【ことわざ】
親擦れより友擦れ
【読み方】
おやずれよりともずれ
【意味】
子どもは、親から受ける感化よりも友達から受ける影響のほうが大きく、友達との交わりを通して世間を知っていくということ。


【類義語】
・善悪は友による(ぜんあくはともによる)
「親擦れより友擦れ」の語源・由来
「親擦れより友擦れ」の「擦れ」は、もともと物同士が触れ合い、表面がすり減ったり、変化したりすることを表す言葉です。人について用いる場合には、さまざまな経験を重ねて世間になれ、考え方や振る舞いが変わるという比喩的な意味をもちます。
「友擦れ」は、友達との交際によって世間になれていくことです。このことわざでは、それと対になる「親擦れ」が、親との暮らしや教えを通して世間を知ることを表し、親と友達のどちらからより強い影響を受けるかを、「より」で比べています。
ここでいう「擦れ」は、単に知識を教わることだけを指しません。友達と遊び、話し、同じ行動を重ねるうちに、言葉遣い、習慣、物の見方などが、知らず知らずのうちに変わっていくことまで含んでいます。
したがって、このことわざは、親の教えには力がないという意味ではありません。子どもが家庭の外で友達と過ごすようになると、親から言い聞かされたこと以上に、身近な仲間の行動や考え方をまねながら成長することがある、という人間関係の特徴を表しています。
古い用例としては、太田全斎の『諺苑(げんえん)』(1797年・江戸時代後期)に、このことわざが収められています。『諺苑』は、当時使われていた俗語や俗諺(ぞくげん)をいろは順に集め、意味や出典を記した全七巻の書物です。
『諺苑』に採られていることから、江戸時代後期には、「親から受ける影響よりも、友達から受ける影響のほうが大きい」という考えが、すでに一定の形をもつことわざとして言い表されていたことが分かります。特定の人物の逸話から生まれた言葉ではなく、人の成長を見守る中で得られた経験を、簡潔にまとめた表現です。
「擦れ」には、経験を積んで世間になれるという意味のほか、純粋さを失って悪賢くなるという、好ましくない意味もあります。そのため、「親擦れより友擦れ」は、悪い友達の影響を心配するときに使われることがありますが、「友擦れ」そのものは、友達との交際によって世間を知ることを表す言葉であり、必ずしも悪い変化だけを指すものではありません。
意味の近いことわざに、「善悪は友による」があります。これは、どのような友達と付き合うかによって、人は善くも悪くもなるという教えであり、友達の影響の大きさを説く点で、「親擦れより友擦れ」と共通しています。
ただし、「善悪は友による」が友達の選び方を戒めることに重点を置くのに対し、「親擦れより友擦れ」は、親と友達の影響を直接比べているところに特色があります。江戸時代から受け継がれてきたこのことわざは、子どもの成長には、親の教えだけでなく、日々を共にする友達の存在が大きな力をもつことを伝えています。
「親擦れより友擦れ」の使い方




「親擦れより友擦れ」の例文
- 親擦れより友擦れというように、弟は親に言われても直さなかった早寝を、友達と約束してから守るようになった。
- 親擦れより友擦れで、読書好きの仲間と親しくなった妹は、本をよく読むようになった。
- 少年はサッカーチームの仲間と出会って礼儀正しくなり、親擦れより友擦れを思わせた。
- 母が何度注意しても変わらなかった言葉遣いが友達の影響で改まり、まさに親擦れより友擦れだった。
- 地域の清掃活動に通う友達に誘われ、弟まで毎月参加するようになったのは、親擦れより友擦れの一例だ。
- 子どもの交友関係が生活態度を左右する様子は、親擦れより友擦れということわざによく表れている。
主な参考文献
・小学館『デジタル大辞泉』。
・集英社辞典編集部編『会話で使えることわざ辞典』集英社、1989年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・太田全斎『諺苑』1797年。























