【故事成語】
烏鳶の卵毀たざれば而る後に鳳凰集まる
【読み方】
うえんのたまごこぼたざればしかるのちにほうおうあつまる
【意味】
仁に基づく寛大な政治や思いやりのある扱いを行えば、優秀な人物が慕って集まるということ。


【類義語】
・仁者に敵なし(じんしゃにてきなし)
・徳は孤ならず必ず隣あり(とくはこならずかならずとなりあり)
【対義語】
・苛政は虎よりも猛し(かせいはとらよりもたけし)
「烏鳶の卵毀たざれば而る後に鳳凰集まる」の故事
この故事成語は、中国の史書『漢書(かんじょ)』(後漢、班固ら撰、82年ごろ成立)に収められた上書の言葉にもとづく表現です。『漢書』は、前漢の高祖から王莽までの時代を扱う正史です。
この言葉を述べたのは、前漢の路温舒です。路温舒は裁判や獄に関わる仕事を経験した人物で、宣帝が即位したころ、徳を重んじ、刑罰をゆるやかにするべきだと上書しました。
その上書では、秦以来のきびしい刑罰の名残があり、役人が罪人から無理に言葉を引き出し、苦しみに耐えられず虚偽の自白をする者がいることを問題にしています。刑のきびしさだけで人を治める政治は、人を正しく導くどころか、民の心をいためるものとして述べられています。
その流れの中に、「臣聞烏鳶之卵不毀,而後鳳凰集」とあります。これは、「からすやとびの卵を壊さないようにして、はじめて鳳凰が集まる」という意味です。
「烏鳶」は、からすととびを指します。鳳凰(ほうおう)は、中国でめでたい鳥、また聖徳ある天子の時代に現れる鳥として考えられてきた想像上の鳥です。
ここで大切なのは、身近な鳥の卵さえ壊さないという、弱く小さなものへの配慮です。小さな命を粗末にしない政治だからこそ、鳳凰のようにすぐれたものや、すぐれた人物が安心して集まる、というたとえになっています。
同じ上書には、続けて「誹謗の罪を誅せずして、而る後に良言進む」という趣旨の言葉も出てきます。悪く言われたことをすぐ罪にしないからこそ、よい意見が進み出る、という考えが並べられており、この故事成語が単なる優しさではなく、よい政治と人材登用の考えを表していることが分かります。
この一節は、『説苑(ぜいえん)』(前漢、劉向編)の「貴徳」にも出てきます。そこでは「鳥鷇之卵不毀,而後鳳凰集」という形があり、細かな表記は異なりますが、鳥の卵を壊さないことと鳳凰が集まることを結びつける趣旨は共通しています。
日本語では、漢文の「烏鳶之卵不毀,而後鳳凰集」を読み下す形で、「烏鳶の卵毀たざれば而る後に鳳凰集まる」と表します。「毀つ」は壊すこと、「而る後」はそのあと、またはそうしてのちという意味です。
現在の意味は、もとの上書の文脈を受けて、仁や徳にもとづいて人を大切にすれば、すぐれた人物が自然に集まるという教えになっています。弱い者や目立たない者を軽んじない姿勢が、やがて大きな信頼を生むという考えを伝える故事成語です。
「烏鳶の卵毀たざれば而る後に鳳凰集まる」の使い方




「烏鳶の卵毀たざれば而る後に鳳凰集まる」の例文
- 烏鳶の卵毀たざれば而る後に鳳凰集まるは、弱い者を粗末にしない政治に優れた人材が集まることを表す。
- 校長は烏鳶の卵毀たざれば而る後に鳳凰集まるを心に置き、目立たない生徒の意見にも耳を傾けた。
- 町長の思いやりある政策は烏鳶の卵毀たざれば而る後に鳳凰集まるの通りで、地域をよくしようとする人々を引き寄せた。
- 烏鳶の卵毀たざれば而る後に鳳凰集まるという教えは、厳しい罰だけで人を動かす考えへの戒めになる。
- 小さな失敗をすぐ責めずに育てる部活動の姿勢は、烏鳶の卵毀たざれば而る後に鳳凰集まるに通じる。
- 会社の代表は烏鳶の卵毀たざれば而る後に鳳凰集まるを信条とし、新人や若手の提案を大切にした。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・白川静『字通 普及版』平凡社。
・円満字二郎編『故事成語を知る辞典』小学館、2018年。
・班固ら撰『漢書』82年ごろ成立。
・劉向編『説苑』前漢。























