【ことわざ】
犬も歩けば棒に当たる
【読み方】
いぬもあるけばぼうにあたる
【意味】
何かをしようとして動くと、思いがけない災難に遭うことがある、また、出歩いたり行動したりするうちに思いがけない幸運に出会うこともあるというたとえ。


【英語】
・If you are too forward, you are likely to meet with disaster.(出すぎると災難に遭いやすい)
・Every dog has his day.(だれにでもよい時は来る)
【類義語】
・藪をつついて蛇を出す(やぶをつついてへびをだす)
・下手な鉄砲も数撃てば当たる(へたなてっぽうもかずうてばあたる)
・棚から牡丹餅(たなからぼたもち)
【対義語】
・果報は寝て待て(かほうはねてまて)
「犬も歩けば棒に当たる」の語源・由来
「犬も歩けば棒に当たる」は、中国の古い故事から出た故事成語ではなく、日本で広く言い伝えられてきたことわざです。字の上では、犬が歩き回っているうちに棒に当たる、または棒で打たれるという場面を表します。そこから、何かをしようと動けば災難に遭うこともある、という戒めの意味が生まれました。
一方で、このことわざには、行動しているうちに思いがけない幸運に出会う、という反対に近い意味もあります。「棒に当たる」は、文字どおりには災難を思わせますが、「当たる」という言葉には、思いがけず行き当たる、めぐり合うという受け止め方もできます。そのため、悪いことにぶつかる意味と、よいことにめぐり合う意味の両方が使われるようになりました。
幸運の意味を示す古い用例として、浄瑠璃(じょうるり)作品『賀古教信七墓廻』(1714年ごろ・江戸時代中期)三に、このことわざが出てきます。そこでは、犬が歩けば思いがけない幸運に行き当たるという文脈で用いられており、ただ災難を戒めるだけでなく、動いているうちに偶然よいことがあるという意味も、江戸時代にはすでに成り立っていました。
災難の意味を示す用例としては、浄瑠璃作品『蛭小島武勇問答』(1758年・江戸時代中期)三に、「犬も歩けば棒にあふ」という形が出てきます。この用例では、犬が歩き回ったために棒に出会うという、ことわざの字面に近い受け止め方が働いています。つまり、余計に動くことで思わぬ難に遭うという意味が、芝居のせりふの中で生きていたのです。
この二つの用例から分かるように、「犬も歩けば棒に当たる」は、一つの意味だけに固まって伝わったことわざではありません。江戸時代には、災難に遭うという意味と、思いがけない幸運に出会うという意味の二通りが用いられていました。現在も、この二つの意味はどちらも辞書的な意味として残っています。
このことわざが広く知られるようになった背景には、江戸いろはかるたがあります。「犬も歩けば棒に当たる」は、江戸いろはかるたの「い」の札としてよく知られ、子どもの遊びを通して人々の間に広まりました。かるたでは短く覚えやすい形で示されるため、ことわざとしての定着を助けたといえます。
「犬」という言葉には、自分をへりくだって言う響きが重なることもあります。そのため、幸運の意味で使うときには、「自分のような者でも、動いているうちに思いがけずよいことに出会った」という、少し照れを含んだ言い方にもなります。反対に、災難の意味で使うときには、「むやみに動けば面倒に巻き込まれる」という注意の言葉になります。
現在では、日常会話では幸運の意味で使われることも多くありますが、もとの字面に近い災難の意味も失われていません。そのため、このことわざを使うときは、前後の文脈が大切です。よい出来事に出会った話なら「行動したおかげで運が向いた」という意味になり、軽率な行動を戒める話なら「余計なことをすると災難に遭う」という意味になります。
「犬も歩けば棒に当たる」の使い方




「犬も歩けば棒に当たる」の例文
- 休日に古本屋を何軒も回ったら、絶版の本を見つけ、犬も歩けば棒に当たると思った。
- 軽い気持ちで他人のけんかに口を出して面倒に巻き込まれ、犬も歩けば棒に当たるという結果になった。
- 地域の清掃活動に参加したら、同じ研究テーマに興味を持つ人と知り合い、犬も歩けば棒に当たるを実感した。
- よく確かめずにうわさ話へ関わったせいで注意を受け、まさに犬も歩けば棒に当たるだった。
- 資料を集めるために町を歩き回った結果、貴重な話を聞けたのは犬も歩けば棒に当たるというものだ。
- 不要な集まりに顔を出して責任だけ押しつけられ、犬も歩けば棒に当たる形になった。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・近藤いね子・高野フミ編集主幹『小学館 プログレッシブ和英中辞典 第4版』小学館、2011年。
・『賀古教信七墓廻』1714年ごろ。
・『蛭小島武勇問答』1758年。























