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【医者の自脈効き目なし】の意味と使い方や例文!語源由来は?(類義語・対義語・英語)

医者の自脈効き目なし

【ことわざ】
医者の自脈効き目なし

【読み方】
いしゃのじみゃくききめなし

【意味】
たとえ専門分野のことでも、自分自身の問題になると冷静に判断できず、適切な処理がしにくいことのたとえ。

ことわざ博士
「医者の自脈効き目なし」は、他人の病気を診る医者でも、自分の病気となると正しく扱いにくいという考えをもとにしたことわざなんだよ。
助手ねこ
仕事、勉強、作品づくり、進路などで、人には的確に助言できるのに、自分のことでは判断がくもる場面に用いるニャン。

【英語】
・A lawyer who represents himself has a fool for a client(自分の案件を自分で扱う専門家は、冷静な判断を失いやすい)

【類義語】
・易者身の上知らず(えきしゃみのうえしらず)
・陰陽師身の上知らず(おんようじみのうえしらず)
・人相見の我が身知らず(にんそうみのわがみしらず)

【対義語】
・己を知りうる者は賢者なり(おのれをしりうるものはけんじゃなり)

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「医者の自脈効き目なし」の語源・由来

ことわざを深掘り

このことわざは、中国の古い故事そのものに由来する表現ではなく、日本で定着した医者にまつわることわざです。「医者」は専門家を表し、「自脈」は自分で自分の脈をとることを表し、「効き目なし」はその判断がうまく働かないことを表します。

自脈(じみゃく)は、もともと「自分の脈拍」や「自分で自分の脈をとって病状などを判断すること」を意味する言葉です。つまり、このことわざの中心には、他人を診る技術を持つ人でも、自分の体を同じように客観的に診るのは難しいという発想があります。

脈診(みゃくしん)は、脈拍の遅速、強弱、充実の度合いなどを手がかりにする診断法です。古くから体の状態を知る大切な方法として扱われ、医者が患者の脈を診る行為は、診察を象徴する動作でもありました。

「自脈」という言葉の古い用例には、浄瑠璃(じょうるり)『十二段(じゅうにだん)』の例があります。『十二段』は、近松門左衛門(ちかまつもんざえもん)作とも伝わる元禄期の浄瑠璃で、元禄3年(1690)初演とする整理があり、遅くとも元禄11年(1698)以前には上演されていた作品です。

『十二段』の用例では、「じみゃく取やら」という形で、自分の脈をとりながら落ち着かない様子が表れます。ここでの自脈は、文字どおり自分の体の具合を自分で探ろうとする行為に近く、医療の場面に近い具体的な意味を保っています。

この具体的な「自分で脈をとる」という意味から、やがて「自分で自分の将来や見込みを判断する」という比喩的な意味も生まれました。自分の脈を自分で診る姿が、自分の見込みを自分で測る姿へと広がったのです。

明治時代の国木田独歩(くにきだどっぽ)『郊外(こうがい)』(1900年・明治33年)には、画家として成功するかどうかを気にして「自脈を取っていた」という使い方が出てきます。ここでは、体の脈ではなく、自分の将来の見込みを自分で探る意味へ移っています。

このように、「自脈」は、体の状態を自分で診る意味から、自分自身の見込みや立場を自分で判断する意味へ広がりました。その広がりをふまえると、「医者の自脈効き目なし」は、医者という専門家でさえ、自分自身のことには判断がうまく働かないという比喩として自然につながります。

近い発想をもつことわざには、「易者身の上知らず」や「陰陽師身の上知らず」があります。どちらも、人の運命や吉凶を判断する立場の人が、自分自身のことになると分からなくなるという型を持ち、専門家でも自分のことには弱いという考えを伝えます。

ただし、「医者の不養生」とは少し意味が異なります。「医者の不養生」は、正しいことを知っていながら自分では実行しないことを表しますが、「医者の自脈効き目なし」は、自分のことになると冷静な判断や適切な処理そのものが難しくなる点に重みがあります。

現在では、医療そのものに限らず、文章の専門家が自分の文章を直せない、相談上手な人が自分の悩みでは迷う、指導者が自分の進路や仕事では判断を誤る、といった場面にも使われます。専門知識だけでなく、第三者の冷静な目が必要になることを教えることわざです。

「医者の自脈効き目なし」の使い方

健太
ともこちゃん、みんなの作文は上手に短く直していたのに、自分の読書感想文は規定より一枚も多いよ?
ともこ
本当だ……。人の文ならすぐ削れるのに、自分の文だと全部大事に見えてしまう。
健太
まさに医者の自脈効き目なしだね。ぼくが読者役になって、残す文と削る文を一緒に考えるよ。
ともこ
ありがとう! 自分だけで抱えこまずに、人の目で見てもらうことも大切だね。
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「医者の自脈効き目なし」の例文

例文
  • 編集者の父は人の原稿には的確な助言を出すが、自分の文章になると直せず、医者の自脈効き目なしとなった。
  • 進路相談が得意な先生でも、自分の子どもの進路では冷静に考えられず、医者の自脈効き目なしを実感した。
  • 写真部の先輩は友人の作品選びには厳しい目を持つが、自分の応募写真では迷い続け、医者の自脈効き目なしと言われた。
  • 家計の相談に乗るのが上手な兄も、自分の買い物計画になると甘くなり、医者の自脈効き目なしだった。
  • 面接練習で友人にはよい助言をする彼女も、自分の受け答えの欠点には気づかず、医者の自脈効き目なしになっていた。
  • 部長は部員の練習計画を整えるのはうまいが、自分の大会前の調整では無理を重ね、医者の自脈効き目なしの状態だった。

主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・近松門左衛門『十二段』正本屋善四郎、江戸前期。
・高野辰之・黒木勘蔵編『近松門左衛門全集 第1巻』春陽堂、1924年。
・国木田独歩『郊外』1900年。
・United States Supreme Court, “Kay v. Ehrler, 499 U.S. 432,” 1991.





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