【ことわざ】
負えば抱かれよう
【読み方】
おえばだかれよう
【意味】
一つの望みをかなえてやると、それに甘えて、さらに大きな望みを求めてくることのたとえ。人の好意につけあがって、ますます世話をしてもらおうとすること。


【英語】
・Give someone an inch and they’ll take a mile(少し許すと、相手はさらに大きく求めてくる)
【類義語】
・負んぶに抱っこ(おんぶにだっこ)
・抱かされば負ぶさる(だかさればおぶさる)
「負えば抱かれよう」の語源・由来
「負えば抱かれよう」は、子どもを背負ってやると、今度は抱いてほしいとさらに甘える、という日常の情景から生まれたことわざです。小さな願いをかなえてもらっただけでは満足せず、さらに相手へ頼ろうとする様子をたとえています。
「負う」は、背中や肩にのせる、背負うという意味をもつ言葉です。このことわざでは、人を背負って助ける、または世話をする行為を表しています。
「抱く」は、腕でかかえ持つことを表します。背負うだけでなく、さらに抱いてほしいと求めるところに、要求が一段と増えていく様子が表れています。
このことわざの考え方は、「負ば抱かろう」という近い形でも伝わっています。「背負ってやれば、次には抱かれたいという意」から、一度世話をすると、そのうえさらに面倒を見てもらおうとすることを表します。
古い用例として、『恩愛二葉草(おんあいふたばぐさ)』(1834年・江戸時代後期、鼻山人作)初編に、「重ね重ねの御厚恩、背負(オブ)はうと言へば抱からうといふ甘えた言語(ことば)」とあります。相手の厚い恩を受けながら、さらに甘えた言葉を重ねる場面で、このたとえが使われています。
『恩愛二葉草』は、人情本と呼ばれる江戸時代後期の小説の一つです。人情本は、男女の情愛や暮らしの中の人情を描く読み物で、この作品も人の心の動きや言葉のやりとりを通して、当時の世相を映しています。
この用例では、現在の「負えば抱かれよう」と完全に同じ形ではなく、「背負はうと言へば抱からう」という表現になっています。けれども、背負うことを申し出ると、さらに抱かれたいと望む、という発想は同じで、今の意味に直接つながる形です。
後には、「負ぶえば抱かろう」という見出しでも、この言い方がことわざとして扱われています。「負ぶう」は「背負う」「おんぶする」を表す言葉で、幼い子どもを背負う動作に近い、よりくだけた言い方です。
また、「負んぶに抱っこ」という言い方も、同じ系統の表現です。幼児がおんぶの次には抱っこを求めるように、他人の好意に甘えて、迷惑を顧みずに頼りきることを表します。
「負えば抱かれよう」は、ただ幼い子どもの甘えを述べるだけの言葉ではありません。大人であっても、相手の親切に慣れて、それを当たり前のように受け取り、さらに要求を重ねることがあります。
そのため、このことわざは、人に親切にすることを否定する言葉ではありません。助ける側が、相手のためになる範囲を考え、甘やかしすぎて相手をつけあがらせないようにする教えとして受け取ると、意味が分かりやすくなります。
現在では、家庭での甘え、友人への頼みごと、仕事での依存、金銭や手間をめぐる要求などにも用いられます。最初の好意が、次の大きな要求を生むことがあるという、人付き合いの難しさを示すことわざです。
「負えば抱かれよう」の使い方




「負えば抱かれよう」の例文
- 一度だけ資料作りを手伝ったら毎回頼まれるようになり、負えば抱かれようの状態になった。
- 友人の忘れ物を貸しただけなのに、次は宿題まで見せてほしいと言われ、負えば抱かれようだと感じた。
- 負えば抱かれようにならないよう、子どもの頼みを聞く時にも自分でできる部分は任せる必要がある。
- 店が特別に値引きしたところ、さらにおまけを求められ、負えば抱かれようの対応に困った。
- 最初は小さな頼みごとだったが、負えば抱かれようで、相手の要求はしだいに大きくなった。
- 負えば抱かれようというように、親切をするときは、相手を甘やかしすぎない注意も大切だ。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・佐竹秀雄・武田勝昭・伊藤高雄編、北村孝一監修『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・松村明監修『デジタル大辞泉』小学館。
・鼻山人『恩愛二葉草』1834年。
・Cambridge University Press, Cambridge Dictionary, “Give someone an inch and they’ll take a mile.”























