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【一夫耕さざれば天下其の飢を受く】の意味と使い方や例文!故事は?(類義語・英語)

一夫耕さざれば天下其の飢を受く

【故事成語】
一夫耕さざれば天下其の飢を受く

【読み方】
いっぷたがやさざればてんかそのきをうく

【意味】
一人一人の労働は社会全体を支えるものであり、たとえば一人が仕事を怠ると、多くの人に影響が及ぶということ。

ことわざ博士
「一夫耕さざれば天下其の飢を受く」は、農夫一人の仕事を例にして、各自の務めの大切さを表しているよ。
助手ねこ
共同作業、職業、係活動などで、一人の怠りが全体の不都合につながる場面に用いるニャン。

【英語】
・do one’s part(自分の役割を果たす)

【類義語】
・一農耕さざれば民或は之が為に飢う(いちのうたがやさざればたみあるいはこれがためにうう)

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「一夫耕さざれば天下其の飢を受く」の故事

故事成語を深掘り

この故事成語のもとになる考えは、中国古代の農業を重んじる政治思想にあります。人々の食べ物や衣服は、農夫が耕し、女性が織るという日々の働きに支えられているため、一人の怠りも社会全体の不足につながると考えられました。

古い形として、『管子』の「揆度」には、「一農不耕,民有為之飢者;一女不織,民有為之寒者」とあります。一人の農民が耕さなければ、そのために飢える民が出る、一人の女性が織らなければ、そのために寒さに苦しむ民が出る、という意味です。

前漢の賈誼が文帝に出した『論積貯疏』にも、「一夫不耕,或受之饥;一女不织,或受之寒」とあります。この文章では、穀物を蓄えることが国を安定させる根本であり、作る人が少なく、使う人が多ければ、国の財産は必ず苦しくなると説いています。

現在の形に特に近い表現は、『後漢書』(南朝宋、范曄撰)巻四十九の王符伝に出てきます。そこには、王符の文章として「一夫不耕,天下受其饑;一婦不織,天下受其寒」とあり、一人の男が耕さなければ天下がその飢えを受け、一人の女が織らなければ天下がその寒さを受ける、という形で述べられています。

王符は後漢末期の学者で、字は節信といい、隠れて著述に専念した人物です。『潜夫論(せんぷろん)』は王符の政論書で、後漢の桓帝のころ、147〜167年ごろに成立したとされ、当時の政治や社会の乱れを批判する内容を含みます。

『潜夫論』の「浮侈(ふし)」では、世の人々が農業や養蚕を離れて商売や遊びに向かい、根本の仕事をする人が少なく、働かずに食べる人が多くなる様子が批判されています。その流れの中で「一夫不耕,天下必受其饑者;一婦不織,天下必受其寒者」と述べ、さらに「一夫耕,百人食之;一婦桑,百人衣之」と、少数の生産する人が多くの人を支える苦しさを示しています。

この言い方では、「一人が怠けたらすぐ天下が飢える」と単純に言っているのではありません。食べ物や衣服を作る働きは社会の土台であり、その土台を軽んじると、やがて民の暮らしが苦しくなり、国全体の乱れにつながる、という考えを表しています。

日本語では、漢文を訓読した形として「一夫耕さざれば天下其の飢を受く」と読まれ、農作業そのものだけでなく、各自が自分の務めを果たす大切さをいう表現として用いられます。一人の仕事は小さく見えても、全体の支えの一部であるという点が、この故事成語の芯です。

「一夫耕さざれば天下其の飢を受く」の使い方

健太
給食当番の牛乳係を一人休んだだけで、配る時間がかなり遅くなったね。
ともこ
うん。人数が多いクラスだから、一人分の仕事でも大事なんだよ。
健太
一夫耕さざれば天下其の飢を受くだね。小さな係でも、みんなの昼休みに関わっているんだ。
ともこ
そうだね!次は早めに声をかけ合って、みんなで間に合わせよう。
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「一夫耕さざれば天下其の飢を受く」の例文

例文
  • 工場の点検係が一つの確認を怠れば、一夫耕さざれば天下其の飢を受くのように、全体の作業が止まる。
  • 文化祭の準備では、一夫耕さざれば天下其の飢を受くという気持ちで、各班が自分の担当を果たした。
  • 小さな畑の世話でも、一夫耕さざれば天下其の飢を受くと思えば、毎日の水やりを軽く考えられない。
  • 町内清掃は人数が多いほど早く終わるため、一夫耕さざれば天下其の飢を受くの考えがよく当てはまる。
  • 会社の書類確認で一人が手を抜くと、後の担当者に負担がかかり、一夫耕さざれば天下其の飢を受くとなる。
  • 家族で店を営む祖父は、一夫耕さざれば天下其の飢を受くと言って、開店前の分担を大切にしている。

主な参考文献
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・平凡社『改訂新版 世界大百科事典』平凡社、2007年。
・Merriam-Webster『Merriam-Webster.com Dictionary』Merriam-Webster、2026年参照。
・王符『潜夫論』後漢。
・范曄『後漢書』南朝宋。
・賈誼『論積貯疏』前漢。
・『管子』。





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