【ことわざ】
女心と秋の空
【読み方】
おんなごころとあきのそら
【意味】
女性の男性に対する愛情は、秋の空模様のように変わりやすいというたとえ。


【英語】
・A woman’s mind and winter wind change oft(女の心と冬の風はしばしば変わる)
【類義語】
・女の心は猫の目(おんなのこころはねこのめ)
・男心と秋の空(おとこごころとあきのそら)
「女心と秋の空」の語源・由来
「秋の空」は、晴れたと思えば曇りや雨へと移るような、天気の変わりやすさを表す比喩です。秋には、高気圧と低気圧が交互に日本付近を通過し、天気が数日の周期で変わるため、その移ろいが人の心変わりに重ねられました。
男女の恋心と結びつく前から、「秋の空」だけで変化の多さを表す言い方がありました。『礒の波』(1747年・江戸時代中期)には「下手の碁は七度替る秋の空」とあり、下手な人が打つ碁では、形勢や打ち方が何度も変わることを秋空にたとえています。
現在は、女性の心を主語にした形がよく知られていますが、もとの形は「男心と秋の空」です。『興談浮世袋(きょうだんうきよぶくろ)』(1770年・江戸時代中期、青二齋能樂著)には、「男の心と秋の空、かはるが早いと」とあります。男性の心変わりの早さを、移りやすい秋の空に重ねた用例です。
『恋若竹(こいのわかたけ)』(1833〜1839年・江戸時代後期、寛江舎蔦丸・十字亭三九著)には、「男心と秋の空と、たとへのごとく竹次郎は、またお若がことは忘れて、通ひ路も疎くなり」とあります。竹次郎がお若への愛情を失い、会いに通うことも少なくなった場面で使われており、男性の移りやすい恋心を表す意味が、はっきりと示されています。
江戸時代には、女性を主語にした形よりも、「男心と秋の空」のほうが広く使われていました。また、「男心」の代わりに「人の心」や「夫の心」を置いた形や、「秋の空」の代わりに、変わりやすい川の流れを表す「川の瀬」を置いた形もありました。人の心と、絶えず姿を変える自然の様子とを組み合わせた類句の中で、「男心と秋の空」がことわざとして定着していったのです。
女性を主語にした古い形は、「女の心と秋の空」です。福田英子の『わらはの思出(わらわのおもいで)』(明治38年)には、「変わりやすいものを女の心と秋の空とも例えてありますが」とあり、明治時代後期には、女性の心を秋空に重ねる言い方も知られていたことが示されています。
その後、「女の心」が一語の「女心」になり、現在では「女心と秋の空」という形が定着しました。もともと男性の変わりやすい愛情を表していたことわざが、女性の愛情を表す形へと変わり、主語を入れ替えながら受け継がれてきたのです。
現在の意味は、女性の男性に対する愛情が変わりやすいことのたとえです。ただし、実際の心の変化は、性別だけで決まるものではありません。このことわざには、女性の性質を一つの型に当てはめる昔の男女観も表れているため、歴史的な背景とともに理解することが大切です。
「女心と秋の空」の使い方




「女心と秋の空」の例文
- 昨日まで婚約を喜んでいた彼女が急に別れを告げたので、彼は女心と秋の空だと嘆いた。
- 姉は好きな人が何度も変わり、母から女心と秋の空だと言われた。
- 物語の主人公の愛情は女心と秋の空のように移り、周囲の人を戸惑わせた。
- 国語の授業で、女心と秋の空がもとは男心を主語とする言い方だったと学んだ。
- 職場で同僚の判断を女心と秋の空と評すれば、性別による決めつけと受け取られかねない。
- 資料館の展示は、女心と秋の空を通して、ことわざが時代とともに形を変えることを示した。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・青二齋能樂『興談浮世袋』1770年。
・寛江舎蔦丸・十字亭三九『恋若竹』1833〜1839年。
・福田英子『わらはの思出』1905年。
・James Allan Mair編『A Handbook of Proverbs』Routledge、1873年。























