【ことわざ】
大木一本倒るれば小木千本の嘆き
【読み方】
おおきいっぽんたおるればおぎせんぼんのなげき
【意味】
強い勢力をもつものが倒れると、そのあおりを受けて、多くの弱いものが苦しむこと。


「大木一本倒るれば小木千本の嘆き」の語源・由来
「大木一本倒るれば小木千本の嘆き」は、一本の大きな木が倒れると、周囲の数多くの小さな木まで影響を受けるという光景を、人間の社会に置き換えた表現です。大木は強い勢力をもつ人物や組織を、小木はその力に頼ったり、その下で暮らしたりする多くの弱い者を表します。
「倒るれば」の「倒る(たおる)」は、「倒れる」の文語形です。「倒る」に、ある出来事が起きた場合を示す「れば」が付き、「倒れたならば」という意味になります。
「千本」は、きっちり千本という数を示すのではなく、非常に多くの小木を強調する言い方です。一つの大きな勢力の盛衰が、数多くの小さな存在の生活や立場を左右することを、大小の木の対照によって分かりやすく表しています。
これに近い形は、『上野国群馬郡簑輪軍記(こうずけのくにぐんまぐんみのわぐんき)』(17世紀以後成立、作者不詳)に出てきます。この作品は、箕輪城をめぐる戦いを記した軍記で、「大木一本の弱みは小木千本の痛みとなる」という言い方を用いています。
そこでは、中心となる大勢力が衰えたため、その下に連なる多くの勢力にも苦しみが及ぶことを、「大木」と「小木」の関係にたとえています。「大木の弱み」が「小木の痛み」になるという形で、強い者の不幸が弱い者へ広がることを表しています。
同じ比喩は、江戸時代中期に生まれた『大石兵六夢物語(おおいしひょうろくゆめものがたり)』にも使われています。この物語は毛利正直の作とされ、天明4年の自序をもち、薩摩の若者・大石兵六が狐(きつね)退治へ向かう様子を、ユーモアを交えて描いています。
毛利正直著、是枝勇一編集の『兵六夢物語(ひょうろくゆめものがたり)―薩摩奇書(さつまきしょ)』(大正3年)には、兵六が力のある狐を討ち取ったあとの様子として、「大木一本倒るれば、小木千本の悩みにて」とあります。大きな支えを失った狐たちが勢いをなくし、恐れて退いていく場面です。
古い文献には、「弱み」と「痛み」を組み合わせた形や、「倒るれば」と「悩み」を組み合わせた形がありました。現在は、「大木一本倒るれば小木千本の嘆き」という形で、強い勢力の失敗や滅亡が、多くの弱い者へ苦しみを及ぼすことを表します。
このことわざは、単に大きなものが倒れる様子をいうのではありません。会社と取引先、指導者と部下、中心産業と地域の人々など、強い存在と、それに生活や立場を支えられている多くの存在との結び付きを表す言葉です。
「大木一本倒るれば小木千本の嘆き」の使い方




「大木一本倒るれば小木千本の嘆き」の例文
- 大手企業の倒産で多くの取引先が苦境に陥り、大木一本倒るれば小木千本の嘆きとなった。
- 町の生活を支えていた工場が閉鎖され、大木一本倒るれば小木千本の嘆きの様相を呈した。
- 有力な支援者を失った団体では、大木一本倒るれば小木千本の嘆きで活動の継続が難しくなった。
- 主要な買い手の破産は、大木一本倒るれば小木千本の嘆きとなって、地域の生産者を苦しめた。
- 長年組織をまとめてきた会長の失脚により、大木一本倒るれば小木千本の嘆きのとおり、多くの部下が立場を失った。
- 一つの産業に頼り切った町は、大木一本倒るれば小木千本の嘆きにならないよう、新しい仕事を育て始めた。
主な参考文献
・小学館大辞泉編集部編、松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・『上野国群馬郡簑輪軍記』17世紀以後成立。
・毛利正直著、是枝勇一編輯『兵六夢物語―薩摩奇書』是枝勇一、1914年。























