【ことわざ】
命あれば海月も骨に会う
【読み方】
いのちあればくらげもほねにあう
【意味】
長く生きていれば、めったにない幸運にめぐりあうこともあるというたとえ。また、命を粗末にせず、長く生きるようにという戒め。


【英語】
・While there’s life, there’s hope(命があるかぎり希望がある)
【類義語】
・生きて海月の骨いためず(いきてくらげのほねいためず)
・命長ければ蓬莱を見る(いのちながければほうらいをみる)
【対義語】
・命長ければ恥多し(いのちながければはじおおし)
「命あれば海月も骨に会う」の語源・由来
「命あれば海月も骨に会う」は、骨をもたない海月が、長く生きていればいつか骨に出会うかもしれない、というありえないほどまれな出来事をたとえにしています。海月には骨がないという前提があり、その前提があるからこそ、「骨に会う」は、普通なら起こらないほど珍しい幸運を表す言い方になります。
「海月の骨」という発想は、古くから「出会うはずのないもの」「めったにないもの」を表す言い方として使われてきました。『今昔物語集』(1120年ごろ)巻十二には、「久良介乃保祢尒阿布」という形が出てきます。これは「海月の骨に会う」という意味で、ありえないものに出会うほど珍しく、うれしいことを表しています。
この古い用例では、海月そのものの生態を細かく説明するよりも、「海月に骨はない」という生活感覚を利用して、まれな喜びを強く表しています。つまり、「海月の骨」は、実物としての骨ではなく、ほとんど会えないもの、普通はありえないものを指す比喩として働いています。
さらに近い形として、浄瑠璃(じょうるり)の『宇賀道者源氏鑑(うがどうしゃげんじかがみ)』(1759年、福松陶芋選)に、「生て海月の骨いためず」という言い方が出てきます。これは、長生きしていれば、めったにはない良い時節にめぐりあうことができる、という意味です。
「生きて海月の骨いためず」は、「命あれば海月も骨に会う」と意味の芯がよく重なります。どちらも、海月と骨という本来結びつきにくいものを組み合わせ、長く生きることによって思いがけない良いめぐりあわせが起こる、という考えを表しています。
海月に骨がないという見立ては、昔話の世界にも広くつながっています。「海月骨なし」と呼ばれる昔話では、竜宮の使いとして猿を連れ出そうとした海月が失敗し、竜宮で罰を受けて骨がなくなったと語られます。この話は、海月の姿を説明する昔話として知られています。
ただし、「命あれば海月も骨に会う」の大切なところは、海月の由来そのものではありません。骨のない海月でさえ、長く生きれば骨に会うかもしれないという大きな誇張によって、命を保ち続けることの尊さと、長い時間の中で思いがけない幸運に出会う可能性を表しています。
後には、同じ発想をもつ「命長ければ蓬莱を見る」という言い方も、長生きしていれば思いがけない幸運に会うことがあるという意味で使われています。「蓬莱」は、仙人が住み不老不死の地とされる伝説上の霊山を指し、海月の骨とは別の想像を用いながらも、長く生きることと幸運との結びつきを表しています。
このことわざは、単に「運がよければよいことがある」と言うだけの言葉ではありません。苦しい時期があっても、命を保って生き続ければ、今は考えられないような良いめぐりあわせに出会うこともある、という静かな励ましを含んでいます。
「命あれば海月も骨に会う」の使い方




「命あれば海月も骨に会う」の例文
- 病気で大会をあきらめた年もあったが、命あれば海月も骨に会うというように、数年後に全国大会へ出場できた。
- 祖母は、長生きしたおかげでひ孫の入学式に出られ、命あれば海月も骨に会うと喜んだ。
- 売れない時期の長かった作家が晩年に評価され、命あれば海月も骨に会うという言葉を思わせた。
- 友人は失敗続きでも研究を続け、命あれば海月も骨に会うような大発見にめぐりあった。
- 昔の仲間と五十年ぶりに再会できた父は、命あれば海月も骨に会うものだとしみじみ語った。
- つらい時期を乗り越えたからこそ、命あれば海月も骨に会うという希望を実感できた。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・尚学図書編『故事・俗信ことわざ大辞典』小学館、1982年。
・佐竹秀雄・武田勝昭・伊藤高雄編、北村孝一監修『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年。
・小学館『日本大百科全書(ニッポニカ)』小学館。
・平凡社『改訂新版 世界大百科事典』平凡社。
・『今昔物語集』1120年ごろ。
・福松陶芋選『宇賀道者源氏鑑』1759年。
・Houghton Mifflin Harcourt『The American Heritage Dictionary of Idioms』Houghton Mifflin Harcourt、2002年。























