【ことわざ】
唐物商いは千里一跳ね
【読み方】
からものあきないはせんりひとはね
【意味】
舶来品を扱う商売は、一度の売買で大きな利益を得ることがある、というたとえ。


【英語】
・make a big profit.(大きな利益を上げる)
【類義語】
・千里一跳ね(せんりひとはね)
・一攫千金(いっかくせんきん)
・濡れ手で粟(ぬれてであわ)
【対義語】
・商い三年(あきないさんねん)
・商いは牛の涎(あきないはうしのよだれ)
「唐物商いは千里一跳ね」の語源・由来
「唐物商いは千里一跳ね」は、「唐物商い」と「千里一跳ね」を組み合わせたことわざです。「唐物商い」は舶来品を扱う商売を指し、「千里一跳ね」は一気に遠くまで進むこと、または一挙に成功して大きくもうけることを表します。
「唐物(からもの)」は、もとは中国やその他の外国から輸入された品物の総称です。古くは、元慶六年(882年・平安時代前期)の『園城寺文書』に「唐物」の用例があり、のちに『宇津保物語』(970〜999年ごろ・平安時代中期)にも、外国人が来るたびに唐物を交易するという内容が出てきます。
この「唐」は、中国の唐王朝だけを狭く指すものとは限りません。日本語では、古くから中国や広く外国を指す言い方としても使われ、「唐物」は時代が進むにつれて、舶来品全般を表す言葉として広がりました。
「唐物商(からものあきない)」は、外国を相手にした貿易を意味します。古い用例としては、『赤烏帽子』(1663年・江戸時代前期、坂田才三郎作)に「此人唐物商して、目利なるに」とあり、唐物を扱う商売と、品物を見分ける力が結びついて使われています。
江戸時代には、海外との取引は限られた制度の中で行われ、舶来品は珍しさや価値の高さをもっていました。そのため、唐物を扱う商売には、ふつうの品物とは違う大きな利益を生む可能性があるものとして見られる面がありました。
一方、「千里一跳ね」は、鶴が一度飛べば千里を行くという発想から出た言葉です。『毛吹草(けふきぐさ)』(1638年・江戸時代前期、松江重頼編)にはこの言い方が見え、もとは一挙に遠方まで行くことを表しました。
その後、「千里一跳ね」は、遠くへ行くという意味だけでなく、たちまち成功することや、一挙にもうけることを表すようになります。浮世草子『傾城色三味線(けいせいいろじゃみせん)』(1701年・江戸時代前期、江島其磧作)には、「千里一はねなる事」という用例があり、成功や利益の意味に近い使い方が示されています。
古い形では「唐物商ハ千里一跳」と記され、「貿易商の巨利を得ること多きをいふ」と説明されることもあります。ここでは、「千里一跳」が、遠くへ飛ぶ速さではなく、一度の取引で大きな利益を得る勢いを表しています。
つまり、このことわざは、遠い国から来る品物を扱う商売と、一気に大きく飛び上がるような成功のたとえが結びついた表現です。小さな売買を少しずつ積み重ねる商売ではなく、一回の取引で大きな利益を得る貿易商の姿を、印象的に言い表しています。
ただし、このことわざは、必ずもうかるという保証を述べる言葉ではありません。珍しい品や高価な品を扱う商売には大きな利益の可能性がある、という昔の商売観を背景にした言い方です。
現在では、輸入品や珍しい商品、特別な取引によって、一度に大きな利益が出る場面を表すことわざとして使えます。大きな利益を強調する言葉ですが、商売には危うさも伴うため、使う場面ではその含みも意識するとよい表現です。
「唐物商いは千里一跳ね」の使い方




「唐物商いは千里一跳ね」の例文
- 珍しい輸入茶を扱った店は大きな利益を出し、唐物商いは千里一跳ねを思わせた。
- 海外から仕入れた陶器が評判になり、唐物商いは千里一跳ねのように一度で店の名が広まった。
- 限定の舶来品がすぐに売り切れ、唐物商いは千里一跳ねという言葉どおりの結果になった。
- 高価な輸入品の取引で一気に利益を得た商人は、唐物商いは千里一跳ねを地で行った。
- 珍しい品物を扱う商売には、唐物商いは千里一跳ねのような大きな機会がある。
- 唐物商いは千里一跳ねとはいえ、仕入れを誤れば大きな損にもつながる。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・松村明監修『デジタル大辞泉』小学館。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・松江重頼編『毛吹草』1638年。
・坂田才三郎『赤烏帽子』1663年。
・江島其磧『傾城色三味線』1701年。
・『園城寺文書』元慶六年。
・Cambridge University Press『Cambridge Dictionary.』























