【ことわざ】
餓鬼に苧殻
【読み方】
がきにおがら
【意味】
力のない者が、折れやすい苧殻を振り回すように、頼りにも力にもならないことのたとえ。無意味でなんにもならないこと。


【英語】
・useless(役に立たない)
・of no use.(何の役にも立たない)
【類義語】
・糠に釘(ぬかにくぎ)
・豆腐に鎹(とうふにかすがい)
【対義語】
・鬼に金棒(おににかなぼう)
「餓鬼に苧殻」の語源・由来
「餓鬼に苧殻」は、やせて力のない餓鬼が、折れやすい苧殻を振り回す姿をたとえにしたことわざです。どちらにも強さがないため、頼りにも力にもならないことを表します。
「餓鬼」は、仏教で餓鬼道に堕ち、つねに飢えと渇きに苦しむ存在を指します。このことわざでは、恐ろしい存在というよりも、飢えてやせ衰え、力のない者というイメージが前に出ています。
「苧殻」は、皮をはいだ麻の茎を指します。麻から繊維を取ったあとの茎で、軽く折れやすいものとして、このことわざの中では頼りにならない道具のたとえになっています。
この言い方の要点は、「力のない者」と「折れやすいもの」を重ねているところにあります。弱い者が、さらに弱いものを頼みにしても、物事を動かすだけの力にはならない、という見方が短く表されています。
古い用例として、洒落本『倡客竅学問(しょうかくあながくもん)』(1802年・江戸時代後期、十返舎一九作・画)に、このことわざに近い形が出てきます。『倡客竅学問』は、享和2年に刊行された十返舎一九の作で、当時の遊里や会話の調子をうつす洒落本の一つです。
その用例には、「鬼に鉄棒」という強い者がさらに強いものを得る言い方と並べて、「俄鬼(ガキ)に芋殻(ヲガラ)がきいてあきれる」とあります。ここでは、立派な助けを得たという言いぶりに対して、実際にはまるで頼りにならないことを、皮肉をこめて言っています。
この古い用例では、現在の「苧殻」とは異なり、「芋殻」の字に「ヲガラ」という読みが添えられています。表記は違っていても、読みと使われ方から、軽く弱い茎のようなものを頼りにするたとえとして働いていたことが分かります。
のちには、「苧殻」という表記が、皮をはいだ麻の茎を指す言葉として、ことわざの形に定着していきます。苧殻は、お盆の迎え火や送り火に用いられる身近な素材でもあり、軽く燃えやすく、強い棒のような頼もしさはないものとして理解しやすい材料でした。
このことわざは、「鬼に金棒」と対になる発想で理解すると、意味がよりはっきりします。「鬼に金棒」は、強いものがさらに強い力を得ることを表しますが、「餓鬼に苧殻」は、弱いものが弱い道具を持っても、何の助けにもならないことを表します。
また、「糠に釘」や「豆腐に鎹」のように、何をしても手ごたえや効き目がないことを表すことわざとも近い関係にあります。ただし、「餓鬼に苧殻」は、人や手段そのものの頼りなさ、力不足に重点があります。
現在では、人手・道具・方法などがあまりに弱く、目的を果たす力にならない場面で使われます。必要な力や備えがないまま物事に向かっても役には立たないという戒めを、古くからのたとえで伝えていることわざです。
「餓鬼に苧殻」の使い方




「餓鬼に苧殻」の例文
- 新人一人に壊れかけた道具だけを渡して大きな会場の準備を任せるのは、餓鬼に苧殻のようなものだ。
- 大雪の日に薄い傘一本で長い坂道を歩かせるのは、餓鬼に苧殻に近い。
- 弱い電池しか入っていない懐中電灯を防災用に頼るのは、餓鬼に苧殻だ。
- 経験のない担当者に資料も予算も与えず計画を任せても、餓鬼に苧殻で成果は出にくい。
- 折れかけた竹の棒で重い荷物を動かそうとするのは、餓鬼に苧殻というほかない。
- 小さな班に道具も時間も渡さず全校行事を任せるのは、餓鬼に苧殻だ。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・日本漢字能力検定協会編『漢検漢字辞典 第二版』日本漢字能力検定協会、2014年。
・十返舎一九作・画『倡客竅学問』1802年。
・東京国立博物館ほか『国宝 東京国立博物館のすべて』毎日新聞社ほか、2022年。
・Cambridge University Press, Cambridge Advanced Learner’s Dictionary & Thesaurus.























