【ことわざ】
口は災いの元
【読み方】
くちはわざわいのもと
【意味】
不用意に口にした言葉が、自分に災難を招く原因になること。言葉は慎むべきだという戒め。


【英語】
・Be careful what you say.(口にする言葉に気をつけなさい)
【類義語】
・口は禍の門(くちはわざわいのかど)
・舌は禍の根(したはわざわいのね)
・雉も鳴かずば打たれまい(きじもなかずばうたれまい)
「口は災いの元」の語源・由来
「口は災いの元」は、人の口から出た不用意な言葉が、争い・失敗・処罰などを招く原因になることを教えることわざです。ここでいう「口」は、体の一部だけでなく、口から発する言葉や発言を指しています。「元」は、物事が起こる原因という意味です。
このことわざは、「口は禍(わざわい)の門」という古い言い方と深く結び付いています。「門」は、人や物が出入りする場所です。口を、言葉とともに災難が外へ出てくる門にたとえ、不用意に話せば自ら災いを招くと戒めています。
その背景にある古い表現は、中国・唐の僧である道世が編纂した『法苑珠林(ほうおんじゅりん)』(668年成立)に出てきます。この書物は、仏教に関する教えや説話を多くの書物から集め、項目ごとにまとめた全百巻の仏教資料集です。
『法苑珠林』の「貧児」には、「人心は是れ毒根、口は禍の門たり」とあります。人の心は煩悩を生む根であり、口は災難が出てくる門である、という意味です。心に起こった怒りや欲をそのまま言葉にすれば、それが人を傷つけ、やがて自分にも災いをもたらすという教えを表しています。
日本では、鎌倉時代中期の教訓説話集『十訓抄(じっきんしょう)』(1252年成立)に、「口は是禍の門也、舌は是禍の根也」と記されています。「口は災いが出てくる門であり、舌は災いを生む根である」という意味で、話す言葉を慎むことの大切さを説いています。
この段階では、「元」ではなく「門」という比喩が用いられていました。「門」は、災いが出てくる場所に目を向けた表現です。一方、「元」は、災いが起こる原因に目を向けています。たとえ方は異なりますが、どちらも、口から出た言葉が後の災難につながるという同じ教えを表しています。
室町時代末期から近世初期ごろの作品にも、「舌は禍の根、口は禍の門」と続ける用例があります。さらに、わずかな舌先の言葉によって、自分の身を滅ぼすことがあるという教えを重ねており、口や舌を災いの原因とする表現が広く受け継がれていたことを示しています。
やがて、「口は禍の門」と並んで、意味を直接表す「口は禍の元」という形も定着しました。「禍」は「わざわい」と読み、現在は、対象語のように「災い」と書くこともあります。「門」を「元」に言い換えることで、口から出た言葉が災難の原因になるという意味が、より分かりやすく表されています。
「口は災いの元」は、話すことそのものを悪いとすることわざではありません。確かめていない話や秘密、悪口、感情に任せた言葉を軽々しく口にすれば、いったん出た言葉は取り消せず、自分や周囲を苦しめることがあります。言葉を発する前に、その言葉が相手にどう届き、どのような結果を招くかを考えることの大切さを伝えることわざです。
「口は災いの元」の使い方




「口は災いの元」の例文
- 口は災いの元というから、確かめていないうわさを軽々しく広めてはいけない。
- 弟は口は災いの元を忘れ、友人の秘密を家族の前で話してしまった。
- 口は災いの元となり、何気なく言った一言が仲のよい二人をけんかさせた。
- 会議では口は災いの元と心得、相手を傷つけるような発言を慎んだ。
- 責任者の不用意な発言が大きな混乱を招き、まさに口は災いの元となった。
- 匿名であっても口は災いの元であり、根拠のない中傷を書けば相手も自分も傷つく。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2006年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・円満字二郎編『故事成語を知る辞典』小学館、2018年。
・道世『法苑珠林』668年。
・『十訓抄』1252年。























