【ことわざ】
大中の小中
【読み方】
おおなかのこなか
【意味】
囲碁で、盤面の中央は広い陣地になりそうに見えても、実際に得られる目数は少ないため、その争いにこだわりすぎてはいけないという教え。


【英語】
・Appearances can be deceptive(見かけは当てにならない)
【類義語】
・見掛け倒し(みかけだおし)
・大山鳴動して鼠一匹(たいざんめいどうしてねずみいっぴき)
【対義語】
・山椒は小粒でもぴりりと辛い(さんしょうはこつぶでもぴりりとからい)
「大中の小中」の語源・由来
「大中の小中」は、囲碁の盤面における陣地の価値をもとに生まれたことわざです。ここでいう「中」は、碁盤の中央を指します。中央に広い空間があると、大きな陣地を手に入れられそうに見えますが、実際には、見た目ほど多くの目数にはならないことがあります。
囲碁では、縦横十九本の線が引かれた碁盤を使います。盤上には三百六十一の交点があり、その位置は大きく「隅」「辺」「中央」に分けられます。黒と白が交互に石を打ち、自分の石で囲んだ陣地を「地」と呼びます。一つの交点を一目(いちもく)として数え、最終的に多くの地を得たほうが勝ちます。
同じ広さの陣地を作ろうとしても、隅・辺・中央では必要な石の数が異なります。隅では碁盤の二つの端を、辺では一つの端を囲いの一部として利用できますが、中央では上下左右を自分の石で囲まなければなりません。そのため、隅や辺は少ない石で地を作りやすい一方、中央では地を完成させるために多くの石を必要とします。
たとえば、盤の中央では十六個の石を使っても九目の陣地しかできない形がある一方、隅や辺を利用すれば、九個の石で十六目の陣地を作れる形があります。これは、盤の端を囲いとして利用できるかどうかによって、石一つ当たりの働きに大きな差が生まれるためです。
また、中央に広がる空間は、石で完全に囲まれるまでは確定した地ではありません。大きな陣地に育つ可能性はあっても、相手に入り込まれたり、境界を破られたりすれば、地は簡単に小さくなります。見た目の広さだけで価値を判断せず、実際に何目の地として残るのかを考える必要があります。
この囲碁の考え方は、「一隅二辺三中央」という格言にも通じます。これは、序盤ではまず隅、次に辺、最後に中央へと目を向けることが効率的である、という教えです。隅が能率のよい場所であることは、囲碁の基本的な打ち方としても重んじられています。
「大中の小中」は、「大きな中央の地に見えても、実際には小さな中央の地にすぎない」という対比を、調子よく縮めた表現です。目立つものや規模の大きなものが、必ずしも大きな利益をもたらすとは限らないという戒めにもつながります。そのため、囲碁以外の場面でも、見た目と実際の価値を冷静に比べるたとえとして用いることができます。
なお、「の」を入れない「大中小中(おおなかこなか)」という、よく似た表現もあります。こちらは、眼のある石どうしが攻め合うとき、大きな中手(なかで:相手の眼を奪う形)をもつ側が、小さな中手をもつ側に勝つという、別の囲碁の教えです。「大中の小中」とは意味が異なるため、区別して覚える必要があります。
「大中の小中」の使い方




「大中の小中」の例文
- 囲碁部の先生は、中央の広い模様にこだわる私に、大中の小中と教えた。
- 見た目だけ立派で利用者の少ない施設は、大中の小中になりかねない。
- 多くの人を集めても成果につながらない催しでは、大中の小中というほかない。
- 広い売り場を借りても客がほとんど来なければ、大中の小中である。
- 規模の大きさばかりを競う計画に対して、父は大中の小中ではないかと注意した。
- 派手な宣伝に比べて得られる利益が少なく、その企画は大中の小中に終わった。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・藤井ひろし『マンガ囲碁必勝法―ことわざ・格言で強くなる!!』山海堂、2001年。
・大垣雄作『格言が教えてくれる』日本棋院、2017年。
・公益財団法人日本棋院『囲碁の基本』。
・日本囲碁連盟『囲碁用語』。




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