【ことわざ】
運根鈍
【読み方】
うんこんどん
【意味】
成功するには、幸運に恵まれること、根気よく努力を続けること、鈍いほど粘り強く取り組むことが必要だというたとえ。


【英語】
・Success requires luck, simple honesty, and perseverance(成功には幸運・実直さ・忍耐が必要だ)
【類義語】
・運鈍根(うんどんこん)
「運根鈍」の語源・由来
「運根鈍」は、「運」「根」「鈍」という三つの言葉を並べ、成功するために必要な条件を簡潔に表したものです。「運鈍根」という順序でも使われ、どちらも、幸運、根気、鈍いほどの粘り強さを重んじる点では共通しています。
「運」は、自分の努力だけでは決められない巡り合わせや好機を指します。どれほど力を尽くしても、よい人との出会いや時機に恵まれなければ、物事が思うように進まない場合があることを表しています。
「根」は「根気」のことで、すぐに成果が出なくても、途中で投げ出さずに努力を続ける力です。一度や二度の失敗で諦めず、同じ目標に向かって長く取り組む姿勢を表します。
「鈍」は、単に頭の働きが鈍いという悪い意味ではありません。小利口に立ち回ったり、目先の変化に振り回されたりせず、周囲から鈍く見えるほど実直に、一つのことを続ける粘り強さを指します。
この言葉を経営の心構えとして広く知らしめた人物に、明治時代の実業家・古河市兵衛がいます。市兵衛は京都に生まれ、生糸の商いなどを経験したのち、1877年に足尾銅山(あしおどうざん)を取得し、鉱山(こうざん)経営を事業の柱として、古河財閥(ふるかわざいばつ)の基礎を築きました。
市兵衛の言葉を収めた『翁の直話』(1926年・大正15年、古河市兵衛述、五日会編)には、「人は運、鈍、根の三つが必要だ」という趣旨の発言があります。市兵衛は、事業を成し遂げるには、運だけを当てにするのではなく、実直に取り組む鈍さと、諦めずに続ける根気も欠かせないと説きました。
この三つは、それぞれが別々に働くものではありません。粘り強く仕事を続けていれば、好機が訪れたときにそれをつかみやすくなり、運に恵まれても根気がなければ、得た機会を十分に生かせないという関係にあります。
古河市兵衛の生涯をまとめた『古河市兵衛翁伝(ふるかわいちべえおうでん)』(1926年・大正15年、茂野吉之助編)にも、「運鈍根」という見出しがあります。市兵衛の死後、その人物像や経営の信条を伝える言葉として、この三語が伝記の中に記録されました。
一方、古河市兵衛一人がこの表現を作ったと断定することはできません。1921年(大正10年)の『日米新聞』には、「運根鈍」を題名に掲げた連載が載っており、『古河市兵衛翁伝』が刊行される以前から、この順序の表現が公に使われていました。
その後、「運・鈍・根」は、市兵衛の創業者精神として受け継がれるとともに、事業経営だけに限らない人生の教えとして広まりました。勉強や研究、技術の修得など、結果が出るまでに長い時間を要する物事にも当てはめられるようになっています。
「運根鈍」は、成功を運任せにする言葉ではありません。努力を続け、軽々しく方針を変えず、訪れた好機を生かせるだけの力を蓄えることの大切さを、三つの漢字で表したことわざです。
「運根鈍」の使い方




「運根鈍」の例文
- 何度失敗しても改良を重ねた発明家は、運根鈍を信条としていた。
- 母は店を長く守るには運根鈍が欠かせないと言い、毎日の仕事を丁寧に続けた。
- 監督は選手たちに運根鈍の大切さを説き、焦らず基礎練習を積ませた。
- 成果が出るまで十年を要した研究は、まさに運根鈍によって実を結んだ。
- 新しい事業を成功させるには、才能だけでなく運根鈍も必要となる。
- 彼は運根鈍を胸に、落選しても諦めず作品を書き続けた。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・近藤いね子・高野フミ編『小学館プログレッシブ和英中辞典 第4版』小学館、2011年。
・茂野吉之助編『古河市兵衛翁伝』五日会、1926年。
・五日会編『翁の直話』五日会、1926年。
・『日米新聞』1921年5月21日〜31日。























