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【石を抱きて淵に入る】の意味と使い方や例文!故事は?(類義語・対義語・英語)

石を抱きて淵に入る

【故事成語】
石を抱きて淵に入る

【読み方】
いしをいだきてふちにいる

【意味】
石を抱いて深い淵に入るように、むやみに大きな危険をおかすこと。意味もなく命を失ったり、災難を招いたりすることのたとえ。

ことわざ博士
「石を抱きて淵に入る」は、自分から危険へ向かう無謀さを強く戒める表現なんだよ。
助手ねこ
勝算も必要もないのに、登山・川遊び・投資・仕事などで大きな危険を背負う場面に用いるニャン。

【英語】
・court disaster(大きな災いを招くような危険をおかす)

【類義語】
・飛んで火に入る夏の虫(とんでひにいるなつのむし)
・自ら墓穴を掘る(みずからぼけつをほる)

【対義語】
・君子は危きに近寄らず(くんしはあやうきにちかよらず)
・転ばぬ先の杖(ころばぬさきのつえ)

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「石を抱きて淵に入る」の故事

故事成語を深掘り

「石を抱きて淵に入る」は、中国の古い書物『韓詩外伝(かんしがいでん)』巻三に由来する故事成語です。『韓詩外伝』は前漢の韓嬰(かんえい)が著した説話集で、古い故事や逸話を『詩経(しきょう)』の詩句と結びつけて説く書物です。

もとの形は、日本語の「石を抱きて淵に入る」と完全に同じではなく、「石を負いて河に赴く」という内容です。重い石を背負い、河へ向かう行いは、実行するのが難しいことですが、そこに価値があるとは限らない、という文脈で出てきます。

『韓詩外伝』巻三では、「君子は、ただ難しいだけの行いを尊ばず、ただ細かいだけの議論を尊ばず、ただ名が広まるだけの評判を尊ばず、正しくかなっていることを尊ぶ」という考え方が中心に置かれています。その例として、申徒狄(しんとてき)が石を背負って河へ向かう行いが挙げられます。

申徒狄は、古代中国の伝承に出てくる人物です。石を背負って河へ身を投げることは、人にはなかなかできない行いですが、礼や義にかなった正しい行いではないため、君子はそれを尊ばない、という筋立てになっています。

この故事の大切な点は、「難しいことをしたから立派」とは限らない、というところにあります。苦しい行い、危ない行い、命をかける行いであっても、道理や目的にかなっていなければ、ただ身を滅ぼすだけの無益な行動になります。

「石」は水に沈む重いものです。その石を抱いたまま深い淵に入れば、浮き上がることはきわめて難しく、命を落とす危険が大きくなります。この具体的な姿から、自分で自分を危険に追い込むという意味が生まれました。

同じ趣旨の言い方は、『荀子(じゅんし)』不苟篇にも出てきます。そこでも、石を負って河へ身を投げる行いは難しいことではあるものの、礼義にかなわないため尊ばれない、という考え方が示されています。

日本語では、漢文の「石を負いて河に赴く」という姿が、より分かりやすい「石を抱きて淵に入る」という形で受け止められました。「負う」は背負うこと、「抱く」は胸にかかえることですが、どちらも重い石を身につけて水に入る無謀さを表します。

日本の古い用例では、十二世紀初頭ごろ成立の『今昔物語集(こんじゃくものがたりしゅう)』巻二十に、宝の山に入って手ぶらで出て、石を抱いて深い淵に入り命を失うようなものだ、という近い形のたとえが出てきます。ここでは、得るべきものを得ず、かえって命を失うほど愚かな行いとして用いられています。

のちにこの表現は、単なる入水の話を離れて、無益な危険を自分から背負うこと全般を表すようになりました。装備をそろえずに危険な山へ入る、準備も知識もなく大きな借金をする、止められている危険な遊びに近づくなど、危険の大きさと無意味さが重なる場面に合う故事成語です。

現在の「石を抱きて淵に入る」は、勇気をほめる言葉ではありません。むしろ、必要のない危険を避け、道理に合わない無謀な行動を慎むべきだという戒めを含む表現です。

「石を抱きて淵に入る」の使い方

健太
夏休みに川の上流へ行く計画を立てたんだけど、地図も救命胴衣も持たずに、深い淵まで泳いで行こうって友だちが言うんだ。
ともこ
それは危ないよ! 雨のあとの川は流れが速いし、準備なしで深い所へ入るのは、石を抱きて淵に入るようなものだよ。
健太
やっぱり無茶だよね。楽しそうだからって、命に関わる危険まで背負うのは違うと思う。
ともこ
先生に相談して、安全な場所と持ち物を決めよう。遊ぶなら、帰ってこられる準備をしてからだね。
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「石を抱きて淵に入る」の例文

例文
  • 救命胴衣も着けずに増水した川へ入るのは、石を抱きて淵に入るような行為だ。
  • 十分な知識もないまま全財産を危険な投資につぎ込むのは、石を抱きて淵に入るに等しい。
  • 登山届も装備もないまま冬山へ向かう計画は、石を抱きて淵に入るものとして止められた。
  • 会社の重要な契約書を読まずに署名するのは、石を抱きて淵に入る危うさがある。
  • 友人の忠告を無視して違法な仕事に関わるのは、石を抱きて淵に入る道を選ぶようなものだ。
  • 危険を知らされていながら夜の崖道を一人で進むのは、石を抱きて淵に入る無謀な行動だ。

主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修『デジタル大辞泉』小学館。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・日本漢字能力検定協会『漢字ペディア』日本漢字能力検定協会。
・韓嬰『韓詩外伝』前漢。
・荀子『荀子』戦国時代末期。
・Cambridge University Press & Assessment『Cambridge Dictionary』。
・Merriam-Webster『Merriam-Webster.com Dictionary』。





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