【ことわざ】
一寸先は闇
【読み方】
いっすんさきはやみ
【意味】
ほんの少し先の未来でさえ、何が起こるかまったく予測できないことのたとえ。


【英語】
・Nothing is certain but the unforeseen(予想外のこと以外に確かなものはない)
【類義語】
・三日先知れば長者(みっかさきしればちょうじゃ)
・一寸先の地獄(いっすんさきのじごく)
「一寸先は闇」の語源・由来
「一寸先は闇」は、中国の古い故事に基づく言葉ではなく、日本で広く使われてきたことわざです。「一寸」はごくわずかな距離を表し、「闇」は、明かりがなく、先が見えない状態を表します。目の前のほんのわずかな先さえ暗くて見えないという空間のたとえによって、未来のことは、近い先であっても見通せないという時間の不確かさを言い表しています。
江戸時代初期の俳諧書『毛吹草』(寛永十五年序、松江重頼編)には、「一すんさきはやみ」という形が収められています。『毛吹草』は、俳諧に用いる言葉や表現を集めた書物で、そこにこの形が入っていることから、江戸時代の早い段階には、ことわざとして知られていたことが分かります。
さらに、仮名草子『東海道名所記(とうかいどうめいしょき)』(万治年間成立、浅井了意著)には、「一寸先は闇、命は露の間、あすをもしらぬうき世なるに」という一節が出てきます。ここでは、明日の命さえ分からない浮き世のはかなさと結びつけて、このことわざが使われています。
この古い用例では、「一寸先は闇」は、単に予定が分からないという軽い意味ではなく、命や人生の先行きが分からないという、かなり切実な意味を帯びています。「命は露の間」という表現も、露がすぐに消えるように命がはかないことを示しており、「一寸先は闇」と並ぶことで、人生の不安定さが強く表されています。
古くは、「一寸先は闇の夜」という形も使われました。この形は、暗さをさらに強める言い方であり、戦乱の記憶や、平穏な時代になってもいつ何が起こるか分からない不安と結びついて広まったと考えられます。また、「飲めや歌えや一寸先は闇の夜」という言い方もあり、先が分からないからこそ今を楽しもうとする、世俗的な受け止め方も生まれました。
後には、上方のいろはかるたにも「一寸先は闇」が収められ、子どもにも親しまれる言葉として定着しました。上方系のいろはかるたでは、「い」の札にこのことわざが置かれ、未来は、たとえ明日のことであってもどうなるか分からない、という意味で受け継がれました。
現在では、病気、事故、仕事、政治、社会の変化など、思いがけない出来事が起こりうる場面に広く用います。ただし、このことわざの芯は、必ず不幸が起こるという断定ではありません。よいことも悪いことも含め、未来は完全には読めないという、人の暮らしに根ざした実感を、短く言い表したものです。
「一寸先は闇」の使い方




「一寸先は闇」の例文
- 元気だった祖父が突然入院し、一寸先は闇ということを家族みんなで実感した。
- 試合に勝てると思っていたが、主力選手がけがをして、一寸先は闇の展開になった。
- 会社の業績が好調でも、一寸先は闇だから油断せず備える必要がある。
- 旅行の計画は完璧に見えたが、台風で予定が変わり、一寸先は闇だと思い知らされた。
- 一寸先は闇というように、将来の変化を考えて貯金や準備をしておくことが大切だ。
- 政治の世界では、一つの発言で状況が大きく変わるため、一寸先は闇と言われることが多い。
主な参考文献
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・松江重頼編『毛吹草』寛永15年序。
・浅井了意『東海道名所記』万治年間成立。























