【上に交わりて諂わず、下に交わりて驕らず】の意味と使い方や例文!故事は?(類義語)

上に交わりて諂わず、下に交わりて驕らず

【故事成語】
上に交わりて諂わず、下に交わりて驕らず

【読み方】
うえにまじわりてへつらわず、したにまじわりておごらず

【意味】
地位や身分が上の人にこびへつらわず、下の人に対しても威張らず、相手の立場に左右されない公平な態度で接すること。

ことわざ博士
「諂う」は相手に気に入られようとして機嫌を取り、「驕る」は自分の優位な立場を当然と思って高ぶることを表すよ。
助手ねこ
権力のある人にも弱い立場の人にも、誠実で節度ある態度を保つべきだと説く場面で用いるニャン。

【類義語】
・一視同仁(いっしどうじん)

「上に交わりて諂わず、下に交わりて驕らず」の故事

故事成語を深掘り

「上に交わりて諂わず、下に交わりて驕らず」は、中国の思想書『揚子法言(ようしほうげん)』の「修身巻第三」に出てくる一節にもとづきます。著者の揚雄は、紀元前53年から紀元18年まで生きた前漢末期の文人・思想家です。

『揚子法言』は、揚雄が『論語』の形にならって著した全十三巻の書物です。問答を重ねながら、学問、道徳、人の生き方などについて、儒家の立場から説いており、詳しい成立年は明らかではありません。

原文には、「上交不諂、下交不驕、則可以有為矣」とあります。上の者と交わってもへつらわず、下の者と交わっても驕らなければ、物事を成し遂げるに足る、という意味です。

ここでいう「上」と「下」は、場所の上下ではなく、自分より地位や身分が上の人と、下の人を指します。「諂」は、自分の考えを曲げてまで相手に気に入られようとする態度を、「驕」は、自分を偉いと思って相手を見下す態度を表します。

この一節に続いて、ある人が「君子は自分を正しく守るものなのに、なぜ人と交わる必要があるのですか」と尋ねます。これは、人付き合いによって心を乱されるくらいなら、一人で正しさを守ればよいのではないか、という問いです。

揚雄は、これに対して「天地交、万物生。人道交、功勲成」と答えます。天と地が交わって万物が生まれ、人と人とが正しく交わってこそ功績も成し遂げられるのだから、ただ一人で自分を守るだけでは足りない、という意味です。

したがって、この言葉は、人付き合いを避けるよう勧めたものではありません。さまざまな立場の人と関わりながらも、利益を得ようとして上の人にこびたり、力の弱い人を見下したりしないことが、正しい交わり方だと説いています。

これに近い表現は、『周易(しゅうえき)』の「繋辞伝(けいじでん)」下にもあります。そこには、「君子上交不諂、下交不瀆」とあり、君子は上の人にへつらわず、下の人にも無礼で軽々しい態度を取らないと述べています。

「繋辞伝」は、『易経』を解説する十翼(じゅうよく)の一つで、著者や詳しい成立年は明らかではありません。孔子の作と伝えられてきましたが、十翼は秦から漢にかけて成立したものと考えられています。

『周易』の「下交不瀆」に対し、『揚子法言』では「下交不驕」となっています。「瀆」は、相手への敬意を失って無遠慮に振る舞うことに重みがあり、「驕」は、自分の地位や力を誇って相手を見下すことに重みがあります。

この違いによって、『揚子法言』の一節は、上の人への「諂い」と下の人への「驕り」とを、はっきり対照させています。相手の地位によって態度を変える二つの弱さを、短く釣り合いの取れた形で戒めた表現です。

日本語では、漢文の形をほぼそのまま生かした「上に交わりて諂わず、下に交わりて驕らず」という言い方が定着しました。現在では、上司や先輩にはこびず、部下や後輩には威張らない、信頼できる公平な人物をたたえる言葉として使われています。

「上に交わりて諂わず、下に交わりて驕らず」の使い方

ともこ
六年生の委員長さんは、先生の前でもお世辞を言わないし、一年生にもやさしく話しているね。
健太
本当だね。相手によって急に偉そうになったり、愛想よくなったりしないよ。
ともこ
上に交わりて諂わず、下に交わりて驕らずという言葉にぴったりの人だね!
健太
ぼくも委員になったら、だれに対しても誠実に接するよう心掛けよう。

「上に交わりて諂わず、下に交わりて驕らず」の例文

例文
  • 校長にも一年生にも変わらぬ態度で接する彼は、上に交わりて諂わず、下に交わりて驕らずを実践している。
  • 上に交わりて諂わず、下に交わりて驕らずの姿勢を貫いた部長は、部下からも上司からも信頼された。
  • 祖父は、上に交わりて諂わず、下に交わりて驕らずを人付き合いの心得として孫に教えた。
  • 権力者にはこびず、困っている人にも尊敬をもって接する彼女は、上に交わりて諂わず、下に交わりて驕らずの人物だ。
  • 上に交わりて諂わず、下に交わりて驕らずを心掛ければ、立場の違う人とも誠実な関係を築ける。
  • 新しい代表には、上に交わりて諂わず、下に交わりて驕らずの公平な態度が求められる。

主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・公益財団法人日本漢字能力検定協会編『漢検 漢字辞典 第二版』日本漢字能力検定協会、2014年。
・集英社辞典編集部編『会話で使えることわざ辞典』集英社、1989年。
・揚雄『揚子法言』成立年未詳。
・汪榮寶『法言義疏』世界書局、1962年。
・『周易』「繋辞伝」成立年未詳。




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