【ことわざ】
煽てと畚には乗るな
【読み方】
おだてともっこにはのるな
【意味】
人からほめられてその気になると、あとでひどい目にあうことがあるので、甘い言葉には気をつけよという戒め。


【英語】
・Don’t be taken in by flattery(おだてにだまされて、その気になってはいけない)
【類義語】
・煽てと畚には乗り易い(おだてともっこにはのりやすい)
・煽てと畚には乗りたくない(おだてともっこにはのりたくない)
・馬に乗るとも口車に乗るな(うまにのるともくちぐるまにのるな)
【対義語】
・煽に乗る(おだてにのる)
「煽てと畚には乗るな」の語源・由来
「煽てと畚には乗るな」は、「おだてに乗る」と「畚に乗る」という二つの「乗る」を重ねた、日本のことわざです。人にほめられていい気になり、よく考えずに動くことを戒める言い方として用いられます。
「煽て」は、「煽てる」から来た言葉です。「煽てる」には、さかんにほめて人の気持ちをあおり、その気にさせる意味があります。
「煽てに乗る」は、他人がそそのかして何かをさせようとする意図に沿って行動すること、また、人におだてられてその気になることを表します。江戸時代末から明治初めごろの人情本『春色江戸紫』にも、「浮言(オダテ)に乗る」という形の用例があります。
「畚(もっこ)」は、縄や竹、蔓などを編んで作り、土砂を運ぶ道具です。土木工事では、土を入れた畚を棒で担いで運ぶなど、人の力による運搬に使われました。
このことわざで大切なのは、畚がただの乗り物ではない点です。畚は土石を運ぶほか、近世には病人や遺体の移送にも用いられ、また死刑囚を刑場へ運ぶ道具とも結びつけられました。
そのため、「畚に乗る」は、楽しい乗り物に乗るという意味ではありません。おだてに乗ることを畚に乗せられることになぞらえ、うっかり乗ればよくない結果につながる、という強い戒めを表しています。
近い形として、「煽てと畚には乗り易い」という言い方があります。これは、人のおだてと土運びの畚には乗りやすいものだ、という表現で、人はほめられるとついその気になりやすいことを示します。
「煽てと畚には乗るな」は、その「乗りやすさ」をさらに戒める形です。人はおだてられると気分がよくなりますが、その心地よさに流されると、自分に不利な役目や危ない話まで引き受けてしまうことがあります。
また、「煽てと畚には乗りたくない」という近い言い方もあります。これは、人のおだてには乗りたくない、という気持ちを強めて表す形です。
歌舞伎『与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)』(1853年・江戸時代後期、三世瀬川如皐作)には、「煽てと畚には乗りたくない」に近い形の用例が伝わります。この作品は、江戸中村座で初演された世話物の歌舞伎狂言です。
明治時代の『北極探撿談 前編』(1911年、日下部四郎太著)にも、「諺にもおだてと畚(モッコ)には乗りたく無い」という形が出てきます。ここでは、すでに「諺」として知られていた言い方として扱われています。
こうして、「おだてに乗る」という心の動きと、「畚に乗る」という好ましくない運ばれ方が結びつきました。現在の「煽てと畚には乗るな」は、気持ちよくほめられたときほど冷静に考え、甘い言葉だけで行動してはいけない、という教えを伝えています。
「煽てと畚には乗るな」の使い方




「煽てと畚には乗るな」の例文
- 友人におだてられて難しい役を安請け合いしたが、煽てと畚には乗るなを思い出すべきだった。
- 店員のほめ言葉だけで高い品物を買いそうになり、煽てと畚には乗るなと自分に言い聞かせた。
- 実力以上に持ち上げられて無理な約束をするのは、煽てと畚には乗るなに反する。
- 兄は上手だとほめられて危ない木登りをしようとし、母に煽てと畚には乗るなと注意された。
- 周囲の甘い言葉に気をよくして大役を引き受ける前に、煽てと畚には乗るなと考える必要がある。
- 煽てと畚には乗るなというように、ほめ言葉の裏に相手の都合がないか見きわめることも大切だ。
主な参考文献
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・集英社辞典編集部編『会話で使えることわざ辞典』集英社、1989年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・白川静著『字通 普及版』平凡社、2014年。
・日下部四郎太『北極探撿談 前編』博文館、1911年。
・三世瀬川如皐『与話情浮名横櫛』1853年初演。























