【ことわざ】
雨後の筍
【読み方】
うごのたけのこ
【意味】
雨が降ったあとに筍が次々と出るように、物事が相次いで現れたり起こったりすることのたとえ。成長が早いという意味で使うのは誤り。


【英語】
・spring up like mushrooms(次々に現れる)
【類義語】
・続出(ぞくしゅつ)
「雨後の筍」の語源・由来
「雨後の筍」の「雨後」は、雨が降ったあと、つまり雨上がりを指します。「筍」は、竹の地下茎から地上に出る若い芽のことで、このことわざでは、雨のあとに筍が続々と顔を出す姿をたとえにしています。
このことわざで大切なのは、筍の「成長の速さ」そのものではなく、「次々に出てくる数の多さ」です。そのため、人や物事が短い間に相次いで現れる場合に使い、単に大きく育つのが早いという意味では使いません。
日本語では、「雨後の筍」のほかに「雨後の茸(きのこ)」という形も古くから使われました。どちらも、雨のあとに地面から多くのものが出る自然の様子を、人間社会の出来事に重ねた言い方です。
古い用例として、『如是放語』(1898年・明治時代、内田魯庵著)に「雨後(ウゴ)の茸(キノコ)の如く簇生したる会社」という形が出てきます。ここでは、会社が次々に生まれてくる様子を、雨のあとに茸が群がって出る姿にたとえています。
この用例では「筍」ではなく「茸」が使われていますが、表している考え方は「雨後の筍」と同じです。雨上がりに自然物が一斉に出る姿から、似たものが一時に多く現れるという比喩が作られていたことが分かります。
のちの用例として、宮武外骨の『面白半分』(1917年・大正時代)には、総選挙の期日が近づくと、あちらにもこちらにも候補者が名乗りを上げる様子を「雨後の筍よろしく」と表す文が出てきます。政治の場面でも、人が相次いで現れることをたとえる表現として定着していたことが分かります。
この発想に重なる中国語の成語に「雨後春筍」があります。これは、春の雨のあとに筍が多く、勢いよく伸びることを表し、のちに物事がある時期のあと大量に現れ、すばやく広がることのたとえとして使われるようになりました。
宋代の詩人・趙蕃の詩「過易簡彥從」には、「雨後筍怒長,春雨陰暗成。」という句があります。これは、雨のあとに筍が勢いよく伸び、春雨であたりが暗くなる情景を詠んだものです。
また、宋代の詩人・張耒の詩「食筍」には、「荒林春足雨,新筍迸龍雛。」という句があります。荒れた林に春の雨が十分に降り、新しい筍が小さな竜のように勢いよく出るという内容で、雨後の筍の生き生きした姿をよく伝えています。
日本語の「雨後の筍」は、こうした自然観察にもとづく比喩を、分かりやすい和語の形にした表現です。漢字四字の「雨後春筍」よりも、日常の文章では「雨後の筍のように」という形で、会社、店、建物、流行、候補者などが次々に現れる様子を表すことが多くなりました。
現在の意味は、何かが一つだけ現れるのではなく、同じようなものが相次いで現れるという点にあります。雨のあと、あちこちから筍が顔を出す光景を思い浮かべると、このことわざの意味がつかみやすくなります。
「雨後の筍」の使い方




「雨後の筍」の例文
- 駅前の再開発が始まると、新しい飲食店が雨後の筍のように増えた。
- その商品が話題になると、似たようなサービスが雨後の筍のように現れた。
- 選挙が近づき、各地で新人候補が雨後の筍のように名乗りを上げた。
- 動画投稿が流行し、専門の講座が雨後の筍のように開かれるようになった。
- 一つの会社が成功すると、同じ分野の会社が雨後の筍のように設立された。
- 観光地として人気が出た町には、土産物店が雨後の筍のように並び始めた。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2006年。
・松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・國家教育研究院編『教育部《成語典》2020』2020年。
・趙蕃『章泉稿』。
・張耒『柯山集』。
・内田魯庵『如是放語』1898年。























