【ことわざ】
家の前の痩せ犬
【読み方】
うちのまえのやせいぬ
【意味】
自分には力がないのに、後ろ盾があると強がる人のたとえ。


【英語】
・Every dog is valiant at his own door(犬も自分の家の前では勇ましい)
【類義語】
・我が門で吠えぬ犬なし(わがかどでほえぬいぬなし)
・虎の威を借る狐(とらのいをかるきつね)
・内弁慶(うちべんけい)
「家の前の痩せ犬」の語源・由来
「家の前の痩せ犬」は、痩せて弱そうな犬でも、飼い主の家の前では強気に吠える、という身近なたとえから生まれたことわざです。そこから、本人には力がないのに、後ろ盾がある時だけ威張る人を表すようになりました。
このことわざでは、「家の前」という場所が大切です。犬にとって飼い主の家の前は、自分の味方が近くにいて、外敵から守ってもらえると思いやすい場所です。
同じ意味をもつ形に、「門の前の痩犬」があります。「門」は、建物の出入り口を表すほか、「家」や「みうち」を表す意味ももっています。そのため、「家の前」と「門の前」は、どちらも自分の側にある場所を表す近い言い方になります。
「痩犬(やせいぬ)」は、痩せた犬、またはそれにたとえられる人を指す言葉です。江戸時代前期の咄本『当世はなしの本』(1684〜1688年)にも、「痩犬」を人にたとえる例が出てきます。
犬が「吠える」とは、犬や獣が大きな声で鳴くことです。古くは『日本書紀』(720年・奈良時代、舎人親王ら編)や『枕草子』(10世紀末ごろ成立・平安時代中期、清少納言著)にも、犬が吠える表現が出てきます。
このことわざのたとえでは、犬が本当に強いかどうかではなく、どこで吠えているかが問題になります。痩せた犬は本来なら弱そうですが、飼い主の家の前では味方の力を借りているように見えるため、強そうにふるまえるのです。
近い言い方に「我が門で吠えぬ犬なし」があります。これは、どんなに臆病な犬でも自分の家の前ではよく吠える、という意味で、弱い者も自分の場所では威張ることを表します。
また、「旅の犬が尾をすぼめる」は、家では威勢がよくても、外へ出ると意気地がなくなることを表します。犬が自分のなわばりを離れると尾を垂れて小さくなる、という様子から生まれた言い方です。
「虎の威を借る狐」も、他の強い力や権威を借りて威張る点で近い言葉です。ただし、こちらは中国の故事に由来し、強者の威光を利用する小人物を表す言い方です。
「家の前の痩せ犬」は、強さそのものではなく、支えがある時だけ強がる弱さを戒めることわざです。本当の力がある人は、後ろ盾に頼って人に強く出るのではなく、自分の言葉と行動で責任をもつ、という教えにつながっています。
「家の前の痩せ犬」の使い方




「家の前の痩せ犬」の例文
- 兄がそばにいる時だけ同級生に強く出る姿は、家の前の痩せ犬のようだった。
- 部長の名前を出して威張るだけでは、家の前の痩せ犬と思われても仕方がない。
- 友人の助けがある時だけ強気になる彼の態度は、家の前の痩せ犬そのものだった。
- 家の前の痩せ犬にならないよう、自分の意見は自分の責任で言うべきだ。
- 先生の前では強そうにふるまうのに、一人になると黙ってしまうのは家の前の痩せ犬だ。
- 親の立場を借りて友だちに命令するのは、家の前の痩せ犬のようで見苦しい。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・現代言語研究会著『日本語を使いさばく 故事ことわざの辞典』あすとろ出版、2007年。
・小川環樹・西田太一郎・赤塚忠・阿辻哲次・釜谷武志・木津祐子編『角川新字源 改訂新版』KADOKAWA、2017年。
・『当世はなしの本』1684〜1688年。
・『日本書紀』720年。
・清少納言『枕草子』10世紀末ごろ成立。























