【ことわざ】
石に花咲く
【読み方】
いしにはなさく
【意味】
現実には起こるはずのないことのたとえ。石から花が咲くはずがないことから、ありえない出来事を表す。


【英語】
・when pigs fly(まず起こらないこと、決して起こらないと思うこと)
【類義語】
・石に花(いしにはな)
・岩に花咲く(いわにはなさく)
・煎り豆に花が咲く(いりまめにはながさく)
・西から日が出る(にしからひがでる)
「石に花咲く」の語源・由来
「石に花咲く」は、生命を持たない石から花が咲くという、自然の道理に合わない姿をもとにしたことわざです。石は、植物のように根を張ったり芽を出したりするものではないため、「石に花」は、現実には起こるはずのないことのたとえとして用いられてきました。
もとの形として大切なのは、「石に花」という短い言い方です。この形は、「二度あふは石に花」という古い用例を伴って伝わり、二度と会えないようなことを、石に花が咲くほどありえないこととして言い表しています。
この用例は、浄瑠璃(じょうるり)の『出世握虎稚物語(しゅっせやっこおさなものがたり)』(1725年・享保10年初演、竹田出雲作)に見えるものです。ここでは、「石に花」が、ただ珍しいことではなく、ほとんど実現しないことを強く言う表現として使われています。
一方、「岩に花咲く」という形も、早くから使われています。「岩に花咲く」は、「石に花」と同じ意味を表す言い方として伝わっており、石と岩はいずれも花を咲かせるものではないという発想に基づいています。
「岩に花咲く」の古い用例は、浮世草子(うきよぞうし)の『諸艶大鑑(しょえんおおかがみ)』、別名『好色二代男(こうしょくにだいおとこ)』(1684年・貞享元年、井原西鶴作)に出てきます。そこでは、思いがけず金が得られることを、「岩に花咲く」ような心地として表しています。
この段階では、「ありえないことが起こったように感じる」という、驚きや思いがけなさが強く出ています。石や岩に花が咲くという不可能な景色を借りて、現実離れしたほど珍しい出来事を表しているのです。
「石に花咲く」は、この「石に花」と「岩に花咲く」という二つの形が持つ意味を受け継いだ表現といえます。「花咲く」と動きを加えることで、ありえないはずの出来事が起こるという場面が、より目に浮かびやすくなっています。
似た発想のことわざに、「煎り豆に花が咲く」があります。煎った豆は芽を出しにくく、そこから花が咲くことはありえないため、衰えたものが勢いを取り戻すことや、あるはずのないことが実現することのたとえとして使われます。
「煎豆に花」の古い用例は、俳諧(はいかい)の『毛吹草(けふきぐさ)』(1638年・寛永15年序、松江重頼編)にも伝わります。石、岩、煎り豆のように、本来は花を咲かせないものに花が咲くという発想は、近世の言葉の中で、不可能なことや、まれに実現することを表すたとえとして広く使われていました。
現在の「石に花咲く」は、奇跡のようにすばらしい出来事をほめる言葉というより、まず起こらないことや、現実には見込みのないことを表す言葉です。単なる珍しさではなく、自然の道理に反するほどありえないという強い意味で用いるのがふさわしいことわざです。
「石に花咲く」の使い方




「石に花咲く」の例文
- 焼けて灰になった手紙が元通りに戻るなど、石に花咲くような話だ。
- 一度も練習していない曲を本番で完璧に演奏するのは、石に花咲くに近い。
- 閉館した古い映画館が明日の朝までに自然に新品になるというのは、石に花咲くようなことだ。
- 誰も作業していないのに、散らかった教室がひとりでに片づくなど、石に花咲く話でしかない。
- 壊れて部品も失われた時計が勝手に動き出すとは、石に花咲くような出来事だ。
- 証拠のないうわさを本当だと信じるのは、石に花咲く話を待つのと同じだ。
主な参考文献
・現代言語研究会著『日本語を使いさばく 故事ことわざの辞典』あすとろ出版、2007年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松江重頼編『毛吹草』1638年序。
・井原西鶴『諸艶大鑑(好色二代男)』1684年。
・竹田出雲『出世握虎稚物語』1725年。
・Merriam-Webster, Merriam-Webster.com Dictionary.























