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【韋を佩びて以て己を緩くす】の意味と使い方や例文!故事は?(類義語・対義語・英語)

韋を佩びて以て己を緩くす

【故事成語】
韋を佩びて以て己を緩くす

【読み方】
いをおびてもっておのれをゆるくす

【意味】
自分の性格上の欠点を自覚し、それを直すために努力すること。特に、性急な性格をおだやかに改めようと戒めること。

ことわざ博士
「韋を佩びて以て己を緩くす」は、短気な性格を直すため、柔らかななめし皮を身につけたという故事にもとづく表現なんだよ。
助手ねこ
思いつきで行動しがちな人が、落ち着いて考える習慣を身につけようとする場面で用いるニャン。

【英語】
・self-discipline(自分を律して改善すること)
・self-reformation(自分の性格や習慣を改めること)

【類義語】
・韋弦の佩(いげんのはい)
・三省(さんせい)
・日に三度我が身を省みる(ひにみたびわがみをかえりみる)

【対義語】
・過ちて改めざる、これを過ちという(あやまちてあらためざる、これをあやまちという)

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「韋を佩びて以て己を緩くす」の故事

故事成語を深掘り

この故事成語は、中国古代の書物『韓非子(かんぴし)』「観行」に出てくる話にもとづきます。『韓非子』は、中国の戦国時代末の法家の思想家である韓非に関係する論文集で、20巻55編から成る書物として伝わっています。

「観行」では、人は自分の顔を直接見ることができないので鏡で顔を確かめるように、自分の心や行いも、正しい道理によって省みなければならない、という考えが述べられます。その流れの中で、西門豹(せいもんひょう)と董安于(とうあんう)という二人の人物が、自分の性格の欠点を直すために、身につける物を戒めとして用いた話が出てきます。

原文には、「西門豹之性急,故佩韋以自緩;董安于之心緩,故佩弦以自急」とあります。これは、西門豹は性格が急だったので、柔らかな韋(い:なめし皮)を身につけて自分をおだやかにし、董安于は心が緩やかすぎたので、張りつめた弓弦(ゆみづる)を身につけて自分を引き締めた、という意味です。

「韋」は、なめし皮を表す言葉です。「弦」は弓づるで、ぴんと張るものです。また、「佩」は、帯に付けたり身につけたりすることを表します。したがって、西門豹が身につけた韋は、ただの飾りではなく、自分の短気を思い出して心を柔らかくするための戒めでした。

この故事では、二人の人物の性格が対にされています。西門豹は急ぎすぎる欠点を、柔らかな韋によってゆるめようとしました。一方、董安于は緩みすぎる欠点を、張りつめた弦によって引き締めようとしました。つまり、どちらも自分の弱点を見つめ、その弱点と反対の性質をもつ物を身につけて、日々の行いを正そうとしたのです。

原文のあとには、「有餘を以て不足を補い、長を以て短を続ぐ」という考えが続きます。余っているものによって足りないものを補い、長所によって短所をつなぐ、という意味です。この一節によって、「韋を佩びて以て己を緩くす」は、単なる性格の紹介ではなく、自分の欠点を知り、それを補う方法を身の回りに置いて実行する、という教えにつながります。

日本語では、この故事から「韋弦の佩」という言い方も定着しました。「韋弦」は、なめし皮と弓づるを合わせた言葉で、「韋弦の佩」は、自分の性格の欠点を直すための戒めを意味します。対象語の「韋を佩びて以て己を緩くす」は、そのうち西門豹の側、つまり短気な性格をおだやかにしようとする部分を取り出した言い方です。

後の時代には、唐の詩人杜牧の「送杜顗赴潤州幕」にも、「還須整理韋弦佩」という句が出てきます。ここでは、相手に向かって、身を慎み、自分を正すための戒めを整えるように励ます意味で「韋弦佩」が用いられています。

このように、もとの話は西門豹がなめし皮を身につけたという具体的な行動から始まります。しかし、後には「自分の欠点を知り、それを直すために自分を戒める」という広い意味で用いられるようになりました。現在の「韋を佩びて以て己を緩くす」は、短気・せっかち・思慮の浅さなどを自覚し、落ち着いた態度へ改めようとする努力を表す故事成語です。

「韋を佩びて以て己を緩くす」の使い方

健太
昨日のサッカー練習で、友だちがパスを失敗したとき、ぼくはすぐ怒った声を出してしまったんだ。
ともこ
健太くんは一生懸命だけど、急に強い言い方になることがあるね。直したいと思っているの?
健太
うん。試合前に深呼吸するカードを筆箱に入れたよ。韋を佩びて以て己を緩くす、という気持ちで落ち着きたいんだ。
ともこ
それなら、次はきっと声のかけ方も変わるね!
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「韋を佩びて以て己を緩くす」の例文

例文
  • 短気な言い方で友人を傷つけた兄は、韋を佩びて以て己を緩くす思いで、話す前に一呼吸置くようにした。
  • 会議で急いで結論を出しがちな部長は、韋を佩びて以て己を緩くすために、必ず全員の意見を聞いてから発言した。
  • 試合中に焦ってしまう選手は、韋を佩びて以て己を緩くすことを心がけ、開始前に自分の課題を確認した。
  • 妹は怒るとすぐ大声になるため、韋を佩びて以て己を緩くすように、机の前へ落ち着くための言葉を貼った。
  • 失敗を責める口調になりやすい先生は、韋を佩びて以て己を緩くす姿勢で、生徒の事情を先に聞くようにした。
  • 店長は忙しい時間ほど言葉がきつくなる欠点を自覚し、韋を佩びて以て己を緩くすために、声の調子を意識した。

主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2006年。
・円満字二郎編『故事成語を知る辞典』小学館、2018年。
・韓非『韓非子』。
・杜牧『送杜顗赴潤州幕』。
・彭定求等編『全唐詩』1705年。





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