・黒澤弥悦「イノシシがブタになるまで」東京農業大学教員コラム、2012年。























