【ことわざ】
命長ければ蓬莱に会う
【読み方】
いのちながければほうらいにあう
【意味】
長く生きていれば、思いがけない幸運にめぐりあうこともあるというたとえ。


【英語】
・Where there’s life, there’s hope(命があるかぎり希望がある)
【類義語】
・命を全う持つ亀は蓬莱に逢う(いのちをまとうもつかめはほうらいにあう)
・生きて海月の骨いためず(いきてくらげのほねいためず)
【対義語】
・命長ければ恥多し(いのちながければはじおおし)
「命長ければ蓬莱に会う」の語源・由来
このことわざは、「命長ければ蓬莱を見る」という形でも伝わります。ここでの「見る」は、ただ目でながめるだけでなく、めぐりあう、出会うという意味に近く、「蓬莱を見る」は「蓬莱に会う」ともいいます。
蓬莱は、中国の神仙思想(しんせんしそう)に出てくる伝説上の霊山です。蓬莱山(ほうらいさん)は、渤海(ぼっかい)にあると考えられた島で、三神山(さんしんざん)の一つに数えられ、そこには神仙が住み、不死の薬や金銀の宮殿があるとされました。
中国の史書『史記(しき)』(前漢、司馬遷著)「封禅書(ほうぜんしょ)」には、蓬莱・方丈・瀛州(えいしゅう)を求めた話が出てきます。そこでは、三つの神山は海の中にあり、仙人や不死の薬があるものの、船が近づくと風に引き戻され、ついに到達できないものとして語られています。
この背景から、蓬莱は、普通には行けないほど遠く、しかも不老長寿や幸運と結びつく場所として受け止められました。そのため、「蓬莱に会う」という言い方は、長い人生の果てに、まれでありがたい幸運に出会うことを表すのにふさわしい比喩となりました。
これに近い日本語の古い形としては、「命を全う持つ亀は蓬莱に逢う」という言い方があります。『唐糸草子(からいとぞうし)』(室町時代、御伽草子の一編)には、「御命をよくよく惜しませ給ふべし。いのちをまたふもつかめは、ほうらいにあふとかや」とあり、命を大切にして生きるよう促す場面で、長く命を保てば蓬莱に出会うという発想が使われています。
ここに亀が出てくるのは、亀が長寿の象徴として、古くから祝意を表す動物とされたためです。「命を全う持つ亀は蓬莱に逢う」は、長寿の象徴である亀と、仙人・不老長寿の地である蓬莱を結びつけ、長く生きることと幸運との関係を強く示しています。
のちに、「命長ければ蓬莱を見る」「命長ければ蓬莱に会う」のように、より短く整った形でも用いられるようになりました。長く生きることを「命長ければ」と言い、めったに得られない幸運を「蓬莱に会う」と言うことで、人生を急いで投げ出さず、先のめぐりあわせを待つ教えとして伝わっています。
このことわざは、ただ長生きをすすめるだけの言葉ではありません。今は苦しくても、命を保ち続けることで、思いもよらない人や機会、喜びに出会うことがあるという、静かな励ましを含んだことわざです。
「命長ければ蓬莱に会う」の使い方




「命長ければ蓬莱に会う」の例文
- 祖母は九十歳を過ぎて初めてひ孫に会い、命長ければ蓬莱に会うという喜びを味わった。
- 若いころ落選続きだった画家が晩年に評価され、命長ければ蓬莱に会うという言葉を思わせた。
- 病気で一度は夢をあきらめたが、回復後に新しい仕事へ進めたことは、命長ければ蓬莱に会うの好例だ。
- 長い不景気を耐えた店が、思いがけない評判で客を集め、命長ければ蓬莱に会うような転機を迎えた。
- 昔の友人と五十年ぶりに再会した父は、命長ければ蓬莱に会うものだと目を細めた。
- つらい時期を乗り越えた人の話を聞くと、命長ければ蓬莱に会うということわざが重みをもつ。
主な参考文献
・日本漢字能力検定協会『漢字ペディア』。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・平凡社『百科事典マイペディア』平凡社。
・ブリタニカ・ジャパン『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』。
・Oxford University Press『Oxford Advanced Learner’s Dictionary』Oxford University Press。
・司馬遷『史記』前漢。
・『唐糸草子』室町時代。























