【ことわざ】
従兄弟同士は鴨の味
【読み方】
いとこどうしはかものあじ
【意味】
いとこ同士が夫婦になると、情愛が深く、仲むつまじいというたとえ。鴨の肉の味のよさに重ねていう。


【類義語】
・従兄妹は鴨の味(いとこはかものあじ)
「従兄弟同士は鴨の味」の語源・由来
ことわざです。鴨は美味なものとされ、「鴨の味」はたいへんよい味を表し、そこから「はなはだしくよい味わい」や「夫婦としての親しさ」を思わせる言い方へと広がりました。
この表現の土台には、まず「鴨の味」という比喩があります。『誹風柳多留(はいふうやなぎだる)』七十九編(1824年・江戸時代後期)には、「鶺鴒のおしへで知れた鴨の味」という句が出てきます。『誹風柳多留』は、明和2年(1765年)から天保11年(1840年)にかけて刊行された川柳集で、江戸の人情や世相を機知的に詠んだものです。
この句に出てくる鶺鴒(せきれい)は、伊弉諾尊(いざなぎのみこと)・伊弉冉尊(いざなみのみこと)の二神がその鳥の動作を見て夫婦の道を知ったという神話と結びつき、「恋教へ鳥」とも呼ばれました。そのため、「鶺鴒のおしへで知れた鴨の味」は、食べ物としての味だけでなく、夫婦の親しさや男女の情愛を連想させる言い回しとして受け取れます。
江戸時代後期の滑稽本『浮世床(うきよどこ)』(文化8年序〜文政6年、式亭三馬編、三編は滝亭鯉丈編)には、「まづ此鴨をめしあがって御覧じろ、〈略〉従弟同士(イトコドウシ)の味(アジ)がいたす」という用例があります。これは、実際に鴨を食べる場面で、「従兄弟同士は鴨の味」から生まれた「従兄弟同士の味」という言い方を重ね合わせたものです。
この用例では、鴨の肉の美味しさをそのまま述べながら、すでに知られていた言い回しを笑いの中に取り込んでいます。つまり、江戸時代後期には、「鴨の味」がただの食味ではなく、特別にうまいもの、さらに夫婦のよい仲を思わせる表現として働いていたことが分かります。
さらに、江戸時代後期の人情本『清談若緑(せいだんわかみどり)』(19世紀中ごろ、曲山人著編)には、「従弟同士は鴨とやら、鶩(あひる)とやらと言ひますから」という用例が出てきます。ここでは、「従弟同士は鴨」という短い形が口にされ、しかも「鶩とやら」という近い言い換えが添えられています。
このように、古い用例をたどると、まず「鴨の味」が美味やよい情愛を表す比喩としてあり、そこへ「従兄弟同士」の夫婦仲のよさを重ねる形で、「従兄弟同士は鴨」「従兄弟同士は鴨の味」という言い方が定着していったといえます。現在の形では、いとこ同士の夫婦は情愛が深く、仲むつまじいものだという意味で用います。
「従兄弟同士は鴨の味」の使い方




「従兄弟同士は鴨の味」の例文
- 近所の夫婦は幼いころから互いを知るいとこ同士で、従兄弟同士は鴨の味と言われるほど仲がよい。
- 親戚の集まりでは、穏やかに支え合う二人を見て、従兄弟同士は鴨の味という言葉を思い出した。
- 従兄弟同士は鴨の味というが、二人は気心が知れていて、家族ぐるみの付き合いもなごやかだった。
- 昔の手紙には、いとこ同士で夫婦になった二人を祝って、従兄弟同士は鴨の味と書かれていた。
- 従兄弟同士は鴨の味とはいえ、相手の気持ちを軽くからかうような使い方は避けたい。
- 祖父母は穏やかな夫婦で、親戚たちは従兄弟同士は鴨の味とほほえましく話していた。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・小学館『大辞泉』編集部編、松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・集英社辞典編集部編『会話で使えることわざ辞典』集英社、1989年。
・式亭三馬編、滝亭鯉丈編『柳髪新話浮世床』1811〜1823年。
・曲山人著編、一鵬斎芳藤画『清談若緑』19世紀中ごろ。
・呉陵軒可有ほか編『誹風柳多留』1765〜1840年。























