【ことわざ】
食わぬ飯が髭に付く
【読み方】
くわぬいいがひげにつく
【意味】
身に覚えのない疑いをかけられ、無実の罪を負わされることのたとえ。


【類義語】
・濡れ衣を着る(ぬれぎぬをきる)
「食わぬ飯が髭に付く」の語源・由来
このことわざは、食べていない飯の粒が、いつの間にか髭に付いていたため、盗み食いをしたのではないかと疑われる場面から生まれた表現です。実際には食べていないのに、口元に飯粒という証拠らしい物が残っているため、本人の言葉を信じてもらえない様子を表しています。
「飯」は、このことわざでは「めし」ではなく、「いい」と読みます。「いい」は、米を蒸したり炊いたりした食べ物を指す古い言い方で、麦や粟などで作った飯にも用いられました。ことわざの読み方に、古くからの言葉の形が残っているのです。
この表現では、「食わぬ」と「髭に付く」が、正反対の事実を示しています。「食わぬ」は、その人が本当は飯を食べていないことを表しますが、「髭に付く」は、いかにも食べたように思わせる外見上の手がかりです。この食い違いが、無実でありながら疑われるという意味の核になっています。
髭は口の近くにあるため、飯粒が付いていれば、食事をしたあとだと思われやすい場所です。しかも、白い飯粒は目につきやすく、本人が知らないうちに付いていたとしても、周囲の人には盗み食いの証拠のように映ります。そこから、見た目だけでは言い逃れのできない、困った状況を表すたとえになりました。
もとの場面は飯の盗み食いですが、現在では、食べ物に限らず、物を盗んだ、物を壊した、決まりを破ったなど、実際にはしていない行為を疑われる場合に広く用います。単に根拠のないうわさを立てられるだけでなく、偶然の一致や、証拠らしく見える物があったために疑いが深まる場面によく合うことわざです。
意味の近い「濡れ衣を着る」も、無実の罪を負わされることを表します。「食わぬ飯が髭に付く」は、それを飯粒と髭という具体的な場面で表し、身に覚えがないのに、疑われても仕方がないような状況が偶然にできてしまう不運を、目に浮かぶ形で伝えています。
このことわざには、外から見える物だけで人を判断することの危うさも表れています。証拠らしい物があっても、それだけで決めつけず、本人の話や前後の事情まで確かめなければ、罪のない人に疑いをかけることになりかねないと教える表現です。
「食わぬ飯が髭に付く」の使い方




「食わぬ飯が髭に付く」の例文
- 食わぬ飯が髭に付くとはこのことで、教室に残っていただけの彼が、なくなった消しゴムを取ったと疑われた。
- 私は菓子を食べていないのに、空袋が机の下に落ちていたため、食わぬ飯が髭に付く思いをした。
- 壊れた皿のそばに立っていただけで弟が責められたのは、食わぬ飯が髭に付くようなものだ。
- 会社の資料が消えたとき、最後に部屋を出た社員は、食わぬ飯が髭に付く形で疑われた。
- 偶然事件の現場近くを通っただけなのに、食わぬ飯が髭に付くことになり、関与を疑われた。
- 食わぬ飯が髭に付くことのないよう、見かけだけで人を責めず、事実を確かめるべきだ。
主な参考文献
・佐竹秀雄・武田勝昭・伊藤高雄編、北村孝一監修『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・現代言語研究会編『日本語を使いさばく 故事ことわざの辞典』あすとろ出版、2007年。























