【ことわざ】
色の白いは七難隠す
【読み方】
いろのしろいはしちなんかくす
【意味】
肌の色が白ければ、顔かたちに多少の欠点があっても目立たず、美しく見えるということ。


【英語】
・A fair face is half a fortune(美しい顔は半分の財産に当たる)
【類義語】
・色の白きは十難隠す(いろのしろきはじゅうなんかくす)
・髪の長きは七難隠す(かみのながきはしちなんかくす)
【対義語】
・美人というも皮一重(びじんというもかわひとえ)
「色の白いは七難隠す」の語源・由来
「色の白いは七難隠す」は、色白の肌を大きな美点と見なし、顔かたちに多少の難点があっても目立たなくなる、という意味で伝わってきたことわざです。古い用例では「七難」だけでなく「十難」とする形もあり、いずれも多くの欠点を表す言い方として働いています。
「七難」は、もとは仏教で火難・水難などの災難を表す言葉として用いられました。ただし、このことわざの「七難」は、仏教の七つの災難そのものではなく、さまざまな難点や欠点を表す意味へ移っています。
仏教語としての「七難」は、『法華経』『薬師経』『仁王般若経』などに出てくる災難の総称ですが、その内容は経典によって異なります。その後、日常語の中では「多くの難点」という意味へ広がり、このことわざでは容貌上の欠点を指す言葉として使われています。
早い用例として重要なのは、『世間娘容気(せけんむすめかたぎ)』(1717年・江戸時代中期、江島其磧作)です。この作品は、当時の娘たちの気質を題材にした浮世草子で、六巻から成り、さまざまな娘の姿を短編の形で描いています。
『世間娘容気』には、「色(イロ)の白きは十難(ナン)かくすとて」とあります。続く文脈では、素顔でも見られる顔に白粉を塗る様子が描かれており、白い肌が容貌をよく見せるものとして受け止められていたことが分かります。
この段階では、現在よく知られる「七難」ではなく「十難」という形が出ています。数字が七から十へ、また十から七へと揺れている点から、ここでの数字は厳密な数ではなく、「多くの欠点」を表すための言い方として使われていたと考えられます。
江戸時代後期には、ことわざを集めた『譬喩尽(たとえづくし)』(1786年序、松葉軒東井編)も作られました。この書物は八巻から成り、ことわざを中心に、詩歌・童謡・流行語・方言などを広く集め、いろは順に並べたものです。
さらに、『都風俗化粧傳(みやこふうぞくけわいでん)』(1813年・江戸時代後期、佐山半七丸著)には、「色のしろきは七難かくすと、諺にいえり。」とあります。この書物は、化粧や髪の手入れ、身のこなしなどを絵入りでまとめた美容の手引きで、当時の美意識の中で色白が重んじられていたことをよく示しています。
『都風俗化粧傳』では、生まれながらにすべて整った美人は少ないが、化粧の仕方や顔の作りようによって美しく見せることができ、その中でも色の白さを第一とする、という流れでこのことわざが出てきます。つまり、単なるほめ言葉ではなく、白粉化粧や見え方の工夫と結びついた表現だったのです。
白粉は、江戸時代の化粧で白い肌を作るために用いられました。額、頬、鼻、口のまわり、耳、首筋へ白粉を伸ばし、紙や刷毛を使ってむらなく整える方法もあり、白さは顔立ちを整えて見せる大切な要素として扱われていました。
明治以降にも、このことわざは形を保って使われました。大正時代の文学作品にも「色の白いのは七難隠す」という形が出ており、江戸時代の化粧文化に根ざした美意識が、近代の日本語の中にも残っていたことが分かります。
ただし、現在このことわざを使うときには注意が必要です。色白をほめるつもりでも、「ほかに欠点がある」という前提を含みやすいため、相手に直接言うと失礼に聞こえる場合があります。
現在の意味は、江戸時代の美意識と、白粉化粧によって見え方を整える感覚が合わさってできたものです。肌の白さが欠点を目立たなくするという昔の価値観を伝えることわざですが、現代では、容姿を一面的に評価する言い方として、扱いに気をつける必要があります。
「色の白いは七難隠す」の使い方




「色の白いは七難隠す」の例文
- 江戸時代の化粧文化を調べると、色の白いは七難隠すということわざが当時の美意識と深く結びついていることが分かる。
- 祖母は昔の言い方として色の白いは七難隠すを知っていたが、人に直接言うと失礼になる場合があると話していた。
- 時代劇の白粉化粧を見ると、色の白いは七難隠すという価値観が衣装や化粧にも表れている。
- 色の白いは七難隠すは、肌の白さを容貌上の大きな美点と見なした時代のことわざである。
- 友人をほめるつもりでも、色の白いは七難隠すと言えば、欠点があるように聞こえるおそれがある。
- 国語の授業では、色の白いは七難隠すを、昔の美意識を知る手がかりとして扱った。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・江島其磧『世間娘容気』1717年。
・松葉軒東井編『譬喩尽』1786年序。
・佐山半七丸『都風俗化粧傳』1813年。
・Andrew Henderson, Scottish Proverbs, Oliver & Boyd, 1832.























