【慣用句】
うだつが上がらない
【読み方】
うだつがあがらない
【意味】
地位や生活などがなかなかよくならず、ぱっとしないこと。出世できなかったり、よい境遇に恵まれなかったりすること。


【英語】
・never get ahead(いつまでも出世・成功できない)
・can’t get on in the world(世の中で身を立てられない)
【類義語】
・伸び悩む(のびなやむ)
・鳴かず飛ばず(なかずとばず)
【対義語】
・頭角を現す(とうかくをあらわす)
・立身出世(りっしんしゅっせ)
「うだつが上がらない」の語源・由来
「うだつ」は、もとは日本建築に関わる言葉です。古くは、建物の棟を支えるため、梁(はり)の上に立てる短い柱を「宇太知」「宇立」などと呼びました。
この短い柱は、屋根の一番高いところにある棟木(むなぎ)を支える大切な部材でした。建物の側面でその柱が見えることから、妻(つま:屋根の側面にあたる部分)の棟束(むなづか)を指す言葉としても使われました。
のちに、中世末ごろから、町屋の妻に、屋根より上へ突き出す壁が作られるようになり、この部分も「卯建」と呼ばれるようになりました。さらに、軒下につけられる袖壁(そでかべ)を「卯建」と呼ぶこともありました。
「うだつが上がらない」の由来には、大きく二つの考え方があります。一つは、「梲を上げる」が、大工仲間で家を建て、棟上げをすることを表し、そこから志を遂げる意味に広がったという考え方です。
この考え方では、「うだつが上がる」は、家が形になり、棟が上がることと結び付きます。その反対に、「うだつが上がらない」は、物事が形にならず、望むところまで進めない状態を表す言い方になったと考えられます。
もう一つは、町屋の「卯建」と富や格式との関係から生まれたという考え方です。隣家との境に作られた防火壁や装飾を兼ねた卯建は、費用のかかるもので、立派な家構えを示すものでもありました。
そのため、卯建を設けられる家は、物持ちの家、格式の高い家と結び付けて考えられました。そこから、卯建を上げられないことが、よい身分になれないことや、生活がよくならないことのたとえになったと説明できます。
古い用例としては、江戸時代後期の人情本『珍説豹の巻』(1827年・江戸時代後期)に「宇立(ウダツ)の揚(アガ)る瀬(せ)はあるまじ」とあります。ここでは、つらい境遇の中で、身の上がよくなる機会はないだろう、という意味合いで使われています。
この用例では、表記が「宇立」、動詞が「揚る」となっています。現在よく見る「うだつが上がらない」とは表記が少し違いますが、境遇がよくならない、上向く機会がないという意味の芯は、今の用法とつながっています。
また、「うだちが上がらない」という形もあり、「うだつ」と「うだち」は近い形として伝わってきました。建築の部材名から、人の出世や暮らしぶりを表す比喩へ移ったところに、この言い方の特徴があります。
現在の「うだつが上がらない」は、建物そのものを言うよりも、人の仕事、生活、境遇などがよくならず、ぱっとしない様子を表します。もとの建築用語が、上へ伸びる、身を立てる、暮らしがよくなるという発想と重なり、今日の意味に定着した表現です。
「うだつが上がらない」の使い方




「うだつが上がらない」の例文
- 彼はまじめに働いているが、なかなか評価されず、うだつが上がらない日々が続いている。
- 店を始めて五年になるが、売り上げが伸びず、うだつが上がらない状態から抜け出せない。
- 兄は才能があるのに努力の方向を定められず、うだつが上がらないまま過ごしている。
- 小さな会社に勤めてから十年、昇進の機会がなく、うだつが上がらないと感じている。
- あの作家は長い間うだつが上がらない時期を過ごしたが、晩年になって作品が認められた。
- 新しい企画を出しても採用されず、彼の仕事ぶりはうだつが上がらないように見えた。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・松村明監修『デジタル大辞泉』小学館。
・小学館『日本大百科全書』小学館、1984〜1994年。
・平凡社『百科事典マイペディア』平凡社。
・『珍説豹の巻』1827年。























